2014秋季総合特集/モノ作りの変化に対応する検査機関

2014年10月24日 (金曜日)

 モノ作りの環境が大きく変化している。中国の人件費高騰とアセアンシフト。衣料品だけでなく服飾雑貨を含めたライフスタイル商品の拡大、健康・安全志向の広がりなどである。こうした変化に検査機関はどう対応するのか。下期に向けた方針を聞いた。

カケン/構造改革を進める

 カケンテストセンター(カケン)は今期、前期(96億4800万円)比微増程度の売り上げを予想する。長尾梅太郎理事長は「円安の進行、消費増税、中国の人件費アップ、競争激化など内外ともに厳しい状況にある」とし、6月から始まった3カ年計画ではこの3年間を調整期と位置づけ、構造改革に向けてグループ全体の知恵を結集する。

 カケンは8月に中国の上海科懇南通事務所を開設した。上海科懇検験服務と無錫分公司と連携し、南通地区での試験相談、デリバリー、短納期対応を目的にする。

 また、バングラデシュでは韓国のKOTITIバングラデシュと提携して10月からサービスを提供。BVCPSベトナムはカンボジアにもテリトリーを広げている。

 また、香港検査所にはインド、バングラデシュから試験依頼が入る。「香港は米ドル、人民元にも対応できアセアン、東アジアのハブ的機能を有する」と言う。

 こうしたグローバル化を進めながらも、下期は売り上げが伸びにくく、コストアップが進むとみて、構造改革に向けて業務の見直しを図っている。「とくに人材の育成と強化は重要。また、海外ビジネスの拡大、新分野の開拓、提携機関との関係をどう作っていくか」に注力する。海外の検査機関だけでなく、日本文化用品安全試験所との提携もそうした取り組みの一つである。

ボーケン/化学分析の時代が来る

 ボーケン品質評価機構(ボーケン)の堀場勇人理事長は「選ばれるボーケンを目指す」と語る。このため、人材教育、ネットワークの強化、事業領域の拡大、ボーケンウェブによる迅速な対応、フェース・ツー・フェースのコミュニケーションなどに注力する。

 上期は国内事業が持ち直す一方で、海外は停滞気味だった。中国の人件費アップの影響や円安で海外生産が様子見の状態になっている。

 とくに青島試験センターが苦戦したという。生産のアセアンシフトも一因とみられる。上海と常州の試験センターは堅調に推移。5月には南通事務所を設けて受付業務を開始した。

 インドネシアのジャカルタ試験センターはまだ投資効果が表れていない。タイではバンコク事務所を13年11月に開設、今年4月からSGSタイランドとの包括的な業務提携でバンコク試験センターに改編した。「現地生産・現地販売にも対応」していく。カンボジアもタイで管轄する。

 ベトナムも事務所として開設し、4月からSGSベトナムとの業務提携でホーチミン試験センターとなった。

 家具から始め、11月からテキスタイルの試験も開始する。タイ、ベトナムを軌道に乗せてからカンボジア、ミャンマーへの対応についても検討する。「化学分析の時代が来る。アゾ試験もより海外対応を充実させていく」考えだ。

QTEC/トータル支援サービスを

 日本繊維製品品質技術センター(QTEC)の中島重雄理事長は「トータル支援サービスを拡充しながら、選択と集中、営業力の強化に注力する」考えだ。

 業務の基本となるトータル支援サービスには試験、検査、認証、技術指導、情報提供などがある。統合業務システムはウェブ閲覧サービスにも注力する。試験では微生物試験を拡大。神戸試験センターと上海総合試験センターで対応する。QTECがISO制定に向けて尽力してきた「繊維製品の抗ウイルス性試験方法」(ISO18184)は9月に発行された。

 中部事業所は羽毛試験を行う。日本羽毛製品協同組合、国際羽毛協会などの認定試験機関で、国際的に対応した成績証明書を発行する。中国の無錫試験センターでも羽毛試験を実施している。

 中国では上海総合試験センターが中国の核として展開。アゾ試験、抗菌、生活用品などを実施し、CNAS(中国が国家基準として与える試験室認定)も取得。GB試験については上海のほか、青島、無錫でも対応していく。深センは生活用品(かばん、靴、傘)の試験を拡大して雑貨ニーズに応じる。

 バングラデシュのダッカ試験センターはスペースを拡大し、日本向け以外も視野に入れる。新たなアセアン拠点「QTECバンコク試験センター」の試験は徐々に拡大、検査は安定している。

ニッセンケン/グローバル化に対応

 ニッセンケン品質評価センター(ニッセンケン)の駒田展大理事長は「上期業績は前年並みに推移した」と語る。国内はエコテックス、東京、大阪の事業所が健闘。海外は中国・南通がほぼ横ばいで煙台、上海が伸びた。インドネシアは引き合い増も量的達成に届かず。ミャンマーの検品は軌道に乗り出した。カンボジアの検品会社は12月に稼働予定である。

 ニッセンケンは2000年にエコテックス国際共同体に加盟し、日本で唯一のエコテックス認証機関として「エコテックス規格100」の認証活動を推進する。「健康・安全意識の高まりを実感する」と好調。また、東京事業所立石ラボでは、高視認性評価測定を中心に防災・安全評価試験を実施。JIS化も見込まれ、異業種にも対応していく。

 海外では4月に中国の青島事務所を開設。同事務所で受け付けた商品は煙台事業所で試験する。中国では2001年に南通事業所を開設。以後、崇川、上海、南通人民路、煙台事業所と広げ、内販向けにも対応する。検品業務も進めており、新たに南通の如東に検品センターも開設する。

 インドネシアでは生産が中部ジャワにシフトされているため、出張検品のソロ検品センターを開設した。ミャンマーのヤンゴン検品センターのほか、カンボジア・プノンペンに検品会社を設立し、グローバル化に対応する。