中国CAD市場が熱い/導入レベルは3極化

2001年06月15日 (金曜日)

 日系CADベンダーの中国市場への販売が依然好調だ。今後は販売先も、日系合資だけでなく現地企業への拡大が見込まれている。しかし、欧米ベンダー、現地ベンダーを交えた競合もし烈だ。

 国内最大手の東レACS(以下東レ)は、過去1年に中国ユーザーを15社から70社まで一気に拡大させた。日本国内で大手アパレルを中心にした販売戦略の成果が、ここに来て表れてきたという。国内アパレルが導入すれば、その専属工場や協力工場は、業務効率上、同じベンダーのCADを導入するからだ。

 中国ユーザー拡大に伴い、7月2日に「東レ上海ACS」を開設する。東レ上海有限公司に業務委託する形で、システムサポート、トレーニングのアフターサービス、商社経由から直販へという、国内同様の態勢が整う。北京、青島、天津、大連にサテライトオフィスを設置する計画もある。

 旭化成AGMS(以下、旭化成)も、新会社となって半年間に、35社から47社へと12社増やした。上海事務所では現在、7人のスタッフが代理店経由の販売、相談窓口業務、導入インストラクションに追われている。大連にも同様の事務所を開設予定で、広東州に第3拠点も検討中だ。

 中国市場の可能性については、旭化成が「約5万社」、東レは「3~8万社」と幅があるが、日本とは比較できない大きさでは一致。「現在の普及率は2・5%程度に過ぎず、30%にまで拡大するはず。従って1万5000社市場」(旭化成)であり、そのうち「日系だけを取ると約3000社で、CADが導入できる企業は5分の1の600社」(東レ)という見積もりだ。

 当面の販売計画は、旭化成が28社上積みの初年度40社、東レは今年度新規100社。東レのトータル170社という数字は、現地企業に強いガーバー、レクトラなど欧米勢の200~300ユーザーに匹敵する数字となる。

 しかし中国CAD市場は、日本勢、欧米勢だけでなく、現地の大手・航天(約500ユーザー)、台湾のPGM(販売休止中、約200ユーザー)、PADなどと小規模を合わせ20~30社がシェア争いを繰り広げている。

 CADデータの通信サービスを行うアパレルアークの販売店・ビー・エス・ディーによれば、今のところCADソフトの価格は、20万元前後の高級グレードと、4000元程度の小企業向け、その中間のボリュームゾーンに3極化しているという。高価な日本製CADは欧米勢と競合しているわけだ。

 どのグレードのCADを選ぶかは「海外向けの製品を生産しているかどうか」(東レ)により、「WTO加盟後は工場スペースの奪い合いが始まる」(ビー・エス・ディー)と見られているが、中国政府の付加価値型縫製工場育成の方針もあって「プラスアルファの工賃を受け取ろうというレベルアップの意欲」(旭化成)が高まっており、市場の3極は流動的だ。

 多層的な工場レベルと、ベンダーの3大勢力が入り乱れる中国市場。CAD販売競争はこれからが本番だ。「日本市場では欧米対日本で日本(のベンダー)が勝ったが、中国ではどうなるか。来年夏には形勢が見えてくるはず」と東レは話している。