新疆綿紡プロジェクト/日系機器メーカーに商機

2015年07月02日 (木曜日)

 中国の習近平政権による21世紀版シルクロード経済圏構想「一帯一路」。その一環として、同国西部に位置する新疆ウイグル自治区の綿紡績への投資が本格化している。新疆綿紡プロジェクトの動きは、日系繊維機器メーカーにとっても商機と期待されている。(上海支局)

<動き出す「一帯一路」>

 6月15~18日に開催された繊維機器国際展示会「上海テックス」の初日、「中国恒天―天虹集団 綿紡プロジェクト提携調印式」が開かれた。同プロジェクトは、300万錐規模の綿紡績工場を天虹集団が新疆で建設し、完成後には優良な綿糸を年間50万トン生産し、年商130億元を見込むというもの。総投資額は90億元。恒天集団は資金、設備、サービスなどで協力する。

 恒天集団は繊維機器関連の大手国営企業。天虹集団は、綿紡織の世界最大手である天虹紡織(テクスホン)を傘下に抱え、年商100億元を超す。国内屈指の大企業同士の業務提携だ。

 習近平政権は21世紀版シルクロード経済圏構想とされる「一帯一路」に力を入れている。通り道に当たる新疆への投資は、以前に増して大きくなっている。2015年1~4月の新疆地区繊維産業の固定資産投資は12・8億元で、前年同期比75・5%増と拡大。恒天・天虹プロジェクト以外の繊維企業の投資案件が先行して進んでいる。

 6月25日には、「新彊繊維産業の発展促進と就業拡大に関する指導意見」を国務院が発表した。新疆繊維産業全体の底上げ、成長水準の向上、雇用拡大を20年までに図り、同地区を「国家重要綿紡織生産基地」「西北地区・シルクロード経済革新区衣料品生産基地」「中央アジア・ロシア向け輸出の集散地」とする目標を掲げる。

 上海テックスに出展した日系企業からは新疆プロジェクトに期待する声が上がるだけでなく、効果がすでに出ているという声もある。

 恒天集団の傘下である経緯紡織機械股●と津田駒工業との合弁会社である経緯津田駒紡織〈咸陽〉は、ZAX―N型エアジェット織機の製造や販売を陜西省咸陽市で行っている。今回展では恒天集団のブースでカタログ参加した。「今回の案件は紡績だが、続いて織布や染色の工場が出来ていくはず」と、恒天集団が糸作りから布加工まで一気通貫でセット販売すると担当者は期待する。

 村田機械〈上海〉の吉井淳経理は“一帯一路の関係か、新疆での案件が増えている」と話し、西部地区からワインダーやリング紡績の受注があったと言う。

 ジャカード織機用のガイドボードやハーネスを出品していたモリモト上海事務所の中多智彦代表も、「昨年秋に大手タオルメーカーの新疆工場へ納入した」と明かす。

 本格的に動き出した一帯一路。新疆への投資は今後も増えるとみられ、日系繊維機器メーカーの足元にも新疆へ続くシルクロードが確かに広がっている。

●=にんべんに分