繊維ニュース

学・講演会より/シキボウのセミナーから/“部屋干し臭”の構造/犯人は“モラクセラ菌”

2013年04月15日 (月曜日)

 近年、室内で洗濯物を干した際に発生する“部屋干し臭”への注目が集まっている。社会環境やライフスタイルの変化から洗濯物を室内で干すケースが一段と増加するなか、不快な部屋干し臭を抑えることが求められているからだ。繊維業界でも部屋干し臭抑制機能を実現した機能素材・加工が相次いで登場する。そもそも部屋干し臭とは何なのか、その発生のメカニズムは。部屋干し臭抑制素材「ルームドライ」を展開するシキボウはこのほど、「部屋干しを考えるセミナー」を開催した。それを基に部屋干し臭発生のメカニズムと原因物質について紹介する。

 ライオンの調査によると消費者の80%が部屋干しの経験がある。天候や夜間の洗濯、日中外出するからなどが理由の上位を占めるが、最近では花粉や黄砂、PM2・5対策など新たな理由も加わり、部屋干しは今後ますます増加する公算は大きい。そこで消費者の悩みが不快な部屋干し臭。花王の調査では、73・4%の人が部屋干し臭を経験している。

 部屋干し臭発生のメカニズムを解明したのが花王だ。花王は2010年に部屋干し臭の臭い成分として皮脂汚れやタンパク質汚れの分解物である低級脂肪酸の4メチル3ヘキセン酸(4M3H)だと発表した。そして皮脂・タンパク質汚れを分解し、4M3Hを発生させる犯人がモラクセラ菌であることを突き止め、11年に学会に発表した。

 モラクセラ菌は、ヒトや動物の口腔・上気道などの粘膜の常在菌でジュートモナス目に分類されるグラム陰性菌の一種。自然界に存在するごくありふれた菌だが、黄色ブドウ球菌や大腸菌に比べて紫外線耐性や乾燥耐性に勝る性質がある。部屋干しの場合、屋外干しと比べて乾燥に時間がかかり、日光(紫外線)による殺菌効果もないため、モラクセラ菌が洗濯物にわずかに残った皮脂やタンパク質汚れを分解して部屋干し臭の臭い成分である4M3Hを発生させるというのが部屋干し臭発生のメカニズムだ。

 こうしたメカニズムを踏まえると、部屋干し臭の抑制には素材の力が必要となる。洗剤で除菌しても、自然界に存在するモラクセラ菌が洗濯物に付着して増殖することを防ぐのは事実上不可能だからだ。ポイントは、いかに洗濯物の水分量を抑える脱水性を実現するか、そして繊維上でモラクセラ菌の増殖を抑えるかだ。

 シキボウでは、こうした観点から部屋干し対応素材「ルームドライ」を展開している。制菌加工を施しており、モラクセラ菌を対象とした試験でも殺菌活性値3・0以上を確認した。これは試験布にモラクセラ菌を付着させ、18時間培養後の菌数が事実上ゼロにまで減少していることを意味する。

 また、繊維評価技術協議会が認証する「SEK制菌加工マーク」のオプション試験対象菌にモラクセラ菌を加えることを決めた。シキボウでは制菌加工「ノモス」でSEK制菌加工マークを取得している。このためルームドライにノモス加工を加えればSEKマーク付でモラクセラ菌抑制機能をうたうことが可能だ。

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 発生のメカニズムと原因菌が特定されたことで一気に対策が進みそうな部屋干し臭問題。繊維への機能加工が果たす役割は大きい。今回紹介したシキボウのほか、ダイワボウノイや第一紡績などもモラクセラ菌増殖抑制機能素材を打ち出している。富士紡ホールディングスも開発が最終段階に入った。綿紡績を中心に普及が一気に加速しそうな気配だ。