連載・商社決算分析(4)/収益

2001年05月31日 (木曜日)

 前の期に比べ最も連結売上高が伸びた三菱商事。対して最も高い率で連結営業総利益を増やした伊藤忠商事。

 三菱商事はSPA(製造小売り)新業態向けのアパレル取引の拡大が奏功した。取り組み先にはファーストリテイリング、ワールド、ファイブフォックスグループなど並み居る勝ち組企業がそろう。同社は、前期比で連結売上高27・1%増と大幅に扱いを増やしている。

 一方の伊藤忠商事は、原料など素材の健闘に加え、ブランドビジネスやSPA対応など収益率の高い分野での好調が利益上乗せに寄与した。単体では時価会計対応による株式評価損などを引き当てたうえで、税引前・税引後とも前年比でほぼ倍増、過去最高水準の利益を確保した。

 視点を営業総利益率に移すと、住金物産が頭一つ抜けている。同率(連結)13・6%は、強みであるニット関連が好調を持続したほか、「関係会社の整理が一巡し、本体各部もバランスの取れた収益体質へ好転した」(幸田明治副社長)からだ。

 ニチメンは、ファーストリテイリングとの取引で好調だった旧ニチメンプルミエをはじめ、ニチメンインフィニティなど子会社、関連会社の好業績により、連結営業総利益は前の期を9・7%上回った。同率(連結)は、11・7%と住金物産に次いで2番目に高い。

 利益状況は未公表の企業が多く不透明なため、単純比較はできない。だが、時流に乗った取り組みで利益を向上させた企業がある一方で、不採算取引からの撤退や関係会社の整理、不良債権の償却などで利益を目減りさせた、もしくは赤字に陥った企業もある。

 丸紅は旧ソ連向け債権の償却や関係事業会社の特別損失などから、最終損失34億6200万円(国内支社・支店、海外現法・支店を除く)を計上した。三井物産は紳士衣料分野で、エムエムエフから撤収したほか、エフワンの営業権譲渡を決め、収益体質の改善を図った。同様に、住友商事は子会社アリエスをCHOYAへ売却、営業総利益減少の要因となった。

 三菱商事が純利益で大幅増益の50億円を達成した。同社は前期で終了した「2000年中計」の過程で、不良資産の償却や不採算取引の整理・整とんを前倒しで進めていた。