特集 アジア繊維産業Ⅱ/アジア生産を支援するカケン

2014年09月05日 (金曜日)

 カケンテストセンター(カケン)は中国、アセアンに試験センターを設け、検品会社のカケンと連携してアパレル製品から雑貨まで対応する。日本向けが中心だが、円安を背景に今後は欧米向け輸出も増えると見込み、ISO試験にも対応していく。

南通事務所を開設/欧米向け試験にも対応

 カケンテストセンター(カケン)は、「アセアンへの生産地移転が進んできたが、英語圏で商社を通さないとビジネスが難しいといった側面もある。このため、日本語が通じやすい中国を改めて見直す動きも出てきた」と指摘する。

 カケンの中国の拠点は上海、青島、大連、寧波、無錫にあるが、その中心は上海科懇検験服務。染色堅ろう度、物性、繊維鑑別、安全性、製品、副資材、機能性、雑貨試験など国内と変わらない試験体制である。この上海科懇は8月4日から南通市崇川区の南通大飯店A楼1601室に「上海科懇南通事務所」を開設した。試験受付窓口の役割で、試験は上海科懇、無錫試験室で対応する。「試験相談、デリバリー、短納期対応をモットーに、これまで以上に迅速な試験結果の提供、アドバイスを行っていく」という目的だ。

 また、アパレル以外の雑貨試験にも着手。寧波試験室は一般試験のほか、バッグの試験を行っていたが、最近はフライパンの摩耗試験や魔法瓶の強度試験にも対応している。このほか、青島試験室はバッグの試験も行う。

 中国以外では香港、韓国、台湾、タイ、ベトナム、インドネシアに拠点を設ける。こうした国々はそれぞれに国情が異なる。

 例えばインドネシアは、同国の近代的小売店で扱う商品の8割以上を国産品とすることを義務付けている。RCEP(東アジア地域包括的経済連携)は2015年末までに交渉完了を目指すが、これが実現すれば、中国素材とアセアン縫製の組み合わせはより自由になる。アジアの貿易地図は塗り替わるとみられる。

 そうした面で、生産地に近い場所に拠点を設ける検査機関にとって、アジア情勢は政情を含めてまだ流動的である。このため、カケンは「新規拠点よりも既存拠点の充実」を優先する考えだ。

 韓国ではKOTITI試験研究院と連携しているが「試験量は減らない。アジア進出企業からの依頼が続いている」ようだ。ベトナムと台湾ではビューローベリタスグループと提携する。

 香港検査所はアパレルの一般試験のほか、傘、ベルト、靴、バッグなどの雑貨試験も扱う。「香港はアジア地区の要。ベトナムのハノイからの試験依頼もある。試験業務は伸びている」と言う。

 今後は欧米向けの試験依頼が増えるとみられ、「韓国、香港、ベトナム、上海、無錫にはISO試験のためのキセノン耐光試験機を導入。大連にも入れる」考えだ。

 一方、カケン東京事業所のグローバルコミュニケーション戦略室は、企業の海外進出を支援する。約20カ国の法規制や市場情報を調査している。これをデータベース化するほか、定期的に各国法規制のセミナーを開く。また、海外向け表示の提案なども行っている。

検品のカケン/生産拠点の近くに配置/インドネシア事業を拡大

 カケンテストセンターの検品会社カケンは北京、大連、青島、煙台、南通、如皋、上海(宝山)、上海(青浦)、深と、中国に9拠点を設ける。しかし、「中国の人件費アップ、為替の円安化は採算を悪化させている。縫製地もアセアンに移転しており、モノ作りの拠点近くで検品を行っていく」(金木幸夫社長)という方針である。

 東南アジアでは、インドネシア、バングラデシュ、カンボジアに拠点を設けた。インドネシアにはインドネシア検品センター、スバン検品センターがあり、試験から出張検品まで対応。顧客も広がり、出張所も設ける。「年内に中部地区にも営業エリアの拡大を図るために新たなデポを設ける。インドネシアでもジャカルタ周辺から中部地区へと縫製拠点が移動しつつある」ためだ。

 バングラデシュ検品センターも増員している。アパレル製品の検品、検針、物流加工、出張検品業務を進める。

 カンボジア検品センターは昨年、プノンペンに開設した。この4月には「カケン インスペクション」をプノンペン市内に新設した。カンボジア検品センターが選別検品に対し、カケン インスペクションは輸出前検査に近い監査検品を行っている。

カケンインドネシア/評価高まる短納期対応

 カケンテストセンターを中心としたカケングループのインドネシア法人であるカケンインドネシア。2012年からインドネシアで検査業務と検品事業を展開する。最近ではとくに検査業務で短納期対応への評価が高まってきた。

 羽生浩之社長によると、検査業務は順調に依頼件数が増加しており「設立以来、毎年5割増しで増加している」という。従来は日本で検査されていた大手SPA向け繊維製品の検査が現地化される傾向に加え、大手郊外店や量販店が新たにインドネシア生産を開始したことで、そこからの受注獲得が進む。

 とくに評価が高いのが短納期対応だ。縫製の中心地となりつつある中部ジャワ地区からカケンインドネシアまで1日で検査する繊維製品を集配し、1日で検査が可能。「夜に商品を検査に出せば、翌日には検査結果が出ることが重宝されている」と話す。このため引き続き短納期対応力を武器に検査業務拡大を進める。機能性試験の拡充も進めており、今年から吸汗速乾性試験も実施できるようにした。

 一方、検品事業は現在、人員100人体制でフル稼働となるなど、こちらも順調に拡大している。ここに来て縫製の中心地が中部ジャワ地区に本格的にシフトしていることから、出張検品を中心に対応力を強化する。また、3月に西ジャワ州スバンに設立した検品センターも順調な稼働となっている。