ノンウーブン・不織布の世界
2001年06月01日 (金曜日)
クラレ「エクセバール」溶融紡糸可能なPVA SB、MBの原料に期待
クラレが開発した酢酸ビニル系(PVA)水溶性樹脂「エクセバール」。同社では繊維糊材として展開する一方、溶融紡糸が可能なことからスパンボンド(SB)やメルトブロー(MB)不織布の原料としての展開も狙っている。SBやSBをMBで挟み込んだSMS、SMMSなどの主力用途である紙おむつは大量廃棄される製品。生分解性もある「エクセバール」が紙おむつの地球環境への負荷を低減するための、第一歩につながるかもしれない。
「エクセバール」は従来のPVA樹脂であるポバールと同社のEVOH樹脂「エバール」の特徴を兼ね備えた樹脂で、水に溶けるがいったん乾いて固まると(1)耐水性、ガスバリヤー性を発揮(2)低温における水溶液の粘度安定性(3)溶融成形性(4)生分解性――などの特徴をもつ。
溶融紡糸が可能という点がSB、MBへの応用につながる。従来、PVA樹脂を原料とするビニロンは乾式か湿式紡糸で繊維化するため、溶融紡糸直結で長繊維不織布化するSB、MBはなく。ビニロンを使用する不織布はすべて短繊維不織布だった。
同社では、今年3月に開催された米フロリダの国際不織布産業見本市「IDEA01」、4月の独フランクフルトで開かれた産業用繊維の国際見本市「テクテキスタイル01」に出展し、「エクセバール」を紹介したが、SBやMBの原料販売の可能性も探るため、原反のサンプル展示を行った。
同展で紹介したのは芯ポリプロピレン、さや「エクセバール」からなるスパンボンドと100%使いによるメルトブロー。SMSの可能性も示した。
「エクセバール」によるSBは(1)水溶性(90℃以上)(2)リントフリー性(3)その他熱可塑性樹脂との複合――が特徴で、ポリプロピレンと複合紡糸すれば親水性のあるポリプロピレンSBの生産が可能だ。100%によるメルトブローではソフトで高い水溶性、また、その温度もコントロールできる。もちろん、繊維化して短繊維不織布の原料にも使用可能だろう。
これまでPVA樹脂の主力用途は繊維、糊剤、フィルム、製紙だったが「エクセバール」により、SBやMBなど不織布が加わる可能性も秘め、フル生産に持ち込めていない自社のMB「ミクロフレックス」の起爆剤にもなるだろう。
さらに、不織布展開が増えれば年産1万トン生産設備もポバール併用ではなく「エクセバール」専用機に変わるかもしれない。