合繊素材・オンリーワンで活路(2)東洋紡STC 「テクニスタ48」/優れた伸長性で水着用途開拓
2013年05月28日 (火曜日)
東洋紡スペシャルティズトレーディング(STC)は、衣料分野で数十人の自社技術開発スタッフを抱える。開発部にはマーケティングスタッフも所属し、市場ニーズをとらえた素材開発に取り組む。スポーツ関連では年間10素材ほどを新たに打ち出す。
2012年末に開発した「テクニスタ48」は、取引先からの「新たな水着素材はできないか」という声から生まれた。スポーツ用水着には従来、伸長性のあるスパンデックスやポリトリメチレン・テレフタレート(PTT)繊維が使用されているが、テクニスタ48はスパンデックスを使わずに伸長性を持たせた経編みを主としたニット地だ。
テクニスタ48は、ポリエステルでありながら、縦方向の伸長率は40%弱と、PTT使用生地の30%弱を上回る。縦横平均伸長率は48%で商標の由来になっている。編成技術とともに、後加工に特徴があり、ポリエステルの分散染料段階で、スパンデックスを構成する粗原料を加えている。ポリエステル長繊維の表層にある非結晶部分に、粗原料の特殊樹脂が浸透し、優れたストレッチ性、キックバック性を実現する。
通常の染色工程で対応できるため、製造コストはスパンデックスの半分、PTTの7割ほどに抑えられるのも利点だ。また、スパンデックスと異なり、耐塩素性にも優れる。洗濯などによるストレッチ性の低下も抑える。
優れた伸長性、コストパフォーマンスを武器に、練習用を含めたスポーツ水着などで、大手スポーツアパレルとの成約を目指している。一般衣料の裏地などへの展開も図り、14春夏シーズンで20万メートルの成約を計画する。14秋冬向けにはトリコットのほか、ラッセル編みと織物などのバリエーションも増やした。
同社は、国内で開発した素材を1年後にインドネシアのトウヨウボウ・ニッティング・インドネシア(TKI)、STGガーメントなど海外生産に移行する体制を構築しており、「テクニスタ48もまずは国内で需要を見極め、海外展開へつなげる」(渡邉紘志・スポーツアパレル事業部マネジャー)考えだ。