「SEKマーク」は信頼の証

2013年03月27日 (水曜日)

 繊技協のもう一つの大きな役割が機能性繊維製品の性能を保証するSEKマーク認証だ。「抗菌防臭加工」(青マーク)、「制菌加工(一般用途)」(橙マーク)、「制菌加工(特定用途)」(赤マーク)、「光触媒抗菌加工」(紫マーク)、「抗かび加工」(緑マーク)、さらに「消臭加工」「光触媒消臭加工」の認証を行っている。昨年10月には「防汚加工マーク」も新設し、認証を開始した。「抗ウイルス加工マーク」創設に向けた準備員会も設置されるなど制度の充実が進められている。

注目の「防汚加工マーク」/統一試験法・基準で信頼性向上

 近年、スポーツウエアやインナー、ユニフォームなどで防汚加工のニーズが高まっており、その市場規模は一説には数十億円とも言われる。現在、一般的な防汚加工としては汚れを着きにくくするSG(ソイルガード)加工、汚れを落としやすくするSR(ソイルリリース)加工、両方の機能があるSGR加工がある。

 試験方法としてはJIS規格「JIS L1919繊維製品の防汚性試験方法」があるが、実際の汚染物質は粉体汚れ、水性汚れ、油性汚れ、花粉汚れ、皮脂汚れ、食品汚れ、化粧汚れなど様々なものがあり、各メーカーや試験機関が独自の試験・評価したものが市場に流通しているのが実態だった。

 このため繊技協では試験方法の評価方法を統一し、認証マーク制度を創設する必要があるとして09年から奈良女子大学の後藤景子教授をアドバイザーに招き、防汚加工マーク準備委員会を発足させて検討を進めた。

 手合わせ試験を実施し、繊維メーカーや加工剤メーカーも参加して評価方法や安全性基準を議論した結果、JIS L1919に加えて花粉汚れを対象試験に東レ法を採用した防汚加工マーク認証試験方法・評価基準を定め、マーク制度を設立した。統一された機能試験方法・評価基準が確立されたことになり、防汚加工の信頼性と安全性が一段と高まる。今後は会員企業のニーズに合わせてオプション試験対象汚れの拡充も進める。

「抗ウイルス」も設立へ/既存マーク基準も改定進める

 繊技協では新たなマークとして「抗ウイルス加工マーク」も創設する方向で調整に入った。日本の素材メーカー・染工場などが様々な抗ウイルス加工の実用化に成功しており、繊技協でも抗ウイルス加工のマーク制度創設の必要性が論議されていた。繊技協で議論を重ね、抗ウイルス加工マークを新設する方向で議論がまとまり4月1日付で抗ウイルス加工マーク準備委員会を設立する。

 抗ウイルス試験方法・基準は日本にJIS規格など統一規格がないが、繊技協がISOに抗ウイルス性試験方法・基準のISO規格案を提案しており、TC38で委員会原案の決定投票段階に入っていることもマーク設立を後押しする。WTOのTBT協定によってISOなど国際規格が発効すれば、加盟国は国内規格を整合化させることが決められているため、抗ウイルス性試験方法・基準がISO規格として採択されれば、事実上の国内規格として運用することが可能になるからだ。

 既存マークの認証基準の改定・充実も進められている。4月1日から「SEK制菌加工マーク」のオプション試験対象菌種に部屋干し臭の原因菌であるモラクセラ菌が追加される。部屋干し臭は長らく原因菌の特定ができていなかったが、花王がモラクセラ菌の増殖によって悪臭が発生するメカニズムを解明。こうした知見を応用し、繊維業界でもモラクセラ菌の増殖を抑制する加工による部屋干し臭防止機能素材の開発が相次いだ。

 ただ、モラクセラ菌を対象にした試験は現在のところ各社が個別に実施しており、統一した評価基準がなく、試験に使用する菌株も各社によって異なるという問題がある。こうした問題を受けて、繊技協がSEK制菌加工マークの認証試験対象菌種にモラクセラ菌を新たに加え、試験対象菌株も統一することになった。

 消臭加工の基準改定も進める方針だ。現行規定ではインテリアなど空間消臭機能が必要な用途と衣料用途に同じ基準が適用されているため、とくに衣料用途では基準が厳しすぎるという指摘がある。このため用途別に試験基準を改正する方向で議論が始まった。そのために着用試験によるフィールド検査も実施する。

動物愛護にも配慮/OECD試験法を採用

 「SEKマーク」の認証で重要な加工剤の安全性試験。従来は動物実験が中心の試験方法が採用されていたが、昨年4月に動物試験代替法を採用した経済協力開発機構ガイドラインに基づく試験方法に変更することで動物愛護に配慮した。

 SEKマーク認証基準の加工剤安全性試験は、急性経口毒性試験、変異原性試験、皮膚刺激性試験、皮膚感作性試験、細胞毒性試験が義務付けられていた。これら試験は動物試験方法が基本。例えば皮膚刺激性試験はアルビノウサギ6匹の皮膚に傷を入れ、そこに被検薬剤を塗布して反応を調べる。

 動物試験に対して近年、動物愛護の観点から批判が高まっており、欧州では動物虐待試験法を禁止し、動物試験を行っている製品の輸入を禁止する動きも。このため動物試験が欧州への輸出障壁になる可能性もある。このため繊技協では昨年4月に安全性試験基準を改訂し、OECDが加盟国に採用勧告している試験方法を採用した。OECD試験法では、被験動物数が削減でき、皮膚刺激性試験は再生ヒト皮膚による試験も認められた。細胞毒性試験も直接細胞に接触する医療機器の安全性に関する試験であることを考慮して試験項目から除外した。

