特集/清潔・衛生と繊維製品 /安心・安全に取り組む検査機関

2014年11月20日 (木曜日)

 抗菌防臭といった清潔加工から抗ウイルス性試験まで安心・安全に向けて繊維の検査機関は活動している。4検査機関の取り組みをまとめた。

カケン/マスク性能試験も実施

 カケンテストセンター(カケン)は抗菌防臭、制菌、抗かびなどの試験に加えて、全国マスク工業会の推奨検査機関としてマスクの性能試験も実施している。試験内容もカケンが開発したものだ。

 カケンが実施しているマスク性能試験は、BFE(バクテリアを含む飛沫捕集効率)試験、VFE(ウイルスを含む飛沫捕集効率)試験、PFE(0・1マイクロメートルまでの微小粒子捕集効率)試験。いずれもカケンが試験方法と装置を開発した。こうした取り組みが注目され、全国マスク工業会からの依頼を受け、推奨検査機関になっている。

 マスクの性能を評価する場合、捕集効率だけでなく圧力損失性を確認することも欠かせない。カケンではマスクの圧力損失性試験方法と装置も開発し、捕集効率試験と同時に実施している。また、マスクや衣料品に使用される繊維材料の血液バリア性試験も行っており、こちらも注目度が高まってきた。

 繊維製品の抗ウイルス性試験方法がISO化され、来年4月から繊技協による「SEK抗ウイルス」マークの認証が始まる。

 カケンでは指定検査機関として抗ウイルス性試験の設備を大阪事業所生物ラボに整備を進めてており、来年初には試験の受託を開始する予定だ。マスク関連の試験と合わせて、活躍が期待される。

ニッセンケン/インドでもアゾ試験開始

 「9月以降、抗ウイルス性試験の問い合わせが増えている」。ニッセンケン品質評価センター(ニッセンケン)の東京事業所立石ラボの試験室はBSL―2(仕様は3レベル)と安全性が高く、一昨年から抗菌防臭・制菌・抗カビ性試験のほか、抗ウイルス性試験にも対応。抗ウイルス性試験に対する問い合わせは繊維の加工メーカーのほか、マスクメーカー、薬剤メーカーなど幅広く、関心の高さを示している。

 抗カビ試験ではクロコウジカビ、アオカビ、クロカビ、白癬(せん)菌などに対応。また、抗菌防臭でも「最近はお茶のカテキンやヒノキチオールなど天然由来の抗菌剤についての試験依頼などが増えている」ようだ。

 一方、ニッセンケンは国内唯一のエコテックス規格の認証機関として、安心・安全の繊維製品試験をエコテックス事業所で実施している。特定芳香族アミンにも対応しており、中国の上海事業所では抗菌や消臭試験のほかアゾ試験に対応。11月から業務を開始した「インド ジャイプル事業所」でも機能性試験のほかアゾ試験やホルマリン試験を対象にしており、海外からの輸入品に対しての安全性をサポートする。上海事業所は「機能性試験や抗菌試験は中国でも当たり前になっている。アゾ試験は内販向けの必須試験であるが、日本向けも徐々に増加傾向にある」と言う。

ボーケン/海外で試験拠点拡大

 ボーケン品質評価機構(ボーケン)は、抗菌防臭、消臭、抗かび、部屋干し臭の原因菌であるモラクセラ菌を対象にした制菌など幅広い試験に対応する。繊技協「SEKマーク」認証の指定検査機関にもなっており、海外でも試験を実施できる。

 現在、抗菌性試験と消臭性試験を大阪、東京、上海の3拠点で実施している。さらにバンコクで抗菌性と消臭性、香港で抗菌性試験も実施する計画だ。近年、海外でも機能素材の生産が拡大していることから、試験を海外で実施することでの短納期化などユーザーの利便性は高い。中国では中紡標〈北京〉検験認証中心(CTTC)、全国衛生産業企業管理協会抗菌産業分会(CIAA)と交流が進む。12月にはCIAAが北京で開催する抗菌フォーラムでボーケンが抗菌に関する講演を行うなど、抗菌・消臭の技術交流に取り組む。

 抗ウイルス性試験方法がISO化されたことから、年内には大阪事業所で試験を開始する予定だ。11月から東京と大阪で開催するボーケン展示会でも抗ウイルス性試験の詳細を紹介する。

 日用品分野でも清潔・衛生に対応した試験を行っている。現在、日本衛生材料工業連合会の指定検査機関としてウエットワイパーの除菌性試験を日本石鹸洗剤工業会の指定検査機関として台所用や住宅用の石鹸・洗剤の除菌性試験も今年から開始するなど、幅広いニーズに応える。

QTEC/抗ウイルス性 神戸で試験

 「ISO18184(繊維製品の抗ウイルス性試験方法)」が9月に発行された。日本繊維製品品質技術センター(QTEC)はこれまでISO/TC38/WG23専門家として国際会議に参加し、繊維製品の抗ウイルス性試験方法の研究開発を進め、ISO制定に向け活動してきた。この研究開発で修得した試験技術に基づき、来年4月に予定されるISO18184の試験方法によるSEKの抗ウイルス性試験にも対応する。

 QTECの神戸試験センターの微生物試験室では安全性の高いBSL―3を維持しながら抗菌性・抗ウイルス性の各種試験を行う。JISの繊維製品の抗菌性試験、プラスチック製品の抗菌性試験、光触媒抗菌加工繊維製品の抗菌試験のほか、繊維評価技術協議会の抗カビ性試験や消臭試験、日本衛生材料工業連合会の抗菌性試験などである。

 また、「アゾ試験も増えている」とし、日本のほか、上海やタイでも対応する。また、食品衛生法に基づく厚労省登録検査機関に向けて玩具と容器包装分野で仮申請のチェック段階にある。

 「市場は安全性を求めている。できあがった商品の優劣を確認する試験だけでなく、その商品のコンセプト作り、どういうものを作りたいのかという段階から参画する取り組み型を目指す。技術集団としての立ち位置を示すことができる強みを生かす」考えだ。