スクールスポーツ特集/ブランド力、より研ぎ澄ます

2015年08月03日 (月曜日)

 スクールスポーツ市場は昨年、ギャレックス(福井県越前市)が「ニューバランス」、ユニチカメイト(大阪市中央区)が「プーマ」、ボリューム(東京都渋谷区)が「スボルメ」を投入してきたことで、ブランドによる競合が熱を帯びてきた。少子化による生徒減の影響が如実に出てきたなかで、ブランド力の強化、連携による販売戦略の見直しなど、次の一手を模索する。

学生服アパレル/企画力の向上を練磨/新たな連携の動きも

 2015年入学商戦は新規採用校を獲得したものの、既存校の生徒数の減少や、消費増税の影響によって、売り上げは前年に比べ苦戦する企業が目立った。

 菅公学生服(岡山市)は、モデルチェンジ校の新規獲得校は前期を若干下回ったが、人口が多い関東だけとらえれば増加。ただ、1校当たりの生徒数の減少とともに、昨年秋口から消費増税の反動が「想定以上にあった」(若松伸雄第一営業本部長)ことで、売り上げが伸び悩んだ。

 明石スクールユニフォームカンパニー(岡山県倉敷市)は、「思った以上に売り上げは伸びなかった」(宮﨑将人スクールスポーツ部長)ことから、5月期の売り上げは前期並みから微減に推移する見通し。ただ、前々期と比べると増収だという。

 トンボ(岡山市)も「新規採用校が増え、既存校の喪失も前年に比べ減ったが、少子化による生徒数の減少がはっきり出た」(佐伯均MD本部副本部長兼スポーツ商品部長)ことで、6月期は減収を見込む。

 これまで展開してきたブランドをより洗練し、市場が縮小するなかでもシェアを拡大していこうとする動きが強まる。明石スクールユニフォームカンパニーは「デサント」で、これまでと一線を画すデザインの「エクストラモデル」を投入。サンプルの貸し出し依頼が昨年より多く、「デサントらしい原点に戻った企画で、長く着用しても飽きの来ないデザインが評価されている」(宮﨑スクールスポーツ部長)ようだ。

 トンボは自社ブランド「ビクトリー」を見直し、「スクールアイデンティティを表現できるブランドに育てる」(佐伯MD本部副本部長)。「ヨネックス」とともに発色性に優れ、高いデザイン性が可能な昇華プリントの商品を充実させる。

 「カンコー」ブランドのシェア拡大に取り組む菅公学生服は、「自社生産比率が高く、学校の要望に沿ったオリジナリティーのあるデザインのウエアを提案しやすい」(若松第一営業本部長)ことに加え、文化活動支援「カンコードリームプロジェクト」や、総合展の「スクールソリューションフェア」といった学校支援の取り組みを充実させながら、市場の深耕を図る。

 別注が6割を占める児島(倉敷市)も、オリジナル性を求める学校からの要望に細かく対応できる体制をアピールしながら、新規採用校の開拓につなげる。

 一方で新たな連携の試みも見られる。瀧本(大阪府東大阪市)は来入学商戦から「ミズノ」ブランドを打ち出す。体操服を中心に体育館シューズなどの周辺商品、スポーツ用品も取り扱い、将来的には両社で体操服の新商品を企画開発することも視野に入れる。

スポーツ専業/生産体制の効率化/反転攻勢へ準備進む

 スポーツ専業メーカーも学生服アパレルと同じように生徒減が響き、減収傾向が目立った。海外生産の割合が高く、円安の影響により生産拠点を見直すとともに、生産の効率化を図りつつある。

 ここ数年、国内に生産基盤を持ち、QRでの商品供給がしやすい学生服アパレルの攻勢で守勢に立たされていた向きもあるが、着々と反転攻勢の準備が進んでいる。2020年には東京五輪が開かれることもあり、再度スポーツブランドとしての認知を高めようとする。

 アシックスは2016年入学商戦から類似した商品や機能の素材や品番の集約などを進め、今後3年以内に一本化する。 生産体制を効率化することで、納期や仕様面で精度の高い商品を安定して供給できるようにしていく。

 ミズノは、ブランドの集約を進めるとともに、中国の人件費高騰を背景に、15年の新商品からタイに生産を一本化。海外の生産比率も7割から2年後をめどに8割に引き上げる。

 これまで主力の中学、高校の市場だけでなく、小学校の市場を改めて開拓する動きもある。ユニチカメイトは、昨年ライセンス契約したスポーツブランド「プーマ」の体操服を来入学商戦から小学校向けに販売。なかなか広がりにくい小学校の市場ではあるが、トンボが「瞬足」ブランドで保護者からの良い反応を得ていることもあり、決して広がらない市場とは言い切れない。

VOLUME/捨てられない体育着を

 スポーツ・カジュアルウエアメーカーのVOLUME(東京都渋谷区)は今年4月からサッカー、フットサルブランド「SVOLME(スボルメ)」を学校向けに提案、玉川大学が初の導入校になった。

 ブランド名はサッカーのSと社名の組み合わせ。ざん新なカラーとプロユースの機能性で、JリーグのFC町田ゼルビアのオフィシャルサプライヤーのほか、コアなファンを増やしている。

 「捨てられないくらい魅力のある体育着を」(販促営業チーム)という新たな挑戦。玉川大学のケースでは多くの体育教諭、さらに在校生の希望も取り入れた。

 納品後に担当者を驚かせたのはソーシャル・ネットワーク・サービスに寄せられた学生たちの賞賛コメント。「量を追うより着る人に喜ばれる体育着として大切に育てていきたい」と語っている。