特集 アジアの繊維産業Ⅱ/カケングループのアジア戦略

2014年03月27日 (木曜日)

大連、青島の受注増/人件費上昇に現地化を

 カケンテストセンターは、中国に5拠点、その他アジア地域に6拠点を設ける。新たな拠点作りは当面ないが、既存拠点の充実を図っている。検品会社のカケンとの連携も図りアジア戦略を進める。

 中国の最大拠点である上海科懇検験服務は染色堅ろう度や物性試験、機能素材試験のほか、安全性試験として芳香族アミンの試験も行う。また、抗菌試験についても準備中だ。

 北部の大連、青島試験室は受注量が増えた。「チャイナ・プラスワンはチャイナという見方もある。寧波から青島に移転した企業もある。また、東南アジアに移転したが、再び中国に戻る企業も」(カケンテストセンター)あり、品質を重視するほど中国の存在は大きい。

 寧波試験室の仕事量は減少していないが、「人件費の上昇」が課題だ。無錫試験室への試験依頼も増えている。この4試験室は昨年2月に上海科懇の分公司扱いとなった。「分公司にすることで、営業活動が可能になり、人数制限も無くなった」という。

 とはいえ、「北京の最低賃金は4月に上がる見通し。北京が上がれば、南の賃金もアップする。人件費の上昇は今後続く」とみられ、「現地化を進める」ことで対応する考えだ。4月には無錫試験室長が中国人になる予定。現地化が進めば、コストだけでなく、営業力も強化される。

 中国以外では、香港、韓国、台湾、インドネシア、タイ、ベトナムに拠点を設置。2012年4月に開設したインドネシアのカケンインドネシアは、試料の無料集荷サービスを行う。「現地での知名度もアップし、ベーシックな試験依頼も増えてきた」。同地でも人件費が上昇している。ベトナム・ホーチミンの拠点はBVCPSとの提携で進める。「カンボジアからの試験依頼も増えている」ようだ。タイはOMIC COPITとの提携。主に日本向けだ。

 韓国はKOTITIとの提携で、日本への輸出向けが多く、工場出張検査や持込検査を行う。台湾はBVCPS TAIWANとの提携で、必要に応じて日本からも派遣する。香港検査所は「芳香族アミンの試験依頼が増えている」状況。「香港を拠点にハンドリングする商社も多い。円安はプラスに働いている」ようだ。

検品のカケン/カンボジアで新会社も/中国で分公司開設

 カケンテストセンターの検品会社カケンは、中国の北京、大連、青島、煙台、南通、上海、深などに9拠点を設ける。現在、「従来の検品センターは港に近く、集荷や物流加工に便利。しかし、沿海部は賃金上昇、人手不足もあり、内陸部の生産工場に近いところに分公司を設けていく」(金木幸夫社長)考えだ。

 江蘇省如皋市の如皋検品センターは南通検品センター(南通科検綜合物流)の分公司である。昨年の3月に40人規模で開設された。「中国は人手やコスト問題もあるが、日本の生産基地としての役割は今後も大きい」という。

 東南アジアでは、インドネシア、バングラデシュ、カンボジアに拠点を置く。インドネシア検品センターは試験から検品まで対応。顧客も広がり、5カ所だった出張所も8カ所に拡大した。人員も125人体制となった。

 バングラデシュ検品センターも100人体制から120人に増員した。アパレル製品の検品、検針、物流加工、出張検品業務を進める。

 カンボジア検品センターは昨年3月、プノンペンに開設された。当初は60人でスタートしたが、120人に拡大。ユーザー基準の検品を行っている。この4月には「カケン インスペクション〈カンボジア〉」をプノンペン市内に新設し、第三者検品に着手する。30~50人でスタートする。

 当初はベトナム進出も検討したが、「ベトナムはマーケットがすでに確立されている。人手不足や工賃上昇、運営費も高い」と見送った。当面は既存拠点の拡大を図る。

上海科懇検験服務/中国内販へ対応/検査や表示アドバイス

 カケンテストセンターの中国拠点、上海科懇検験服務は中国国内販売に向けた業務を拡大していく。日系企業はもとより、中国ローカル企業向けにも展開する。内販向けの検査業務は現在、全体の1~2割程度だが、牟田勝広総経理は「将来的には3割ぐらいまで高めたい」考えだ。

 1994年設立の同社では2002年から中国内販への対応を進めてきた。このため、中国国内向けに必要なCMA計量認証証書(中国内販試験検査機関の資格認定書)やCNAS(中国が国家基準として与える試験室認定)なども取得している。

 さらに、検査だけでなく中国内販用の商品の表示に関するアドバイス業務も手掛けている。中国には日本と違う混用率の表示の許容や表示要求事項があるという。ネーム業者やドロップシップに対応した供給業者などのニーズに応え、こうしたアドバイス業務もさらに拡大させたい考えだ。

 中国国内販売用の試験では日系企業向けだけでなく、中国企業にも顧客を広げていく。現地検査機関との価格差はあるものの、検査後の改善に向けたアドバイスなどきめ細かいサービスを訴求し、中国企業向けに開拓していく。また中国人スタッフによる営業活動も強める。

 同社では中国の繊維業界との関係も深めている。このほど、中国の繊維産業を代表する中国紡織工業聯合会からホワイトリスト管理システムの検査機関として認定を受けた。

 中国国内だけでなく、グローバルな対応も進めている。GBやISOの規格に対応した耐光試験機を現状の1台に対し、数台増やす計画だ。国際的な規格への対応を進めることで「今後は外資系検査機関との競合になってくる」と話す。グローバルな外資系検査機関のとの競争に、繊維製品に特化したきめ細やかな業務を訴求していく。

 また4月から顧客サービスと納期対応の面で社内組織を改革する。社内を受付業務から2分割し、社内競争力を高め、顧客満足度の向上を目指す。さらに今まで納入先ごとに分かれていた担当者を依頼者ベースに分けることで、依頼者と担当者を一本化し、依頼者の利便性を向上する。