環境新書特集/様々な環境に対応する検査機関

2013年06月10日 (月曜日)

 環境は自然だけではない。衣服内環境、労働環境、住宅環境など人間を取り囲むすべてが、人間にとっての環境である。検査機関はこうした環境にも対応している。

カケン/特定芳香族アミンに対応/高視認性衣服の試験も

 カケンテストセンターは20日午後1時半から、大阪市西区の大阪事業所4階で、「海外規格試験方法及び表示方法/有害物質に関する法規制セミナー」を開く。このうち有害物質に関する法規制は、有害物質の現状とともに、特定芳香族アミンについて、大阪事業所分析テストラボの鷲頭一雄氏が講演する。

 日本繊維産業連盟などは昨春、「繊維製品にかかわる有害物質の不使用に関する自主基準」を発表した。一部のアゾ染料・顔料のアゾ基が還元分解されると発がん性のある特定芳香族アミンを生成する懸念がある。欧州や中国、韓国ではすでに法規制されているが、日本でも厚生労働省が法規制化への作業を進めている。

 カケンテストセンターでは東京事業所、大阪事業所分析テストラボ、中国の上海科懇検験服務がこの特定芳香族アミンの試験を行っている。

 試験では、生地を切り、染料を還元分解し、その中に有毒なアミンが含まれているかを調べる。ガスクロマトグラフ質量分析計と液体クロマトグラフを使用する。

 一方、作業環境の安心・安全という視点では、夜間に道路作業従事者の着用する高視認性衣服がある。蛍光色生地や再帰反射材を使って周囲から目立つようにした作業服は、交通事故などの危険から守る防護服でもある。欧州ではこの高視認性衣服に関する規格としてEN471がある。事業主はこの規格に準じた作業服の支給が義務付けられている。このN471をベースにこの3月、ISO20471(高視認性衣服)が発行された。このJIS化も検討されるが、東京事業所はISO規格による試験に対応する。

ニッセンケン/安心安全の試験充実/上海がSEK指定に

 この時期、細菌が原因となって食中毒や病気が引き起こされる。また、汗をかいたままの衣料を放置しておくと、だんだん悪臭が漂いだす。これは細菌の増殖によるものだ。

 このため、細菌の増殖を抑制する衣料や寝具などが市場に投入されているが、ニッセンケン品質評価センター(ニッセンケン)の東京事業所立石ラボではJIS L1902をはじめ各種抗菌性試験を行う。また、繊維評価技術協議会の「抗菌性に関するSEKマーク基準」に基づく性能評価や、新たにオプション菌に加えられたモラクセラ菌にも対応する。

 さらに、SEKマーク認証の抗かび性加工の評価にも着手。同加工はクロカビ、アオカビ、クロコウジカビ、白癬菌の増殖を抑制するもので、繊技協法をはじめ、JIS Z2911などの試験も行っている。

 抗菌防臭は海外でも加工される。ニッセンケンは中国の上海事業所でも抗菌性試験を行うが、このほどSEK抗菌防臭マーク取得のための試験を行う検査機関として指定された。中国生産の日本向け製品だけでなく、中国、台湾、香港、韓国の内販品についても抗菌性機能評価を行う。

 一方、立石ラボでは視認性評価測定など防災・安全評価試験も行うが、屋外に太陽光発電装置を設置し、環境にやさしいラボでもある。

 ニッセンケンは国内唯一のエコテックス規格の認証機関で、エコテックス事業所が安心・安全の繊維製品試験を進める。現在、エコテックス規格100の認証製品数は359件、前年同期比約10%増加。特定芳香族アミンの試験にも対応する。

QTEC/遮光、遮熱試験に対応/HBCD、VOCも分析

 日本繊維製品品質技術センター(QTEC)は、福井試験センターでリビング関連の遮光、遮熱の特殊試験を行う。省エネによる環境対策の進展で、こうした試験が増えているようだ。福井産地はカーテン生地の生産が多く、同センターは防炎関連の燃焼試験の特化試験センターとしても機能する。

 一方、4月30日~5月2日まで、スイス・ジュネーブで、ストックホルム条約(POPs条約)の第6回締約国会議(COP6)が開催された。

 同条約は、環境中で残留性、生物蓄積性、人や生物への毒性が高いポリ塩化ビフェニル(PCB)、DDTなどの残留性有機汚染物質の製造・使用の廃絶、排出の削減などを規定している条約だ。今回の会議では、新たに難燃剤や防炎加工に使用されるヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)が同条約の付属書A(廃絶)に追加されることが決まった。

 HBCDは建築用のビーズ法発泡ポリスチレンや押出発泡ポリスチレンの難燃剤として用いられるほか、ポリエステルに防炎性能を付与する薬剤としても使用されている。しかし、自然界で分解されにくいため、環境汚染が懸念され、今回の会議で追加された。

 QTECでは、このHBCDが使用されているかを調べる分析試験を行う。

 また、建材から放出されるVOC(揮発性有機化合物)が住宅室内の空気を汚染し、シックハウスを発症する問題がある。VOCは建材や合板のほか、カーテンやタイルカーペット、アパレル製品のプリントから発生する場合もある。東京総合試験センター分析ラボでは、シックハウスの原因物質放散量の測定を行う。