特集/安心安全/防炎・難燃の重要性増す
2015年08月20日 (木曜日)
「安心」「安全」に対する意識が高まるなかで、防炎・難燃素材の重要性が増している。本特集では安全・安心につながる防炎・難燃素材や同素材以外も含めた機能性を担保する検査機関の動きを追う。
活躍の場が広がる
日本では9月1日を「防災の日」と制定している。1923年9月1日に発生した関東大震災に由来するもので、台風、高潮、津波、地震などの災害についての認識を深め、それらの災害に対処する心構えを準備するのが狙いだ。
その防災という面で防炎・難燃という観点も重要になる。ホテルや公共施設など不特定多数の人が出入りする施設・建築物で使用されるカーテンやカーペットなどのインテリア製品には防炎・難燃性が消防法によって義務付けられている。火災におけるリスクを低減するためだ。実は高さ31㍍を超える共同住宅で使用するカーテンも防炎性が義務付けられている(一般的には知らない人も多い)。
一方、溶鉱炉など火に近い作業現場や着火する可能性が高いワーキングユニフォームも燃えにくい機能が必要になる。火災現場で着用される消防服などは当然だが、世界的に労働環境の改善が進められるなかでユニフォームにおいては防炎・難燃素材の重要性は高まっている。
防炎・難燃素材には様々な種類がある。耐熱性を合わせ持つメタ系アラミド繊維やPBO繊維などの高性能繊維から、難燃剤を練り込んだ素材難燃、後加工によって防炎・難燃性を付与するタイプもある。
安心・安全への意識の高まりとともに、こうした防炎・難燃素材が活躍する場は広がっている。
クラボウ/「ブレバノ」多用途へ/品種拡充で各ニーズ対応
クラボウは難燃素材「ブレバノ」を、抗ウイルス機能繊維加工技術「クレンゼ」、バイオミメティック(生体模倣)素材「エアーフレイク」と並ぶ重点戦略素材と位置づける。ブレバノはカネカのモダクリル「プロテックス」と綿との混紡糸による難燃素材だが、他素材も組み合わせながら、そのバリエーションを広げることで各種ニーズに対応する。
現在、ブレバノに加えて、落ちわたなど綿の未利用繊維を再利用した「ブレバノエコ」(エコマーク認定対応)、アラミド繊維も用いて海外の各種防炎・難燃基準に対応した「同ネクスト」、さらに高視認や透湿防水、通気性など機能性を付与した「同+F」、さらにインナーにも対応できるニット素材「同KT」などをそろえる。
2014年度の販売数量は輸出、国内とも微増だった。輸出比率は約6割。とくに米国向けの防護衣料向けにこの数年、販売量を伸ばしてきた。モダクリルを使用した難燃素材のなかでも「品質安定の高さが評価されている」と繊維事業部営業部門ライフスタイル部の秋山信也ユニフォーム課長は手応えを示す。
15年度も販売計画は微増だが、一昨年出展したドイツの国際安全展示会「A+A」でも「難燃プラスα」の機能が求められているとして、高視認対応のほか、複合化技術を駆使した透湿防水、強度アップなども図る。
また、重点戦略素材の一つとして、ユニフォームに加えてカジュアルウエアやかばんなど雑貨などへ用途も広げる。
ダイワボウレーヨン/防炎の市場、用途拡大/差別化品の開発も強化
ダイワボウレーヨンは2015年度、シリカガラスを練り込んだ防炎レーヨン「FR」「FRL」で前期比2けた%増収を狙う。
FR、FRLは米国のベッドマットレス向けを主力とする。米国ではカリフォルニア州や全米の厳しい防炎規制をクリアするため、ベッドマットには防炎素材を使用した不織布やニットを表地とウレタンの間に使用する。
リーマン・ショック後に大きく落ち込んだ米国のベッド生産も2015年はリーマン・ショック前にまで戻る見通し。同社の防炎レーヨン販売も需要回復に加え「FRLなどの差別化品が伸びている」(中島辰巳営業第三部長)こともあり、今期は売り上げ2けた%増を見込む。また、為替相場の円安も収益面ではプラスに働く。
防炎レーヨンでは米国以外の市場開拓も進める。国内はベッドマットレスの防炎規制はないものの、徐々に需要は拡大傾向にあり、韓国向けでは建材用が軌道に乗り始めているという。
さらに洗濯耐久性を持つ「FRX」による新用途開拓にも取り組む。難燃剤を練り込んだ難燃レーヨンとは異なるものの、LOI値(限界酸素指数)26・1%を実現し、洗濯耐久性も付与したFRXを武器に「他素材と組み合わせながら、防護衣料への参入」に期待する。
中島営業第三部長は「防炎レーヨンは機能レーヨンの一角を占める。差別化の柱として位置づけて展開する」として、さらに開発を強化する考えを示す。
カネカ/加工難燃分野を攻める/欧米防護衣でシェア向上
カネカはモダクリル繊維「カネカロン」、「プロテックス」(カネカロンの難燃性を高めたタイプ)により、欧米を中心とする防護衣料分野でのシェアアップを図る。「素材難燃へのニーズの高まり」(カネカロン事業部営業第一グループの木村達人難燃・資材チームリーダー)も背景に後加工分野の市場を切り崩す。
カネカロン、プロテックスは生まれながらの難燃素材。防護衣料を主力とする難燃用は頭髪装飾、フェークファーに次ぐ用途でもある。
また、ワーキングユニフォームでは高視認性作業服のISO化とJIS化の流れに耳目が集まるが、同素材を使用することで高視認と難燃性を両立できる点も強みの一つになっている。
ただ、今上期は苦戦した。これまでアラミド繊維使いからプロテックス綿混紡品へシフトするなかで販売量を伸ばしていたが、前年まで好調だった欧州、とくに英国向けが石油関連の入札が大幅に減少し、今上期は2けた%減になる見通しだ。欧州再輸出が多いアジア向けも同様に苦戦した。
一方、米国向けは石油関連が低調も、化学プラントなど一般産業用が好調で2けた%増となった。米国では労働安全衛生庁(OSHA)が現場作業服の基準を厳格化していることも追い風となる。下期は英国で大型入札の予定もあり、米国も好調を維持できることから、ばん回を目指す。