チャレンジ21/新・繊維産業創造/世界最大の産業用繊維見本市

2001年05月15日 (火曜日)

ルポ「テクテキスタイル2001」

*43カ国から795社が出展/欧米中心の産業用繊維

 世界最大の産業用繊維見本市である「テクテキスタイル2001」が4月24~26日の3日間、ドイツ・フランクフルト国際見本市会場で開催された。フランクフルト国際見本市会場の5、6号館大半を使用したテクテキスタイルの総展示面積は2万平方メートル強に上り、出展数は前回(99年開催)の36カ国・711社を大きく上回り、43カ国から795社に上った。初日の24日は午前9時の開場とともに、多くの関係者が来場。26日までの3日間で前回の1万3000人の来場者を上回ったものとみられ、世界の繊維業界が産業用繊維に注目していることを如実に表わした形だ。

*日本企業は会議重視/欧州ユーザーとの交渉離れ

 テクテキスタイル出展社を国別でみると、地元のドイツが286社と最も多く、続いてフランス75社、イタリア68社、イギリス52社、スイス42社、ベルギー38社、米国30社、スペイン28社、オランダ25社、チェコ21社と欧米企業中心。アジアでは台湾19社、日本6社、韓国4社(日本は欧米関係会社からの出展を含めると8社)が上位3カ国。ドイツという地理的な要因はあるものの、産業資材用繊維が先進国型事業である点を示す1例と言えるだろう。

 出展内容に目新しいものはないが、各企業の出展する目的に違いがある。日本企業はアキレス、アルケー企画、カネボウ、クラレ、太陽工業、帝人、東洋紡、東レ、日本カイノールの8社(欧米の関係会社の出展を含む)がブースを構えたが、各社に共通するのは欧州の既存ユーザーとのミーティングを重視している点だ。

 PBO繊維「ザイロン」に絞って出品した東洋紡では「テクテキスタイルは欧州の既存ユーザーに会う場であり、ミーティングプレース」(能島鐡之助取締役機能材第2事業部長)と位置付け、クラレでも「ブースを設けると欧州のユーザーが訪れてくれて、ミーティングできる。新たな商談はあればよい」(繊維資材事業部・江嵜為丸開発部長)など基本的には同じスタンス。同社は日本企業で最多の10以上を常駐させた。

 日系企業最大のブースを構えた帝人はアコーディスグループから買収したばかりのテイジントワロン(蘭)との共同出展だ。パラ系アラミド繊維のほか、PAN系炭素繊維、ジョンズ・マンビル社から買収したポリエステルモノフィラメントも含め高機能繊維メーカーである点をアピールできたようだが、ブースを二分する帝人とテイジントワロンとは様相が異なった。

 帝人サイドは山本安信アラミド事業部長らがブース裏の商談室でミーティングを重ねていたが、テイジントワロンサイドはブース内のテーブルに座り、談笑する姿をよくみかけた。

*欧米は企業アピール/テーブルといすで談笑

 テイジントワロンに限らず欧米大手企業はブース構成も含めて、出展の狙いがミーティングでもなく、新規顧客開拓でもないようなところが目立った。最大級のブースとみられるアコーディスグループ(インダストリアルファイバーズ、スペシャリティファイバーズ、アクリルファイバーズ)は「毎回、出品しており、顧客とのミーティングと新しいパートナー探しが出展の目的」(B・リュース報道担当)というものの、製品展示は全くなく、ビデオ放映のみ。ブースは軽食を用意するキッチンを設け、テーブル、いすのみの構成ながら来場者でにぎわっていた。大手不織布メーカーである米ジョンズ・マンビル社はミニチュアで製品と用途を紹介したほかは同様のブース。チッソとの合弁会社で昨年設立されたESファイバービジョンズも机とイスそして、パネルのみ。ある日本企業によれば「彼らは欧州ユーザーとミーティングする必要はない。テクテキスタイルへの出展は来場したユーザーに対するアピール」と聞いてようやく納得できた。

 カネボウは86年来の出品だが、スパンデックス不織布「エスパンシオーネ」、導電繊維「ベルトロン」などのパネル展示を中心にカネボウ合繊が進める「シグマニッチ戦略」(カネボウ合繊・菊池香一取締役)を改めて強調する。

 今回が4回目となるテントメーカーの太陽工業はパネル展示で「テントは原材料メーカーと我々のような加工業、そしてユーザーの三位一体での商品開発が必要。この見本市には原材料メーカーの出展や来場がある。やはり人と人とのコミュニケーションによって貴重な情報は得られる」(上村俊明購買部長)として、新たな商談には大きく期待していない様子だった。

 眼鏡部品の材料商社であるアルケーの子会社、アルケー企画(福井市)はテクテキスタイル初出展で、ポリ乳酸繊維による繊維製品「ライスター」を出品したが「情報収集を行うとともに、今後の製品開発につなげたい」(前田法子取締役新事業開発室長)考え。

 昨年に続き2度目の出展となる東レはPBT繊維100%によるシートベルト、扁平ナイロン66によるエアバッグ布など新素材も出品し「情報交換だけでなく、新規ユーザーの開拓にもつなげたい」と商いに意欲を見せた。同じく2度目の出展となるアキレスではテント用の塩ビシートを出品したが「繊維ではないが、ユーザーであるテントメーカーが多く来場する。前回も十数件は実商いにつながっており、今回も出展を決めた」(フィルム販売部本社機能素材グループ・湯本洋一海外マーケティングチーム長)と商いを重視するところもあった。

*テクテキスタイルワールドワイド統括ディレクター・ミハエル・イエネッケ氏に聞く

 テクテキスタイルはフランクフルトのほか、日本、北米、南米、中国で開催される。そのワールドワイド統括ディレクターが、メッセフランクフルトのミハエル・イエネッケ氏。同氏に今回のテクテキスタイルと来年大阪で開催予定のテクテキスタイルアジアについて話を聞いた。

テクテキアジア/大阪以外の開催も検討

  ――今回のテキスタイルでは出展社が大幅に増加した。

 前回に比べて約12%増の795社になった。出展が増えたのは東欧、アジアも2カ国増え、東アフリカからも出展してもらえた。

 ――ただ、産業用繊維、不織布とも大手企業であるデュポンが出展していないが。

 米国で開催したテクテキスタイルノースアメリカにもデュポンは出展しなかったし、今回もデュポンから出展しない旨の連絡を受けていた。その理由はデュポンに聞いてもらいたい。我々としてはデュポンの出展を歓迎するが、社内での改革もあろうし、我々には分からない。

 ――出展社も来場者も減少傾向にあるテクテキスタイルアジアを02年に開催する予定だが。

 フランクフルトもスタートした86年は来場者が4500人ほど。規模を拡大するには時間がかかった。昨年開催したテクテキスタイルアジアの苦戦は日本経済の低迷によるところが大きいが、日本企業からはユーザーが分かっているため、展示会の必要性がないとの意見もある。その面では大阪は適地ではないのかもしれない。現在のところ大阪以外のアジア諸国も含めてテクテキスタイルアジアの開催を検討している。