繊維の基礎講座〈高機能繊維編〉68/―日本繊維技術士センター(JTCC)―
2014年12月12日 (金曜日)
第6章 高強度ポリビニルアルコール繊維/3.ポリビニルアルコール繊維の作り方
「クラロンK―II」の製造方法について述べる。クラロンK―IIは、従来の水系の湿式紡糸による繊維とは異なり水を全く用いない溶剤湿式冷却ゲル紡糸法による合成繊維である。
まず、PVAをDMSOに溶解して紡糸原液を作り、冷メタノール中へ紡出することによって急冷し、溶媒を含んだまま凝固させて断面全体が均一で透明なゲル状の未延伸糸を作る。その後に凝固液の浸透、DMSO溶剤を完全にメタノールに置換し、原糸を乾燥した後、延伸、熱処理によりクラロンK―IIが得られる。
従来の水系湿式紡糸では、紡糸後にスキンコア構造が形成され、その不均一マクロ構造から高強度繊維が困難であったが、一連のプロセスを穏やかに進行させることにより、高倍率の延伸が可能になり、高強度が発現された。PVAの重合度が1万8000程度で、アラミド繊維をしのぐ高強度繊維が得られている。
さらに、直径100ミクロン以上の極太のクラロンK―IIでも10CN/dtex以上の引張強度を有し、モルタルやコンクリート補強材として今後が期待されている。
PVAの重合度と鹸化度を調整することにより、従来の水系湿式紡糸方法では、繊維が膠着(こうちゃく)して製造出来なかった種々の水溶性(5~90℃)のPVA繊維を製造することができる。また本繊維に架橋剤を添加して、自重の数十倍の水を吸収するタイプも開発されている。(保城秀樹)