エドウインを傘下に/伊藤忠、全株式取得へ
2014年03月12日 (水曜日)
伊藤忠商事は11日、ジーンズ製造・販売国内最大手、エドウイン・ホールディングス(東京・荒川区、常見修二社長)の全株式を取得することで合意し、10日付でスポンサー契約を結んだと発表した。
管財人によると、契約や今後の事業については4月22日の債権者説明会で報告される見込み。
エドウイングループは2012年8月に為替デリバティブなどによる巨額損失が発覚。民事再生法や会社更生法の申し立てによる法的手続きに替え、事業再生ADR手続きによる事業再建を図るなかで伊藤忠がスポンサーに名乗りを上げ、優先交渉権を取得していた。今後手続きを経て5月下旬に完全子会社化する見通し。
伊藤忠はエドウインが抱える高い認知度を誇る「エドウイン」「リー」などのブランドや、東北地方を中心に13の自社工場を保有し業界屈指の高品質、効率的な生産システムを確立していることから、損失発覚後も素材供給などを通じて支援してきた。
伊藤忠は本業のジーンズ事業を再強化するため、素材・商品開発、ブランド導入、販路開拓など伊藤忠の持つグローバルなネットワークを駆使し、エドウインの企業価値向上に取り組む。
貝原良治・日本ジーンズ協議会理事長(カイハラ会長)の話 (2012年8月の)巨額損失表面化以後、エドウインさんの問題が円滑に解決されるよう望んできた。日本のジーンズブランドが次々と消えていくなかで、「エドウイン」ブランドへの期待は大きい。伊藤忠商事さんには“日本のモノ作り”を大事にしていただき、業界を引き続き支援してほしい。
〔解説〕日本のモノ作り支援を
伊藤忠商事のエドウイン支援が正式に決定したことで、純国産ブランド「エドウイン」の存続が決まった。元々人気があるブランドで、足元の売れ行きも順調なため再建は円滑に進む見通しだ。
伊藤忠繊維カンパニーはこの間、各分野で高付加価値を追求し、「イニシアティブが発揮できる」事業を追求してきた。アパレルビジネスではOEMからODM、ブランドビジネスではインポートからライセンス、商標権取得、M&Aという道筋でビジネスモデルを変えてきた。
事業ポートフォリオの変化も顕著だ。事例を挙げれば衣料副資材最大手、三景の事業再生はアパレルOEMなどでグループの相乗効果を引き出した。神戸ファッションの担い手、ジャヴァホールディングスでは創業者が築き上げた企業文化を継承、創業以来の黒字経営を堅持しながらアジア進出を図っている。
こうした事例には古くはロイネ(インナーウエア)、ジョイックスコーポレーション(紳士服)、コロネット(服飾輸入卸)などがあり、海外でも杉杉集団、山東如意集団など数多い。
岡藤正広社長は「既存の商売は放っておけば消えていく。常に入れ替えを図らねば現状維持すら難しい」と繊維カンパニープレジデント時代から常々口にしていた。今回、「エドウイン」というジーンズブランドの雄が伊藤忠グループに加わることで、同社の「優良資産の積み上げ」「連結経営のさらなる強化」の道筋が一層鮮明になっていきそうだ。
同時に「日本のモノ作りを支える立場」として伊藤忠の責任は重い。自社工場による国内生産にこだわり続けたエドウインの精神をどのように受け継ぐか、関係者は見守っている。 (川)