スポーツ特集/15春夏向け注目スポーツ素材

2014年02月19日 (水曜日)

 素材メーカーにとってスポーツウエアは、合繊の高い機能性などが生かせる分野の一つだ。2015春夏向けスポーツ素材は、機能のレベルアップをはじめ、機能の持続、産業資材向け素材の活用、スポーツ用途以外への展開などがキーワードに挙げられる。

帝人フロンティア/汗染み防止素材開発/撥水剤練り込みタイプ

 帝人フロンティアは、汗染み防止素材「デュアルファイン」を開発した。コーティングで撥水機能を持たせる従来素材に対し、撥水剤を練り込んだポリエステル長繊維を使用しているのが特徴で、原糸レベルで機能を発揮できるのが特徴だ。練り込みタイプのため、コーティングに比べて耐洗濯性にも優れる。

 デュアルファインは編み組織のリバーシブルで肌側がレギュラーポリエステル使用の吸水拡散層、表側がポリエステル撥水糸を使用した撥水層の2層構造を採用。汗をかいても肌側が吸水拡散するとともに表側が撥水するため、表面に汗が出ず、汗染みが目立ちにくい。編み組織のため、通気性も高い。撥水構造である撥水基の間隔を染料の粒子より大きくすることで染色性にも優れる。

 通販向け女性用Tシャツやカットソーで先行して投入しており、ゴルフウエアなど軽スポーツをはじめ、カジュアルや肌着、ユニフォーム用途へも展開する。

東洋紡STC/機能にカジュアルプラス/産業資材向け素材を活用

 東洋紡STCはポリエステル長繊維使いニット「モアナ」を提案する。スポーツ用途としての機能を持ちながら、カジュアルテーストを前面に出した素材で、毛細管現象による吸汗速乾性とともに、生地の表裏で4倍の編みゲージ差を付けるクォーターゲージニットによるダブルフェースなどで表面感や肌触り、短繊維調などにこだわった。

 また大量発汗対応素材「メガテックドライプラス」は、ウエアの肌側にダブル十字断面撥水ポリエステルを凸状に配置することで接触面積を小さくし、肌離れ性やドライ感を向上させた。フルダルダブル十字断面ポリエステルとフルダル丸断面ポリエステルの2層構造で紫外線カットや遮熱効果、防透性を高めた生地「ラグジュアリーホワイト」も訴求する。

 産業資材向け素材も積極的に活用する。耐久摩耗薄地織物「ポリカーボネーティッド」は、プラスチックの一種であるポリカーボネート系ポリマーを生地にコーティングして保護コート層を形成することで、摩耗耐久性を高めた。衣料での展開は初めてとなる。

 「ドライアイスマックス」は、肌側に結晶化度95%以上の高配向・高分子量ポリエチレン「ダイニーマ」と扁平ポリエステルを交編した接触冷感素材。汎用繊維と比較して熱伝導性が4倍以上あり、接触冷感性に優れる。

東レ/中空率50%のC型断面糸使用/軽量かさ高で多様な生地展開

 東レは、世界最高水準である中空率50%のC型中空断面ポリエステル長繊維を使った軽量かさ高生地「エアリーサムロン+C(プラスシー)」を打ち出す。

 この原糸は2成分のポリマーを使った芯鞘構造で、生地にした上で芯部のポリマー成分だけを後加工で溶かして中空にする。中空部をつぶさずに捲縮や強撚といった糸加工ができるため、従来の中空糸では困難だった多様な生地開発へつなげられる。さらに高い中空率を実現したことで、レギュラーポリエステルに比べて48%軽い目付(1平方㍍当たり56㌘)、1・9倍のかさ高性(1㌘当たり7立方㌢)を誇る。中空の表面積が大きく、拡散性に優れるため、吸汗速乾性にも優れる。原糸は東麗繊維研究所〈中国〉と開発し、東麗合成繊維〈南通〉で生産。生地は当面、国内協力工場で生産する。

