連載・テクテキスタイル訪問記(下)

2001年05月10日 (木曜日)

 日本企業のテクテキスタイル出展の狙いは欧米企業と対照的だ。もちろん、企業ごとに違いはあるが、日本から出向いた担当者がブースに張り付き、欧州ユーザーとのミーティングに大半の時間を割いたところが多い。

 欧州各国のユーザーを回ろうとすれば移動だけで時間を取られる。しかし、テクテキスタイルに出展し、予め各ユーザーとのアポイントメントを取っておけば、その場で打ち合わせが行えるわけだ。日本企業では最大のブースを構えた帝人は、隣接するテイジントワロンと違って山本安信アラミド事業部長らがブース裏の商談室でミーティングを繰り返していた。もちろん、アラミド繊維の輸出を担うNI帝人商事の担当者の姿もあった。

 PBO繊維「ザイロン」を前回に続いて出品した東洋紡も「テクテキスタイル出展は既存ユーザーとの会合の場、ミーティングプレースと位置付けている」(東洋紡の能島鐵之助取締役機能材第2事業部長)と言う。そのため、日本から6人がブースに張り付いた。10人以上を配し、日本人ばかりという印象だったのはクラレ。溶融紡糸可能なPVA樹脂「エクセバール」とこれを原料とするスパンボンド、メルトブロー不織布を発表したが、基本的には東洋紡と同じスタンス。「ブースを設ければ既存のユーザーが来てくれる。来て欲しいユーザーには事前に案内状を送っている。新しい商いは、あればいいなぐらい」(繊維資材事業部・江嵜為丸開発部長)という考え方。

 これら3社と比べ、東レは現場での商談に意欲的だった。2回目の出展となる今回はPBT繊維によるシートベルトと偏平ナイロン66糸によるエアバッグ布を紹介する一方「ユーザーとの情報交換だけでなく、今回は新規ユーザーの開拓につなげたい」考えで臨んだようだ。前回も商いにはつながらなかったものの、ユーザーとのモノ作りを進めることができたためで、日本から4人を常駐させている。同じく2度目となるアキレスも商いを重視していた。「テント関係の出品者、来場者が多いので、前回も十数件の商いにつながった」(フィルム販売部・湯本洋一海外マーケティングチーム長)こともある。

 今回初出展となるアルケー企画は、生分解性繊維使いの「ライスター」を出品。ニチメンゴーセンの協力を得て製品化したのはカネボウ合繊の「ラクトロン」による白装束、クラレの「プラスターチ」による棺桶用中わたなど。「情報収集を行い新商品開発につなげたい」と前田法子取締役新事業開発室長は意欲的だった。

 各社によって違いはあるものの、情報収集やミーティングなどを含めテクテキスタイル出展は日本企業にとって大いに意味があるもの、と言えそうだ。