ズームイン/東レ・デュポンのケブラー営業部長に就いた圓尾 哲朗氏
2014年06月13日 (金曜日)
<高次加工で新提案を>
既存の商品よりも「新しい素材の販売にかかわりたい」。圓尾さんの希望は最初の配属先から実現した。1989年4月に入社したのは、デュポン東レケブラー。東レ・デュポンが設立した、パラ系アラミド繊維「ケブラー」の販売会社で、その年の1月にできたばかりだった。「関連会社の欄に記載がないことに戸惑った」と笑う。
今でこそ、高強力繊維の代表格としての知名度を誇るアラミド繊維だが、圓尾さんが担当したのはまさに、販路開拓が本格化し出したころ。「顧客が使い方をイメージできなかった」こともしばしばあったと言うが、それだけに拡販のやりがいを感じた。
自動車ホース用途として海外では認知されていたため、日本での横展開に取り組んだ。ちょうど、ホースに補強材を高速で巻き付ける新工法が出てきたタイミング。使う糸の量が少なく、生産性も上がるため、ケブラーの特徴は新工法に適していた。自動車用途ではこのほか、新開発素材も提案。ナイロンと複合した高性能タイヤ用素材は顧客から高い評価を受けた。
高密度ポリエチレン配管の補強用途でも、従来素材からの代替に成功した。まだ使われていない素材だけに、こうした開発営業が「描いたストーリー通り顧客の要望に合致したとき」の手応えは大きかった。
東レ本体の産業資材事業部に異動後、中国に駐在。赴任のその日が初めての中国。「ダイナミックな経験だった」と振り返るのは、経済成長を肌で感じることができたからだ。拡販を担当したエアバッグ基布は自動車販売台数が増加するなかで、日系、欧州メーカーへの供給が増え、現地企業の急速な進歩も目の当たりにした。
4月から営業部長として再びケブラーの販売を担当している。競合の新素材、海外メーカーの台頭で厳しい環境になっていると、14年ぶりの印象を正直に語り「さらに新しい提案が必要」と気を引き締める。新しい顧客・用途で「ケブラーの特性が必要とされる場面がまだまだある」と国内販売を改めて強化するとともに、東レ、デュポンと連携した事業拡大に力を入れる。高次加工による差別化商品も今後の課題。「加工場と共に新しいものを提案していきたい」と語る。
趣味は中国駐在時に始めたランニング。ハーフマラソンへのエントリー経験はあるが、フルマラソンは未踏の領域。「いずれは」と展望するが、まずは、皇居ランニングデビューが先だ。(亮)
まるお・てつろう 1989年デュポン東レケブラー入社。2005年東レ産業事業部産業資材課主任部員。09年東麗〈中国〉投資ファイバー・産資部副部長。12年東麗国際貿易〈中国〉ファイバー・産資部長。4月から東レ・デュポンケブラー営業部長。趣味はランニング。48歳。