技術の眼~NEW WAVE GENERATING TECHNOLOGY~

2013年08月08日 (木曜日)

 「技術の眼~NEW WAVE GENERATING TECHNOLOGY~」では将来的にニューウェーブを巻き起こすような重要な技術になりうるかもしれないものにスポットを当て、紹介する。

YKK/真空蒸着で金属調に

 スポーツ・カジュアル、かばんなどの分野では軽量化を求める。このため、金属ファスナーより軽い樹脂ファスナーを使用することも多い。ただ、金属ファスナーのメタリック感をデザイン性としてアピールしたい場合もある。「軽量で、メタリックカラーのファスナーがほしい」。YKKファスニングプロダクツ販売の「メタリオン」は、そうしたニーズに合致する。

 このファスナーはコイルファスナーのエレメント(務歯)部に真空蒸着でメッキを施し、金属調の輝きをもたらした。真空中で金属や酸化物などを加熱して蒸発させる。発生した分子が基板表面に付着し、薄膜を形成する技術を使ったものだ。スライダーとの摩擦によるメッキはがれ軽減のため、エレメント側面のメッキ付着を避けるなどの工夫もされている。

 また、一部顧客から艶消しタイプの要望もあり、真空蒸着とは別の製法で製品化している。さらにテープとエレメントを縫い合わせる糸をファスナーテープと違った色にする糸替えタイプもある。

第一紡績/ポリプロ使いの保温素材

 第一紡績の「リアルホットΣ」はポリプロピレン・ポリエステル複合による保温素材。同社の特殊結束紡績「IPX」によって糸の芯にポリプロピレン長繊維、鞘に中空ポリエステルを配した。ポリプロピレン長繊維の熱伝導率の低さと、中空ポリエステルの空気層による高い保温性に加え、汗冷え防止機能も持つ。IPX紡績により、抗ピリング性にも優れる。

 使用するポリプロピレン長繊維は通常糸と黒原着糸の2タイプ。生地はまず白と黒の2色展開する。同社ではインナーのほかスポーツやアウトドア向けや防寒用ワークウエア用途などにも提案する。

 このほかにも14秋冬向けには国産素材を“メードイン熊本ARAO”として打ち出す。フェアトレード認証を得たセネガル綿花を使用した「フェアリコット」やバルキーアクリル・レーヨン複合でかさ高性・柔らかさが特徴の「ふっくらさん」、ノボロイド繊維と難燃レーヨン「レンチングFR」をIPXで複合紡績した難燃素材「プロポア」など多彩な機能素材を用意する。

レンチング/車両用の難燃繊維

 オーストリア・レンチングの「レンチングFRディヴァン」は公共輸送機関の車両座席用難燃レーヨン短繊維だ。6月11~13日、ドイツ・フランクフルトで開催された産業用繊維・不織布国際見本市「テクテキスタイル」で発表したもの。

 レンチングFRディヴァンタイプは、車両座席用の安全基準をすべてクリアするとともに、ブナ材を原料にする点と通気性に優れ、長時間座っていても蒸れないという天然素材ならではの利点を持つ。また、溶融や乗客にとって大きなリスクとなる残塵がない。火災の際の毒性や煙の密度が低くなるという特徴もある。

 とくにウールとの混紡に適す。互いの特徴を補完し合い、退色しにくく、毛羽になりにくいことに加えて耐久性も高く、座り心地にも優れる。

 レンチングFRディヴァンタイプを使用すれば環境負荷が大きい難燃加工をウールに施す必要がない。レンチングでは、船舶、鉄道、飛行機、映画館・劇場など公共施設に対してディヴァンタイプの提案を進める。

クラボウ/湿潤保つ養生マット

 クラボウと東亜建設工業が東洋大学理工学部の福手勤教授監修の下で共同開発した「モイスマット」は、打ち込み後のコンクリート垂直面を長期間湿潤状態に保つことのできる養生マット。クラボウの電子線グラフト重合技術を応用した。コンクリートの表面細密化を促進し、塩分浸透や中立化に対する抵抗力を高めることでコンクリート構造物の品質・耐久性が向上する。

 モイスマットに使用するレーヨン・オレフィン系繊維製不織布には高分子吸水剤が均一にグラフト結合されているため高い保水機能があり、外側に張り合わせた耐アルカリ性フィルムが水分の蒸発を防ぎ、コンクリートの湿潤状態を長期間保つ。コンクリートとの密着性も高く、垂直面や傾斜面でも設置しやすく、吸水時の重量も1平方メートル当たり1.2キロと軽量なため作業性にも優れる。

 クラボウの技術研究所と繊維事業部、倉敷繊維加工、クラボウ化成品事業部のグループ横断型の開発商品でもある。

カネカ/衝撃吸収インナーウエア

 カネカの衝撃吸収パッド付きインナーウエア「カネカヒッププロテクター」(婦人用)は昨年10月に販売を開始したもの。今年6月には転倒・骨折予防に関心のある医学・医療はじめ関連領域の会員で構成される任意団体、転倒予防医学研究会の推奨品として登録された。

 独自開発したイソブチレン系熱可塑性エラストマー「シブスター」と発泡技術を組み合わせたパッド(他社品は発泡ポリウレタン・ポリプロピレン・エラストマーなど)を使用。名古屋大学と芝浦工業大学との共同研究により5つの穴が開いた特殊形状のパッドを開発した。衝撃吸収性と衝撃拡散性を併せ持つことから、転倒時の衝撃を低減。高齢者や骨粗しょう症患者の大腿骨頸部(足の付け根)などの転倒骨折を予防する。

 また、パッドは約6ミリと従来品(9~13ミリ)よりも薄く、身生地(綿75%・ナイロン20%・ポリウレタン5%)も含めて国立長寿医療研究センター病院の協力を得て着け心地も配慮した。

帝人/染まるメタ系アラミド

 帝人は高い耐熱性と染色性を持つ新たなメタ系アラミド繊維を開発した。防護衣料向けを主力に、需要増が見込める中国、アジア新興国への販売拡大を狙う。約45億円を投じ、年産2200トンの新工場をタイ子会社であるテイジン〈タイランド〉の敷地内に建設。2015年7月から稼働する予定だ。

 同社はメタ系アラミド繊維「コーネックス」を製造販売するが、新タイプはコーネックスを上回る耐熱性を有し、コーネックスでは難しい染色も可能で、新たな製法の導入で実現した。

 バグフィルターなど産業資材向けが主力のコーネックスに対し、新タイプは中国やアジア新興国で防護衣料への採用を主力に狙う。

 タイで生産することでコスト競争力が高まるほか、新製法では工程中の化学物質の排出を抑えるなど環境対応も強化した。年内に新会社と新商品のブランドを決定するほか、市場の成長性に対応する形で増産も検討していく。