環境新書特集/三菱レイヨン/アクア事業を推進/クリンスイ備蓄用も

2013年06月10日 (月曜日)

 三菱レイヨンはアクア事業を推進する。これまでは中空糸膜の拡販のために用途を広げてきた。今後は食品や医療用などの分野でソリューションを提供しながら拡大していく。また、中国・江西省の奉新金達莱環保に出資したように、海外市場でパートナーを見つけ、O&M(運転・管理)事業も推進する。さらに国内で好調な家庭用浄水器「クリンスイ」を海外でも拡大していく考えだ。

 同社のグループ会社である三菱レイヨン・クリンスイは、家庭用浄水器の総合メーカーとして、安全でおいしい水を提供してきた。同社は、「浄水器メーカー」から「安全でおいしい飲料水全般のソリューション企業」を目指す。

 新ビジネスとして災害時備蓄用長期保存水にも着手。昨年12月に「クリンスイ長期保存水2リットル」を発売し、6月から持ち運びに便利な500ミリリットルの販売も開始した。

 この4月から東京都帰宅困難者対策条例が施行され、これを機に企業が防災用備蓄水を採用する動きが活発化した。長期保存水は、品質を安定させるため、特殊なアルミキャップを使うことで、製造日から5年の長期保存が可能になった。

 クリンスイ長期保存水は滋賀県高島市の名水をRO膜(逆浸透膜)でろ過し、不純物を限りなく除去した。

 東日本大震災から2年が経過し、一般的なペットボトルの賞味期限2年が経過した。この切り替えの時期に企業や自治体に提案し、持ち運びに便利なサイズも追加した。

 また、夏の需要期に向け、5~8月末までクリンスイポット型浄水器の「13の力キャンペーン」も実施し、拡販に力を入れる。

 一方、三菱レイヨンは、省スペース、低エネルギーを特徴とする膜分離活性汚泥法(MBR)用中空糸膜「ステラポアー」の新製品を開発し、今年から生産を開始している。

 同社はMBRのエネルギー消費量の大部分を占める膜表面の物理的洗浄のためのエアレーション(ばっ気)の動力費に注目し、ろ過流量の多さを維持したまま、エアレーション量を低減する技術開発を行った。新製品は膜外径を細径化し、エレメント内の膜フィルターの集積度を向上させ、処理設備のコンパクト化を実現した。

 シンガポールの下水処理場での実証試験では、従来品と比べエアレーション動力費の70%の削減が可能であった。これによりMBRシステムとして、単位処理水量当たりのエネルギー消費量を従来品より30%削減できる見込みだ。

 こうした技術開発もあって、この2月にはベトナムのエンジニアリング会社・グリーンテック社と販売代理店契約を結んだ。グリーンテック社を通じてMBRに用いられる中空糸フィルターをベトナムの病院、ホテル、工場の排水処理施設に提供していく。