時代の変化に応じて進化する

2013年01月04日 (金曜日)

 アパレルにとって新しいブランドを投入するだけが手法ではない。歴史のある既存ブランドを今の時代に合わせて打ち出すことも、重要なテーマだ。また、副資材や検査機関といったサポート企業も、顧客の要望や時代の変化に応じて進化してきた。

ルック「スキャパ」/新提案でさらなる成長を/既存ブランド活性化

 ルックは成長戦略として積極的な新規ブランド導入とともに、既存ブランドの活性化を推進する。その一つが婦人ライセンスブランド「スキャパ」である。ベルギー発信の大人のトラッドで今日的要素(モード)を随所に取り入れながら、日本市場では20年を超える実績を持つ。

 同ブランドはトラディショナルかつ上質志向の特性は維持しながら、新たな展開・提案でさらなる成長を図ろうとしている。

 例えばショップイメージはこれまでダークブラウンなどで重厚感を出していたが、新イメージはナチュラルベースでライト感覚にポイントをシフトした。

 商品構成ではシューズ、帽子、バッグ、ベルト、アクセサリーなど雑貨アイテムをバイイング含めて拡充。それらによってライフスタイル発信かつセレクト感を漂わせた。

 13春夏対応では“テーラードジャケット&プリントスカート”といった基本形に加えて、花柄プリントタイプなどでパンツルックを意識的に増やすことで自由なスタイルを推進し、その提案幅を広げた。このほかミドルゲージなどでのニット拡充、色・デテールではパステルトーンやレース、ビジュー使いなどもポイントとなる。

ゴールドウイン/拡大市場にブランド多い

 ゴールドウインの4~9月期連結決算は増収増益だった。上期の営業利益黒字化は、開示以来初めて。西田明男社長は「スポーツ市場は少子化で縮小傾向だが、アウトドア、フィットネス、ランニングは拡大マーケット。当社はこの分野に多くのブランドを持つのが強み」と語る。

 そのアウトドアの中核商品が「ザ・ノース・フェイス」。1990年代にヒマラヤや極地探検に用いられた「バルトロ ライト ジャケット」を、高機能素材使いやヒートロスを抑える仕様にリニューアルして、昨年12月から全国のザ・ノース・フェイス取扱店で順次発売している。

 製品は極地モデルのバルトロ ライト ジャケットのデザインを残しながら、外側のシェル素材には「ウィンドストッパー」、中わたは人体から発する遠赤外線を輻射し保温する「光電子ダウン」を採用。これにより、冷気や雪・小雨から体を守りながら、人の体温域で保温する。高くした襟、前ファスナーのダブルフラップ、暖かなフードなど冷えの原因となりやすい要素も徹底排除した。

 一方、「ヘリーハンセン」も一昨年から展開しているアウトドア商品が好調だ。ザ・ノース・フェイスでは取り込めなかった顧客層を獲得できており、ブランド全体に占めるアウトドアの比率は約半分になった。

カケンテストセンター/業界の変化に対応/グローバルな中立機関

 カケンテストセンターが、化学繊維の輸出振興と品質向上のため商工省(現経済産業省)の許可を受け、設立されたのは1948年。設立後、20余年間は、化学繊維、合成繊維の輸出検査や内需検査を行う一方、海外の試験検査技術の導入も進め、繊維関連JIS規格の整備などに協力してきた。

 その後、繊維産業の構造変化に合わせアパレル・テキスタイル関連の試験業務、輸入衣料品などの検査・検品業務が拡大。88年の韓国、香港進出といったグローバル対応も進めながら、2011年4月には「一般財団法人 カケンテストセンター」に名称を変更した。国際レベルの中立試験検査機関として業務を進める。

 試験業務も繊維品だけでなく、皮革類、紙、樹脂類、化成品、産業資材など幅広い。機能性素材の特性評価や環境にかかわる各種分析試験を実施するほか、海外の規格にも対応。繊維業界のグローバル化、あるいは国内におけるモノ作りを支えている。

 昨年4月には検品会社の㈱カケンと合弁で、インドネシアのジャカルタ市内に繊維製品の検査と検品サービスを提供する「カケン インドネシア」を設立。日本向け商品に加え、欧米向け商品の品質検査・検品を行う。業界のチャイナ・プラスワンの動きをフォローするもので、今年もグローバル化など業界への対応をさらに推進する。

YKK/新ビジネスモデルが必要/新興国市場への対応課題

 YKKグループの2012年度の連結業績は、売上高が前期比5%増の5720億円、営業利益は12%増益の320億円となる見込みだ。しかし、YKK・猿丸雅之社長は13年について「環境情勢は予断を許さない」と述べた。

 為替の変動、日中問題、欧州債務問題のほか、国内の個人消費も低調となりそうだ。「かつてのアジア通貨危機やリーマンショックに端を発した世界同時不況のように、特定地域で発生した問題が、一気に世界規模へと発展する危険性を秘める」と警戒する。

 このため、ファスニング事業では「工機部門の技術力を最大限に活用しながら、スピードを持って改革を進める」という。

 材料費や人件費の高騰にもかかわらず小売価格は低下傾向。ファストファッションは企画・調達から販売に至るロジスティックスの概念を大きく変えた。「これまでとは異なるコスト構造、ビジネスモデルの確立が不可欠」と指摘する。

 先進国を中心に競争優位を保つハイファッションやハイファンクション分野は、顧客の要望を迅速かつ正確に開発に結び付け、高付加価値商品・新商品の提供でさらに優位性を高めていく。

 その一方で、中国や東南アジア・南アジア地域での拡大には、「単純にアジア地域での供給能力を拡大するだけでは不十分。これまで取り組んできた施策を今一度精査したうえで、それぞれの完遂を目指す」方針だ。