 春夏向けはランニングやフィットネス、ヨガ用途で提案する。空気を多くため込むことができ、保温性が高いことから秋冬向けの登山用ジャケットやブルゾンでも提案する。 また販売30周年を迎えた吸汗速乾素材「フィールドセンサー」は、肌面ブリッジ構造による吸汗速乾性とともに、高濃度の酸化チタンを含有したポリエステル原糸を46ゲージで編み込むことで、軽量薄地でありながら防透性を高めた「秒乾46」を打ち出す。

旭化成せんい/特殊ポリエステル生地開発/吸水速乾性が持続

 旭化成せんいは、吸水速乾素材「シュアドライ―∞(インフィニティー)」と清涼素材「モイステックス―Cool2(クールクール)」を開発した。両素材とも機能が持続する点を訴求する。

 従来の吸汗速乾ポリエステル繊維は、吸水剤を後加工で付与するため、繰り返し洗濯による吸水性の低下が課題だった。シュアドライ―∞は、吸水剤を使わず、糸と特殊加工を組み合わせることで、洗濯100回後でも吸水速乾性が持続する。アスレチックやアウトドア、学校体育衣料、ユニフォーム衣料向けといった耐久性が求められる用途へ提案する。

 モイステックス―Cool2は、キュプラ繊維「ベンベルグ」とポリエステル繊維を複合した多層構造ニット。吸汗速乾、通気、放熱、吸放湿の4機能をコントロールすることにより、従来素材に比べて着用時の体感温度を2℃以上引き下げ、清涼感が持続する。軽スポーツやオフィス向けで展開する。

 また安定した着圧をキープし、疲労回復効果のある「エラクション―PRO」は、これまでのタイツに加えて新たにトップスでも提案する。

クラレトレーディング/スポーツアパレルを強化/素材開発力を軸に

 クラレトレーディングは、15春夏に向けスポーツアパレルへの提案をあらためて強化する。学校体育衣料向けの省エネ素材「ピュアス」や防融素材「パワロン―MR」なども含めて、今後、「素材力」を軸に提案の幅を広げていく考えだ。

 同社は昨年12月に東京で展示会「ネクストコンフォート」を開催、国内スポーツアパレルに素材提案を行った。重点的に打ち出したのは、エバールを用いた高熱伝導繊維による放熱素材「ボディーオアシス」。熱伝導性に優れるエバールを鞘に採用した芯鞘構造で、放熱性の低いレギュラーポリエステルに比べ、衣服内の熱を外気へ放熱する機能に優れる。同様の高放熱性をうたう他素材に対し、芯材のポリエステルが堅ろう性に優れることもアピールポイント。スポーツ用に限らず幅広く用途開拓を進める。

 また、近年の紫外線防御への関心の高まりを受けて、UVカット素材群「UVX」も提案した。全製品がUPF30以上、上位品はUPF50+を実現。コンパクトな組織で薄さや軽さも確保、ストレッチ性も併せ持つ。

 久抗ピルポリエステル短繊維「パナパック」も定評ある風合いに加え、機能材の練り込みでUV遮蔽や吸汗・速乾など機能バリエーションを充実。アウトドア向けの他、タウンユースも視野に幅広い用途展開を狙う。

セーレン/多彩な表現力兼備/ビスコ活用で機能性付与

 セーレンのタイでの生産拠点、サハセーレンの衣料一貫生産工場は2013年に本格稼働した。編み立てから縫製まで一連の工程を集約し、一貫生産でコスト、工程ロスを低減。リードタイムも短縮し、市場へ素早く製品を供給する。国内外での販売体制も確立し、製品事業の拡大も狙う。

 15春夏に投入する新製品の主軸は、「ビスコレボ・ゼロシーム」。独自の染色技術「ビスコテックス」を応用しプリントによる柄表現を追求、デジタルプロダクションシステムで各種縫製パーツや切替の3D表現での代替を図った。ステッチ、ワッペンの質感を忠実に再現、さらに鹿の子、ジャカードなどの風合いも表現でき、アイデア次第で多彩なアレンジが可能だ。

