帝人「ナノフロント」/“機能の翻訳”でアイデア/産資分野開拓も本格化

2015年02月02日 (月曜日)

 帝人がポリエステルナノファイバー「ナノフロント」を使った製品展開を広げている。「細い」ことに由来する物性を様々な角度から研究した商材企画がスポーツ、医療、ヘルスケアと展開分野を拡充し、今後はフィルターを主力とした産業分野の開拓も強化していく。

 ナノフロント使いの製品展開で主力はゴルフ用を中心とするスポーツグローブだ。防滑性(すべりにくさ)の特徴を生かした高いグリップ性を打ち出し、国内で採用するスポーツメーカーが拡大。自転車や野球用など競技の幅出しとともに、今春には海外展開も開始するという。

 防滑性の活用では、ニトリとの機能商品開発プロジェクトに採用され、ひもなしの掛けふとんカバーが販売を伸ばすほか、髪の毛が抜けた患者がウイッグの下に装着する医療用インナーキャップを新たに紹介した。両面テープやクリップを使う従来品に比べ、防滑性を保ったまま頭皮へのダメージを軽減する効果がある。

 こうした製品企画の広がりについて、高機能繊維事業本部営業部門の堀之内新一郎エンジニアリングファイバー部長は「ナノフロントは突き詰めると細い糸。生地化による表面積の拡大が高い摩擦力につながり、それが防滑性という特徴になって各用途に合う“機能の翻訳”がポイント」と指摘する。

 このほか、ナノフロントの物性評価を進めるなかで防透とともに赤外線を反射する遮熱性能も発見し、百貨店向けのブランド日傘の展開につながった。水分保持性を利用した美容マスクも販売する。防滑性のほか、備える機能とその“翻訳”でグループが掲げるソリューション提案型のビジネスモデルを構築しており、堀之内部長は「顧客を巻き込んで用途のアイデアを考える面白い素材」と語る。

 今後に向けてはレザーに近い肌触りを生かし、バッグや家具など天然皮革代替も視野に入れる。また、産業資材分野への提案も本格化し、とくにエアフィルターで自動車用吸気フィルター、海外向けクリーンルーム用途を開拓する。加工度を上げた最終製品までの対応を念頭に開発に力を入れる。