東レ南通2社/非衣料分野へ触手/「TFNL」エアフィルター/「TSD」エアバッグ
2014年04月30日 (水曜日)
【上海支局】東レの中国・南通2社が事業領域を広げている。東麗合成繊維〈南通〉(略称TFNL)はエアフィルター、東麗酒伊織染〈南通〉(TSD)はエアバッグ事業にそれぞれ2013年から乗り出している。TFNLはポリエステル長繊維、TSDは裏地染色加工でいずれも90年代後半から立ち上がったメーカーだが、スペックインすれば安定操業が確保できる非衣料分野に触手を伸ばしている。
ポリプロピレン・メルトブロー不織布によるTFNLのエアフィルター事業は空気清浄機向けが7割、自動車向けが3割という構成。12年から中国でPM2・5が社会問題化し、空気清浄機需要が急拡大したことが追い風になっている。
12年に100万台だった中国の空気清浄機市場は今年、日本並みの300万台が見込まれるという。「今後も市場の拡大が期待でき、しっかりシェアを伸ばす」(赤澤潔董事長)考えだ。
現在のシェアは日系メーカー中心に約15%だが、3年後には50%まで高める計画。性能の高さや機能性、グループでの素材からフィルターまでの一貫体制を武器に日系はもちろん、欧米系やローカルメーカーの需要も取り込んでいく。
自動車向けでも、装着率の向上や高性能へのニーズの高まりにより需要の拡大を見込んでいる。
10年からグループのフィルター組み立て工場が中国に進出しているが、開発のスピードアップを狙い今年からTFNLにも量産可能なフィルター組立設備を導入した。さらに来年3月までには不織布の生産能力を2倍に増やす予定だ。
TSDがエアバッグ事業を手掛ける以前は、同敷地内の丸井織物〈南通〉が生産する生機をTSDが加工し、東麗国際貿易〈中国〉繊維事業部門が販売していたが、品質保証の責任を明確にするためにも生産・販売をTSDで一元化することにした。
自社工場内に織機15台を導入、丸井の70台と合わせて85台体制とした。今年は30台を増設する。丸井にはTSDの中国人董事を総経理として出向させ、織布部門はバーチャルカンパニー的に運営している。今年は月産約140万メートルを見込む。
既存事業の主力は秋冬物向けが多いスポーツ用高密度織物で工場稼働は繁閑の差が大きい。一方エアバッグはシーズンに関係がない。カーテンなどを含めた非衣料用比率は今年、3割近くになる見込みで「工場の安定操業への貢献は大きい」(安達一行董事長)という。
15年には織機を30~40台増設を検討する。原糸のナイロン66は今年、グループのタイ・トーレ・シンセティクスから月550トン前後を調達しているが、600~700トンの規模にまで増えれば、隣接するTFNLで生産する可能性も出てくるという。