 意匠面の差別化に加え、縫い目を減らしたことによる軽量化や肌ストレス軽減、ビスコテックスを生かした機能付与も目玉だ。複合素材の染色時にポリエステルだけを溶かす薬剤も射出。縫製なしで着圧切替パーツを配置し、運動性向上が図れる。

 同様の技術を利用し、汗で蒸れやすい個所に通気孔を開けるクーリングコントロール素材「ビスコマジック エアロマスター」も提案強化する。

 持続性冷感を実現した後加工素材「クールホールド」や特殊疎水性ファイバーで水分を効果的に吸収・拡散させる快適肌ドライ素材「サラマックス」など「快適クールビズ」素材も併せ提案する。

ユニチカトレーディング/綿100%の新素材/毛羽を抑えて清涼感

 ユニチカトレーディングは、綿100%の精紡交撚糸「コットンエスパイン・クール」、複重層スラブ紡績糸「パルパーCS」を開発した。

 コットンエスパイン・クールは、毛羽を極めて少なく抑えて清涼感あふれるドライタッチや、強撚糸にはないしなやかな風合いを特徴とする。上品でマイルドな光沢も併せ持つ。

 パルパーCSは複重層紡績技術を応用し、紡績糸として極めて少ないレベルまで毛羽を抑えたスラブ糸タイプ。ポリエステル短繊維と綿の芯鞘構造で糸に太い部分と細い部分を作ることにより意匠性を持たせるとともに、太い部分と細い部分があることによる肌への点接触と毛羽抑制の両効果で、ドライタッチや吸水拡散性、形態安定性に優れる。

 またパルパーシリーズでは、芯部にポリエステル短繊維、鞘部に原綿改質による消臭コットンを採用した「パルパーDD」も重点提案する。

モリリン/テンセルなど複合素材訴求/意匠性で差別化

 モリリンは、15春夏スポーツ向け重点素材として、「ドライデオセル」「ドライセル」「セルドライ」を訴求する。

 ドライデオセルは、精製セルロース繊維「テンセル」を原綿改質した消臭素材「デオセル」が綿混に対し、ポリエステル混にして吸水速乾性を高めた素材。ドライセルは吸水速乾性に優れる。ドライデオセル、ドライセルの両素材とも、後染めでもトップもく調の表現が可能で、カジュアル素材でありながら高機能が特徴。

 セルドライは、吸水速乾ポリエステルとテンセルの複合糸で抗ピル性やドライタッチ、ソフトな風合いの特徴を持つ。大手スポーツメーカーのアウトドアやゴルフ、フィットネスなどの分野へ浸透し、インナーウエアやカットソーに幅広く活用されている。

 素材開発に関しては、吸水速乾、UVカットなどの機能が標準装備の流れにあるなかで、消費者目線で見た際に素材が同質化しているとし、意匠性を持たせることで、他社との差別化を図る。

デサント提供ソチ公式ユニフォーム/YKK止水ファスナーも

 開幕中の「第22回オリンピック冬季競技大会(2014/ソチ)」。デサントはウエアのサプライを中心に選手へのサポートを行い、オリンピックを通じてブランドの認知度向上や価値向上を目指す。日本代表選手団のオフィシャルスポーツウエア(写真)もその一つだ。

 右のウオームコートは、耐久撥水性、高透湿性、ストレッチの素材を使用し、フロントファスナーも防水仕様。また、首下のレザー加工のファスナーは衣服内の温度調節を可能にした。

 左のトランスフォームジャケットは現地で起きる気温や天候の変化に3通りに変化するウエア。ファスナーが特徴のこのジャケットは前身ごろの裾から首後ろを通り、もう片方の裾にかけて開くことで、保温性に優れた軽量の長袖ダウンジャケットと雨や雪にも対応できるフードの付いた高耐水ジャケットの2つのジャケットに変わる。

 このウオームコートのファスナーは、YKKファスニングプロダクツ販売の水がファスナー内側に染み込みにくいコイルタイプの止水ファスナー「アクアガード」である。雨などの水分をはじくためにファスナーにフィルムが張られているが、今回はつや消しタイプのフィルム仕様である。

 高機能素材と一体となった副資材。ソチの会場で、選手たちの活躍を陰で支えている。