レンチングビジネスユニットテキスタイルファイバーズグローバルセールスディレクター・アーネスト・サンドライザー 氏/インドネシアは一歩進んでいる
2013年03月01日 (金曜日)
豊島のインドネシア法人、TYSMインドネシアがジャカルタで精製セルロース「テンセル」を中心としたファブリック展を開催したのに合わせて、原綿サプライヤーであるレンチングのグローバルセールスディレクター、アーネスト・サンドライザー氏もジャカルタに駆けつけた。TYSMインドネシアへの期待などを聞いた。(ジャカルタで宇治光洋)
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――TYSMインドネシアがテンセルファブリックのインドネシア販売を本格化させます。
レンチンググループにとってインドネシアは30年前からグループ会社であるサウス・パシフィック・ビスコース(SPV)がビスコースレーヨンを製造販売してきましたが、テンセルのような特殊繊維を販売するのは難しい市場でした。そこで豊島グループが本格的にテンセルファブリックの販売に取り組んでくれることはありがたいことだと考えています。
――特殊繊維販売の難しさとは。
インドネシアは伝統的に紡績が主導する市場であり、彼らは汎用レーヨン紡績糸による輸出中心です。しかし、テンセルやHWMレーヨン「モダール」は単純な糸輸出だけがターゲットの素材ではありません。そうしたなか、インドネシアでも糸から生地、そして最終製品まで一貫で生産する体制が整備されてきました。しかも経済成長によって繊維製品の国内市場が急成長しています。こうした商流や市場にこそ、テンセルを広げることが重要だと考えました。
――ほかのアセアン諸国と比べて、インドネシアの優位性は。
ベトナム、バングラデシュ、カンボジアなどがありますが、これらは繊維輸出国としては今後も成長するでしょう。レンチングもしっかりとフォローします。しかし、インドネシアは、もう一歩進んでいます。輸出だけでなく内需が成長しているからです。さらにSPVもあるため人材面も充実しており、直接的な技術フォローが可能な点がほかのアセアン諸国とは異なります。
――日本では川下段階からテンセルの需要を喚起するビジネスモデルが成功しましたが、インドネシアでも同様に消費者などに対するプロモーションを行うのでしょうか。
日本と同様のモデルを作ってきたいですね。今回、バティックという川下に近い用途に取り組むのは、その一つのアクション。TYSMインドネシアの展示会でも多くの現地アパレルと出会うことができました。彼らの成長を実感しています。
――昨年はテンセル25周年、今年はSPV30周年、さらにレンチング創業75周年というメモリアルです。これまでレンチングが再生セルロース繊維の世界をリードできた理由は何でしょうか。
最初から現在のポジションを獲得していたわけではありません。1980年代、欧州では環境規制が大幅に強化され、当時40社ほどあったメーカーは対応を迫られました。そのとき、レンチングは環境対応に対する技術的投資を続けたことがポイントだったと言えます。さらに2004年にテンセル社を買収し、技術力に加えてテンセルが持っていたマーケティング力を加えた2本柱体制ができたことが現在の地位につながっていると思います。