チャレンジ21/新・繊維産業創造/大手不織布メーカー3社出展

2001年05月15日 (火曜日)

産業界に不織布は不可欠

 テクテキスタイルは産業用繊維の国際見本市ではあるが、インターナショナル・トレードフェア・フォー・テクニカル・テキスタイルズ・アンド・「ノンウーブンズ」と掲げるだけあって、不織布メーカーの出展は数多い。言い換えれば不織布が産業用途において不可欠の存在であることを示したとも言える。

*次世代不織布をアピール/クラレは溶融紡糸PVAを

 今回のテクテキスタイルでは世界第二位の不織布メーカーでもあるデュポンが出展していないが、世界最大の独フロイデンベルグ、世界第三位の英BBAノンウーブンズ、第四位の米PGIノンウーブンズが顔をそろえた。

 フロイデンベルグは次世代不織布「エボロン」による製品を全面に展示し、懇談が中心の欧米大手企業の中で目を引いた。「ミーティングだけでなく、来場者が知らない新たな製品を紹介する」(Bエルムナー報道担当)と技術力の高さをアピールするとともに「将来『エボロン』は織・編み物を含め世界のテキスタイルの5%を占めるだろう」との自信も示した。

 「エボロン」はスパンボンドとスパンレースの技術を組み合わせたもの。ナイロンとポリエステルからなる長繊維を紡糸、ウエッブに集積後、高圧水流によって0・05~2・5Tのマイクロファイバーに分割するとともに、繊維を交絡する。一貫生産であるため、生産スピードが高く、コスト的にも優れるのが特長だ。フランス工場にコマーシャルプラントの導入を終えたが、日本バイリーンを通じてトヨタの高級乗用車「レクサス」の内装材にも採用されたという。

 同じく、次世代不織布「ミラテック」を出品したのはPGIノンウーブンズ。レーザーとウォータージェットを組み合わせたAPEX技術は「コンピュータでデザインし、様々な素材を使用することができる」(Fヒジェンガマーケティング&販売部長)のが特長として、「エボロン」との違いを強調。同展では綿60%・ポリエステル40%混によるデニムや寝装品などを出品したほか、ポリエステル100%使いで1ウエーストレッチ性をもつ「ミラストレッチ」を紹介するなど、同じく技術力をアピールする姿勢を示した。

 これに対し、BBAノンウーブンズは「当社の様々な不織布を紹介する」(Gメイヤーマーケティングサービス)とコメントしたが、SMMS(2層のメルトブローをスパンボンドで挟み込んだもの)使い中心の製品とパネル展示で大手不織布メーカーではあるが、印象には残らず、フロイデンベルグ、PGIノンウーブンズとの差がみられた。

 また、不織布関係ではクラレが溶融紡糸の可能なPVA樹脂「エクセバール」を使用したスパンボンドとメルトブロー不織布を発表した。「エクセバール」は従来のPVA樹脂に比べ水溶性に優れることから配合糊材として展開する一方、溶融紡糸できる点を生かしてスパンボンドやメルトブローなど溶融紡糸する不織布原料としての展開を摸索しており、同展では「エクセバール」を使用したメルトブローとスパンボンドの原料販売の可能性も探るため、原反をサンプル展示した。同展で紹介したのは芯ポリプロピレン、鞘「エクセバール」からなるスパンボンドと100%使いによるメルトブロー。SMS(スパンボンドでメルトブローを挟み込んだもの)の可能性も示した。

 さらに、不織布の原料として、割繊タイプの極細繊維「ランプ」の新タイプも発表。同繊維は中空タイプで割繊するため、従来の「ランプ」の11分割よりも多い13分割するため、単糸が0・2dと従来品よりもさらに細く、分割する時間も遅くなっていることから主にスパンレース不織布向けに展開する考えだ。

 さらに、同社のポリ乳酸を原料とする生分解性繊維「プラスターチ」を使用した棺桶用中わたをアルケー企画が出品し、新たな用途展開として注目を集めた。

*高強力ポリエチ2強出展/台湾カーボンが活性炭素繊維

 スーパー繊維メーカーの出展も目に付いた。高強力ポリエチレン繊維では市場を二分する「スペクトラ」を製造する米ハネウェルハイパフォーマンスファイバー、「ダイニーマ」(日本では東洋紡が展開)を擁する蘭DSMハイパフォーマンスファイバーズが出展。DSMは年内に既存3ラインの能力アップを行い「500~600トン増」(Jブレッケルマンズエリアマネージャー)となる年産二千トンに拡大するとともに、同六百トンの新設備を導入して同二千六百トン体制に、さらに、02~03には米国で防弾チョッキ用「ダイニーマ」UDタイプ専用工場同400トンを建設する計画。ハネウェルは同1000トン設備の倍増設を発表するなど一歩も引かない姿勢。今回はハネウェルが二層の「スペクトラ」をフィルムで挟み込んだ防弾ジョッキ用「スペクトラシールド」が興味深い。

 ミーティング重視の東洋紡は前回に続き、PBO繊維「ザイロン」を出品、中でもエドウインが独、仏で発売するジーンズ「E―ザイロン」が注目を集めた。日本カイノールはカイノールヨーロッパとして出展。ノボロイド繊維「カイノール」を「世界唯一の素材としてアピールするとともに、来場者からは具体的な要望が多い」(日本カイノール・栗生晃社長)と手応えを感じた様子。台湾勢は18社中、14社が台湾パビリオンとして共同出展。その内の一社である台湾カーボンは旭化成から原料供給を受けPAN系耐炎繊維と活性炭素繊維「コスメックス」を出品。その他台湾企業も数多くの製品を展示し、顧客開拓に意欲を見せていた。

 これに対し、韓国企業は単独ブースでの出展が多かったが、コーロンなどはパネル展示のみ。蘭DSMと提携して年末から生産を開始する高強力ナイロン「STNYL」も紹介するにとどまった。

*重布関係の出展も多い/学生がテントによる空港提案

 こうした不織布やハイテク繊維ばかりでなく、伝統分野である帆布、テント地、ターポリンなど重布企業の出展が多いのも特徴と言える。ドイツ繊維協会のM・フィッシュバッハ氏によると「ドイツには30~40社のテント製造業者があり、機屋は200社近くある」と言う。日本では縮小均衡にあるテントだが、ドイツでは一般家庭のテラスや商店の軒だしにテントを使うことが多いためだ。

 これを反映してか、テクテキスタイルに合わせて行われた学生によるコンテストではテントなどを使用した斬新なアイデアが紹介された。

 そのひとつがダルムシュタッド大学の学生らが提案したテントによる空港。寒冷地では難しいが、アイデアとしては面白い。産業用繊維はまだまだ用途開拓の可能性が残されていることを実感させられた。