 ただ、すでにマーク認証を受けた加工剤との整合性の観点から、従来試験法も認証基準として認めており、認証申請者は従来試験方法とOECD試験方法を選択できる。

綿紡績「SEK」マークの活用が加速/シキボウ/ワーキング、学販で広げる 

 シキボウはこのほど、SR加工で「SEK防汚加工マーク」を取得した。「ソイルフリー」ブランドで展開し、まずはワーキングユニフォームや学販シャツ地などで普及を進める計画だ。

 ソイルフリーは、綿100%やポリエステル・綿混織編み物による防汚加工素材。これまでも皮脂汚れ防止素材「デセール」や高吸水SR加工素材「イージクリン」の開発と販売などで蓄積してきた豊富な実績を生かしてSEK認証基準をクリアした。まずは織物で展開する考えだ。

 同社では、SEKマーク取得を生かして、機能の信頼性や安全性を打ち出す。オプション試験の対象汚れ拡充も繊技協に対して要請しており、将来的には皮脂汚れや食品汚れ、化粧品汚れなどに対する防汚性も打ち出したい考えだ。

 また、同社は「SEK抗かび加工マーク」取得の「ノーサム」も展開する。こちらも靴下用途などを中心に販売量が伸びてきた。さらに抗ウイルス加工「フルテクト」やノロウイルス対策繊維「アルゴン」への期待も大きい。抗ウイルス性試験方法のISO化に対する審議がISOで進められており、合わせてSEK抗ウイルス加工マークの設立も予定されていることから、今後の普及に弾みをつけたい。

 同社はインドネシアなど海外での機能素材販売拡大を目指しており、とくにISO化によって抗かび加工や抗ウイルス加工による海外市場開拓を進める計画だ。

綿紡績「SEK」マークの活用が加速/クラボウ/ユニフォーム、白衣に提案

 クラボウは昨年、「SEK防汚加工マーク」認証をSR加工で取得した。「プルガー」ブランドで販売し、とくにユニフォームや白衣用途に重点提案する。

 プルガーは、徳島工場で加工したもので、これまでも「オフルージュ」や「キックオフネオ」「ルミック」など20年以上にわたって多彩な防汚機能素材を開発・製造販売してきた技術蓄積を生かして認証基準をクリア。水性汚れ、油性汚れ、粒子汚れに対するSR性で高い性能を持つ。

 まずワーキングユニフォームや医療・食品白衣、学校体育服などユニフォーム分野と、カーテンやシーツ、側地などリビング・寝装分野を中心にプルガーを投入する。とくに白衣や学校体育服でのニーズは高い。患者衣など新規用途の開拓も進め、将来的には泥汚れや皮脂汚れを想定したパンツ地などカジュアル分野にも投入する。

 同社では、「SEK抗かび加工マーク」を取得した「ガーディッチ」も展開する。SEKの「抗菌防臭加工」「制菌加工(一般用途)」も併せて取得するクリーンハイブリッド加工素材だ。すでに大手ユニフォームアパレルが食品白衣で採用するなど成果が出てきた。リネンサプライに対応した洗濯耐久性を確保していることでも評価が高い。食品白衣のほかリビング製品でも提案を加速させる。

 このほか、抗ウイルス加工技術「クレンゼ」への期待も大きい。広島大学の二川浩樹教授が開発した防菌・防ウイルス成分「E―タック」を採用したもので、普及を進める「E―タック協議会」にも設立会員として、このほど参加した。

 最近ではミキハウスがクレンゼを採用するなど成果が上がってきただけに、抗ウイルス試験方法のISO化やマーク設立をテコにした採用拡大に期待が高まる。

綿紡績「SEK」マークの活用が加速/ダイワボウノイ/黒ずみ抑制にも威力

 ダイワボウノイは昨年、SR加工で「SEK防汚加工マーク」を取得した。皮脂汚れ防止機能を持つセルロース系繊維100%織編み物「エコリリースW」とポリエステル・綿混織編み物「ミラクルリリースW」を中心にSEK防汚加工マークを展開する。

 エコリリースWとミラクルリリースWは、独自の改質技術によって綿などセルロース系繊維が持つ親水性の性質を最大限発揮することで皮脂など油汚れを格段に落ちやすくした素材だ。さらにセルロース系繊維の課題とされる黄ばみ・黒ずみ、食品汚れなど一般汚れを抑制して白度維持機能も加えた。

 汚染用グレースケール判定を用いた同社の実験によると、洗濯後の汚染度は黄ばみが一般生地4級に対してエコリリースWは4~5級、黒ずみは一般生地が3級に対してエコリリースWは4級という結果が出た。ラー油やワインを用いた実験でも一般生地を大きく上回るSR性を確認している。同社ではインナーや寝装など幅広い分野に提案する考えで、学販ユニフォーム分野などからも引き合いが多いという。ダイワボウレーヨンの機能レーヨンを活用して一段の機能付与も検討中だ。

 「SEK抗かび加工マーク」を取得した「モールドバリア」も展開する。白癬菌に対する繁殖抑制機能も確認していることから靴下用途で採用が進む。カーペットなどインテリア用途にも提案し、住空間全体への普及を進める。

 同社は、フタロシアニン加工を応用した「アレルキャッチャー」で抗ウイルス性能も確認し、すでにマスクなどで実績を重ねてきた。今後、繊技協がSEK抗ウイルス加工マークを新設することや、抗ウイルス性試験方法がISO化される見通しにあることから、国内外で抗ウイルス素材の普及に弾みをつけたい考えだ。