特集 快適素材・加工/時代が機能を求めている

2015年05月27日 (水曜日)

 吸汗速乾や涼感、抗菌防臭、消臭といった快適性に焦点を当てた機能素材への注目度が一段と高まってきた。機能素材・加工の歴史は古い。しかし、それが普及するには、時代の要請が欠かせない。いまや夏の節電は常識であり、クールビズスタイルも定着した。つまり、あらゆる機能素材・加工の普及の背後には、社会経済的基盤が存在する。時代が求める注目の機能素材を集めた。

ダイワボウノイ/独自ファイバーの可能性

 ダイワボウノイは、ポリプロピレン(PP)短繊維「デューロン」や紙糸「OJO+」など独自ファイバーを活用することで快適性などに対する“モノ作りの可能性”を追求している。

 デューロンは、軽量性、速乾性、保温性などPPの特性に加えて独自技術によって可染タイプやセルロース繊維複合可能タイプを用意することで衣料用途での可能性が格段に広がった。三備産地の機業とも連携し、デューロン・綿交織のデニムなどの開発も進む。

 産学連共同研究にも取り組む。信州大学の上條正義教授とPP素材の快適性について感性工学の視点から分析しており、PPとセルロース繊維の複合で肌着などに最適な快適性を実現でき、PPと吸汗速乾性ポリエステルを複合することでスポーツ素材として高い快適性を確認した。

 OJO+も注目度が高まってきた。すでにデニムに採用されたが、新たにかばん地にも採用されるなど用途が広がる。靴下でも紙糸の物性を生かした製品作りが進められている。

 そのほか機能加工では、抗ウイルス加工「クリアフレッシュV」が登場。「SEK抗ウイルス加工マーク」認証の基準をクリアした加工だ。

ダイワボウレーヨン/機能レーヨンで貢献

 日本で唯一のレーヨン短繊維製造専業であるダイワボウレーヨン。レーヨン短繊維は木材パルプを主原料としており、基本物性として吸水性や吸湿性に優れるなどの特徴がある。

 地表・土中でもバクテリアにより分解する生分解性がある。燃焼時に有毒ガスを発生しないなど、生まれながらの環境配慮型繊維でもある。

 同社はこのレーヨン短繊維と機能剤を複合化することで、様々な機能レーヨン短繊維を開発し、快適な衣料製品に貢献する。

 ミルク成分を練り込んだ「ミレー」をはじめ、光触媒レーヨン「パナケイア」、難燃レーヨン「DFG」、多機能レーヨン「パラモス」など様々な機能レーヨンを開発し、販売している。

 こうした機能レーヨンの比率を50数%に高めるのが基本方針だ。そのために需要家とのコラボレーションによる取り組み型による開発に力を入れる。

 また、衣料用にとどまらず、現在はレギュラー品が多い乾式不織布用でも機能レーヨンの拡大を計画している。すでにリンやヒ素などを吸着できるタイプも開発している。

帝人フロンティア/インテリアから衣料まで

 帝人フロンティアの機能糸の用途が拡大している。とくに夏の快適素材として注目なのが遮熱ポリエステル長繊維「涼しや」、接触冷感機能ポリエチレン長繊維「クールセンサーEX」だ。

 涼しやは、酸化チタン練り込みポリエステルを特殊混繊糸加工することで高い遮熱機能を実現した機能糸。元々はカーテン用原糸として豊富な実績のある素材だが、近年では婦人パンツ地など衣料用途でも採用が広がってきた。難燃などほかの機能糸との組み合わせも可能なこともロングセラー商品となった要因だ。

 一方、クールセンサーEXは、熱伝導率の高さを特徴とするポリエチレンを特殊4つ山断面にすることで肌との接触面積を拡大し、接触冷感機能を高めたのが特徴。敷パッドやまくらカバーなど寝装で採用されてきたが、こちらも近年、婦人インナーなど衣料用途での採用が始まった。すでに大手インナーアパレルがクールセンサーEXを使った製品の販売を開始している。

 そのほかにも吸汗速乾ポリエステル糸「カルキュロ」も根強い人気があり、用途が広がってきた。最近では包帯など生活資材分野でも採用されている。

富士紡ホールディングス/綿100%で機能実現

 富士紡ホールディングスは、染色加工のフジボウテキスタイル和歌山工場の技術力をベースに綿100%の機能素材を数多く開発してきた。グループのインナーアパレル、アングルが相次いで採用するなど実用化の成果も上がっている。

 フジボウテキスタイル和歌山工場の機能加工素材として、とくに人気が高まっているのが綿100%接触冷感生地「パールマイン」。すでに同様の加工をアングルが「アサメリー」ブランドで採用しており、フジボウトレーディングによるニット生地販売でも評価が高い。

 また、消臭加工にも力を入れる。とくに力を入れているのが汗臭や加齢臭に加えてミドル脂臭の原因物質であるジアセチルに対する消臭機能だ。そのほか、綿100%の吸汗速乾機能素材「パールローレル」、汗ジミ防止加工「ディスノーティス」などユニークな機能素材を多彩にそろえる。

 また、信州大学繊維学部やAOKIとの共同開発などにも積極的に取り組んでいる。得意とする風合い加工などと合わせて、快適を実現する機能素材の開発と提案を加速させる。

シキボウ/ミドル脂臭も消臭可能に

 「健康快服」をテーマに快適・清潔・衛生に焦点を当てた差別化素材・加工に力を入れるシキボウ。このほど30代、40代の男性特有のにおいであるミドル脂臭にも対応した消臭加工「スーパーアニエールM」を開発した。

 同社はこれまで汗臭の原因物質であるアンモニア、酢酸、イソ吉草酸の消臭に対応した「スーパーアニエール」、加齢臭の原因物質であるノネナールの消臭に対応した「スーパーアニエール9」を販売してきた。今回、ミドル脂臭の原因物質であるジアセチルの消臭に対応したスーパーアニエールMが登場したことで、体臭の5大成分に対する消臭を実現したことになる。

 また、抗ウイルス加工「フルテクト」「ノロガード」も特徴のある加工だ。早くから抗ウイルス加工の実用化に取り組んでいたこともあり、「SEK抗ウイルス加工マーク」認証の基準をクリアしているため、今後はますます注目されそうだ。

大和化学工業/加齢臭に特化し性能向上

 大和化学工業(大阪市東淀川区)は消臭剤の開発に力を入れてきた。その最新の成果が、15春夏向けから一般に上市した「ザオバタックNSU―40」だ。加齢臭の原因となるノネナールに特化して消臭性能を向上させた。

 対汗臭は、ナノ粒子化で洗濯耐久性を向上させ、白化やチョークマークも防止する既存の「ザオバタックNANO―20」で性能的にほぼ完成に達していることから、併用を前提に加齢臭に的を絞って性能を向上させた同製品を開発。ノネナールのみを選択的に消臭する性能を高め、NOx黄変など従来品の難点を改良した。併用のほか加齢臭のみを対象に単独での使用も可能だ。

 すでに肌着、ワイシャツを皮切りに、それ以外のビジネスシーンの各アイテムでも採用が進むほか、寝装用にも展開する。

 園芸や野外レジャー向けで20数年の実績を持つ防蚊忌避剤も昨年のデング熱騒ぎ以降、問い合わせが各方面から急増。一般衣料向け販売も急拡大し、従来用途と合わせて、出荷量は前年を数倍上回る。

 そのほかユーザーオリジナルの開発も行う。各顧客の要望にきめ細かく対応しながら、自社技術を派生させたオリジナル薬剤の開発に取り組む。