炭素繊維事業/20年度1000億円へ/三菱レイヨン・三菱樹脂事業統合で

2015年01月09日 (金曜日)

 三菱レイヨンと三菱樹脂は4月1日付で炭素繊維事業を統合する(一部既報)。PAN系炭素繊維を展開する三菱レイヨンが三菱樹脂のピッチ系炭素繊維事業を会社分割の方法で統合し、新組織を発足させる予定。今後はピッチ系炭素繊維の知見をPAN系の領域に応用し、とくに自動車向けで事業を拡大する。現状、両社合わせて600億円程度の炭素繊維事業規模を次期中期計画(2015~20年度)で1000億円まで高める。

 三菱レイヨンはポリアクリロニトリル(PAN)が原料で強度に優れるPAN系炭素繊維、三菱樹脂がコールタール(ピッチ)原料の弾性率に優れるピッチ系炭素繊維を扱う。ともに三菱ケミカルホールディングスのグループの事業会社として各炭素繊維を供給するが、それぞれの知見を組み合わせた相乗効果の発揮を検討してきた。

 市場規模が大きく、すでにグローバルに展開するPAN系炭素繊維へ統合することを決めた。三菱樹脂が保有する坂出工場のピッチ系炭素繊維拠点も4月から三菱レイヨンが管轄する。

 三菱樹脂は高弾性ピッチ系炭素繊維の生産能力で世界1位。この知見をPAN系応用する形で提案力強化につなげる考えで、とくに自動車向けを中心とした一般産業分野に注力する。

 三菱レイヨンは、PAN系にピッチ系を複合することで弾性率と軽量性を向上する炭素繊維織物の量産技術の開発に成功しており、こうした差別化素材を自動車の外板、構造部材用に展開。炭素繊維や供給力に強みを持つプリカーサー(焼成前のPAN繊維)だけでなく、中間材での供給比率を高めて行く。

 同社では、自動車向け炭素繊維の年間需要が15年の約1万トンから20年には、欧州での燃費規制の強化などを背景に、2万5000トン程度まで伸びると見込んでおり、この中で「メーンプレイヤーになる」(三菱レイヨンの山本巌常務執行役員炭素繊維・複合材料ブロック担当)ことを目指す。需要地での生産を念頭に合弁、提携、M&Aを通じてプリカーサーなどの生産拠点を拡充するほか、中間材プラントの設立も進めて、15年度からの次期中計で現状600億円の炭素繊維事業を1000億円規模まで拡大する。