産業を支える検査機関と副資材メーカー/国産回帰やグローバル化に対応

2014年01月07日 (火曜日)

 繊維産業を支える検査機関や副資材メーカー。業界の国産回帰や生産のアセアンシフト、さらに適地生産・適地販売という流れにどう対応するのか。2014年の各社の展望と課題を追った。

 円安は国内産地の輸出を後押しするとともに、海外のコストアップによる国産回帰の流れを生み出している。これまで国内の試験減に対応するため、中国をはじめ海外業務を拡大してきた検査機関だが、改めて国内事業所の設備を整える動きが出てきた。

 カケンテストセンター(カケン)は昨年12月、神戸ラボを閉鎖し、業務を大阪事業所本所と新設の堀江ラボに移管した。また、神戸には新たに営業拠点の神戸インフォセンターを設け、顧客サービスに集中する。コスト削減の一環である。その一方で、西部検査所に接触冷温感の試験設備を、京都検査所では恒温恒湿室を増設し、吸水速乾試験機を新設した。機能性試験の充実のためだ。東京事業所本所では、労働安全の防護服などの試験を始めた。

 衣料品だけではなく、ハイテク分野に至るまでグローバルに対応するのがカケンの特徴でもある。中国に5拠点を設けるほか、香港、韓国、台湾、タイ、ベトナム、インドネシアに拠点を置く。「グローバルコミュニケーション戦略室」も設置し、海外情報を集約、発信する。しかし、円安で海外拠点はコストが上昇、採算は悪化傾向にある。このため、今年4月スタートの新5カ年計画ではコスト抑制策を盛り込む。また、顧客への問題解決能力の向上を柱にする。

 「検査機関の競争は今後も激化する。技術のレベルアップ、情報力の強化に力を注ぎ、専門性に磨きをかける。それにより、顧客の問題解決に寄与する能力を高めたい」と言う。

 ボーケン品質評価機構(ボーケン)は、「顧客第一主義」がモットーだ。昨年1月から東京本部ビルで東京事業所が本格稼働した。同事業所の機能性試験センターには新たに恒温恒湿室(60平方㍍)を設けるなど設備投資を行った。生活用品試験センターも増床した。抗菌試験室も昨年11月から営業を開始し、短納期化を進める。国内事業所では開発段階の製品の評価を支援、海外事業所では製品になった後の量産品検査など、顧客の利便性を考慮した試験対応を進める。

 また、2012年にインドネシアでジャカルタ試験センターを開設したが、昨年11月にはタイ・バンコク、ベトナム・ホーチミンに事務所を開設し、試験受付を開始した。さらに昨年10月には「海外リサーチ&アドバイザリー室」を東西に設置し、海外情報を提供している。中国、台湾、韓国、アセアン諸国や欧米の情報を調査・発信する。

 国内では衣料品だけでなく、服飾雑貨や家具、日用品などにも試験対象を広げる。

 日本繊維製品品質技術センター(QTEC)は、中部事業所の羽毛試験依頼の増加に伴い、羽毛試験用の新たなラボを増設し、納期短縮など顧客サービスにつなげる。

 海外ではタイのバンコク市内のPQC〈タイランド〉内に「QTECバンコク連絡事務所」を今年早々にオープン。QTECは海外拠点として韓国、中国(4拠点)、バングラデシュに拠点を持つ。バンコク連絡事務所は、アセアンの情報収集と工場調査が目的。ミャンマー、カンボジア、ベトナムも視野に、今後のアセアン動向を見ながら本格進出していく。

 また、上海総合試験センターでは、微生物試験室と生活用品試験が昨年完成、1月から本格稼働する。日本の神戸試験センターに安全性の高い微生物試験室を設置したが、中国・上海でも抗菌試験など業務内容を拡大していく。さらに、海外の検品工場や縫製工場の工場指導や出張検品の業務にも対応する。「商品を仕分けるのではなく、問題点を現場にフィードバックする」のが特徴である。

 ニッセンケン品質評価センター(ニッセンケン)の東京事業所立石ラボは抗菌防臭・制菌・光触媒消臭・抗カビ性試験や話題のモラクセラ菌試験にも対応している。昨年4月から抗ウイルス試験にも対応できる体制となった。こうした抗菌関係の試験は従来、大阪で行っていたが、短納期対応のため、立石ラボでも実施、試験依頼も増加している。

 中国の上海事業所でも抗菌試験を行っているが、昨年から消臭加工試験にも対応する。

 また、昨年10月にインドネシアでソロ検品センターを開設した。これにより、2012年に開設したニッセンケンジャカルタラボと併せ、インドネシアにおける試験・検査のワンストップ体制を構築した。

 さらにニッセンケンは国内唯一のエコテックス規格の認証機関として、安心・安全の繊維製品試験をエコテックス事業所で行っている。特定芳香族アミンの試験など安全・安心に寄与する。

YKK/開発力とグローバル化

 YKKファスニング事業グループは毎年、「YKKファスニング・クリエーション」を開催している。昨年も「熱き鼓動ビート」をテーマに、様々な新商品、開発商品を提案した。

 今回も「ニュープロダクツ」コーナーで「マルチカラー エクセラ」「挿入ガイドスライダーカバー」「5VSビスロンプリファ」などを参考出品し、注目を集めた。

 YKKの中期経営計画(13~16年度)では、ファスニング事業は、アジア・中国市場での量的拡大を中心に、販売本数100億本(現在約75億本)を目指す方針を掲げている。ファスニング事業のグローバルトップ企業として、ボリュームゾーンにも裾野を広げるのがその骨子だ。

 しかし、品質と安全を前提としたモノ作りの一貫生産思想はいつの時代でも不変。顧客ニーズに基づいた開発を進めながら、グローバル化にも対応する。