環境新書特集/東洋紡/環境で高機能製品開発/水処理や溶剤回収など

2013年06月10日 (月曜日)

 「環境・ライフサイエンスの各分野で求められる高機能製品の開発を通してカテゴリー・リーダーとなることを目指す」。東洋紡は「2020年ビジョン」でこう掲げる。カテゴリー・キラーとは特定分野でトップになること、高いランクを目指すことを意味する。20年度には環境・ライフサイエンス分野の売上高を全社の約35%に当たる1750億円を目指している。

 高機能材の環境関連製品では水処理膜やVOC(揮発性有機化合物)処理装置、PPS(ポリフェニレンサルファイド)繊維、ポリイミド繊維などがある。

 人口増加や経済発展の中で、水不足が深刻化しているが、安全な飲料水や工業用水を確保するために同社の水処理膜が活躍している。逆浸透膜による海水淡水化膜・モジュールは「ホロセップ」はその一つだ。ホロセップはイオンを通さず水だけを透過させる中空糸型逆浸透膜モジュール。海水から飲料水、水道水や工業用水から純水や製薬用水を作り出すことができる。

 サウジアラビアにある世界最大級の海水淡水化設備はじめ中東湾岸諸国の多数の海水淡水化プラントにホロセップが採用されている。昨年3月にはACWAパワー・ディベロップメント、伊藤忠商事との合弁によりサウジアラビアでホロセップの製造販売会社、アラビアン・ジャパニーズ・メンブレン・カンパニーが稼働した。

 VOC回収、処理装置は累計1300台以上の販売実績がある。これらの装置には同社が世界で初めて開発した活性炭素繊維「K―フィルター」を使用する。また、PPS繊維「プロコン」は火力発電所用排ガス集じんフィルター、ポリイミド繊維「P84」は都市ゴミ焼却場用集じんフィルターと、同社の製品が環境汚染対策に数多く使われている。

 また、植物由来素材の実用化にも取り組む。ポリエステル原料のエチレングリコールをサトウキビ由来のバイオエタノールで製造したバイオマス素材を、フィルムや繊維、スパンボンド不織布で開発している。