2013春季総合特集 トップインタビュー/トンボ社長・近藤知之氏/「倉吉工房」立ち上げる
2013年04月24日 (水曜日)
学生服製造大手のトンボ(岡山市)は今6月期、モデルチェンジ(MC)校の獲得が全体の約4割に当たる約110校となり、好調なことから、増収増益になりそうだ。来入学商戦については、生産量の拡大とともに、縫製スペースの確保が課題になりつつあり、入学シーズン前の繁忙期での「最後のフォローが生命線」(近藤知之社長)との考えから、鳥取県に新工場「倉吉工房」の立ち上げを決定、来年7月からの稼働を計画する。
3年後、ブレザー中心に6万点生産へ
――今入学商戦についてはいかがですか。
2012年7月から3月までの累計では売上高で前期比3%強の増収で推移しました。
主力の学生衣料が、MC全体の約4割に当たる約110校を獲得し、好調です。首都圏や大阪でのモデルチェンジの新規獲得が進んだことによって2%増となりそうです。
スポーツ衣料も4支店での専任体制など営業面での強化や、「ヨネックス」ブランドが100校以上に採用が決まるなどで5%増と堅調です。ヘルスケア事業も、首都圏を中心に主力の介護職員向けユニフォームとリース向けの患者衣の販売を伸ばしたことで10%弱伸ばしています。
――MCの獲得校が増えたことで生産面にも影響がかなり出たのでは?
昨年に比べ、先行して備蓄してきました。来年は消費税増税の可能性もあり、生産を前倒しして備蓄する傾向はより強まりそうです。ただ、国内の縫製工場では高齢化によってどんどん廃業しており、生産量の確保が難しくなっています。また、MC校の獲得が増えたことで、入学シーズンでの予想外の追加生産も増えています。
繁忙期での“最後のフォロー”が生命線であり、鳥取県倉吉市に新たな縫製工場「倉吉工房」を立ち上げることにしました。国内で8つ目の生産拠点となります。
――新工場の概要を教えてください。
当社が1億2000万円を投資するほか、倉吉市が1億円投入し、西倉吉工業団地に土地5400平方メートルと、当社の希望に沿ったオーダーメードの工場建屋1050平方メートルを整備し、リースの形で提供してもらいます。鳥取県としては人件費(1人当たり20%の助成率)や人材の研修制度(同60万円)にかかる費用を負担していただきます。
来年4月から従業員約50人を雇用し始め、7月から操業する予定です。最初はブレザーの生産を中心に、初年度は年間2万点、2年後4万点、3年後の2016年には6万点の生産量を目指します。
――新工場を倉吉に決められました。
災害、原発のリスクが少ない地域であることや、人員確保が可能で、現在稼動中の地方拠点と同賃金水準地域だったことがあります。行政の方針として誘致に積極的であるとともに、玉野本社工場(岡山県玉野市)や物流センターからアクセスが良いことも挙げられます。
今後は災害のリスクヘッジをしっかり考えておかなくてはいけません。物流拠点も岡山に集中していますが、関東での売り上げが伸びているなかで、東日本に対しても拠点作りを進めていく必要があります。
――美咲工場の設備も増強されてきました。
昨年9月にカッテングセンターが稼働するとともに、縫製ラインも2ライン増やし、生産体制を強化してきました。5月にはCAMを1台増やし、4台体制となります。
――昨年6月には東京でビルを取得し、拠点を集約しました。
首都圏の市場は拡大し、人員も増員しています。将来的には販売、企画の拠点を東京に移すことも考えておかなくてはいけません。
――円安の影響で海外でのモノ作りが難しくなってきました。
学生服メーカーの多くは国内に生産基盤を持っており、大きな影響が出てくることはないでしょうが、シャツなどは海外での生産比率が高く、中国から今後はインドネシアやミャンマーなど東南アジアへシフトしてくるでしょうね。
――今期は3カ年の2次中期経営計画の最終年度です。次期計画の中身はいかがですか。
これから内容を詰めていくところです。やはり、少子高齢化が進むなかで、ヘルスケア事業の売り上げももっと伸ばさないといけません。また、学生服、体育衣料、ヘルスケア以外の“第4の事業”も具体化させていかなくてはいけません。若手を中心とした「ジュニアボード」に新たな事業への取り組みを議論させています。次期中期経営計画から事業をスタートさせ、1億円ぐらいの売り上げ規模を目指していければと思っています。
(こんどう・ともゆき)
1980年テイコク(現トンボ)入社。99年営業統括本部販売統括部長、2001年取締役営業統括第一営業本部長、03年常務、10年専務。12年9月社長。
私の課長時代/3年がかりの新規獲得
近藤さんの課長時代は30代で、まさに一線で「バリバリ働いていた」ころ。当時、九州・中四国地区の担当で、ダイレクトに学校を回り、営業活動を進めていた。なかでも制服が採用となれば、それこそ数の大きい私学を中心に営業活動を強化。もちろん、すんなり採用してくれるわけでもなく、ある学校では門前払いされることも。しかし、あきらめず、受付にプレゼントを持っていくことで、次第に顔を覚えてもらえ、3年後、それが大きな受注につながったときは「とてもうれしかった」。