ズームイン/東レの長繊維事業部長に就いた・平井正夫氏/「人」重視の姿勢は不変

2013年08月23日 (金曜日)

 「糸ではなく、人を売る」。入社直後に配属されたナイロン事業部ソックス資材課で、当時の課長から学んだことだという。現場たたき上げのこの課長、「部下だけでなく自分にも厳しい。言うだけではなく、自ら実践する。だからこそ、顧客の信頼も厚かった」と平井さん。人生のイロハも教わった「師匠」と呼ぶほど心酔する。

 ナイロン事業部でインナー用、テトロン長繊維事業部ではスクリーン紗用を手掛け、師匠と同じく現場経験を積んだ平井さんだが、2003年に転機が訪れる。ポリ乳酸(PLA)の開発マーケティングに携わることになったからだ。それまで「糸ではなく、人を売る」をモットーにしてきた平井さんだが、PLAは「スペックで売る世界」。糸、わた、さらに不織布と扱う形態も広がった。

 得難い経験だったものの、自らはプレーヤーではない。現場をやる気にさせることに苦心する。最前線で戦ってきた平井さんだけにフラストレーションがたまったのも事実。「一気に白髪が増えた」と笑う。

 3年後、営業復帰を果たし、今や繊維事業の重点分野であるエアバッグを担当。グローバル展開の体制整備に奮闘する。10年にはその拠点であるタイ・トーレ・シンセティクス(TTS)の取締役繊維営業部門長に就任し、エアバッグ用ナイロン66に加えて、久しぶりに衣料用ナイロン、ポリエステル長繊維も担当する。昔の品番をすらすらと話す平井さんに現地の従業員が驚いたという。

 翌年、洪水を経験。最高益達成寸前で、収支トントンに落ち込んだと悔しそうに話す。

 そして帰国。6月からポリエステル・ナイロン長繊維販売の責任者に就いた。「2素材とも規模も小さくなり、良い意味で変わった。とくに出口をとらえた戦略が奏功している」と話す。一方で「グループ内の消化だけでは発展はない」とも指摘。「国内の産地企業や国内有力アパレルとの連携に力を入れていきたい」と豊富を語る。

 部下には「納得できないことはトコトン話をしに来い。何でも言って来い」と話したという。「現場は忙しい。だからコミュニケーションが減り、メールで終わることもあるが、それは好きじゃない。話すことで単なる理解から共感的理解になる」と平井さん。これも師匠から教えられたこと。管理者になっても「人」重視の姿勢は変わらない。

ひらい・まさお 

 1986年関学大・文卒、東レ入社。06年産業資材事業部車両資材課長、10年タイ・トーレ・シンセティクス取締役、13年6月から長繊維事業部長。大阪府出身。50歳。趣味は7歳の息子さんと遊ぶこと。息子さんの運動会のために、あるゴルフコンペも断ったという話もある。