変革期に挑む日系企業の戦略
2015年09月25日 (金曜日)
高付加価値化と商流改革/東レグループ
インドネシア東レグループは各事業会社とも商品の高付加価値化と商流改革を進め、2016年3月期に営業利益20%増を目指す。インドネシア統括の石村昭彦トーレ・インダストリーズ・インドネシア社長は「コスト削減による収益向上と合わせ、最終ユーザーとの連携など商流の改革を進める」と話す。
事業会社の各事業とも生産品種の転換を進める。ポリエステル長繊維はモノフィラメントなど特殊糸に、ナイロン長繊維は細繊度糸への特化を進めるほか、好調のポリエステル短繊維も新たに不織布原綿に参入する。
織物はアパレルに直接提案する縫製連動ビジネスの比率を一段と高めるほか、市場も従来の中東や欧米、日本のほかオセアニアや南米など新規市場を開拓する。そのほか、設備増強中のポリプロピレンスパンボンドや、樹脂事業など新規事業の拡大で業容拡大を目指していく。
日本向け商品を高度化/日清紡グループ
紡織のニカワテキスタイル、織布・染色加工の日清紡インドネシアなどで構成する日清紡グループは、日本向け商品の高度化を進める。日清紡テキスタイルと連携して対米輸出拡大も目指す。
同社は欧米向け販売などいわゆる“外・外”販売の拡大を進めているが、欧州の市況が悪く、利益面での課題も多い。鈴木弘之ニカワテキスタイル社長兼日清紡インドネシア社長は「欧州市場は引き続き市況が厳しいので、米国市場へのシャツ地販売に重点を置く」とし、日清紡テキスタイルとチームを組んでの営業活動を強化した。
日本向けは「シャツ地は内容をリニューアルする」として、新商品である次世代CVC形態安定加工シャツ地「スパーノ」などの加工・販売の拡大を進める。ユニフォーム地についても「インドネシア事業の中核」と位置付け、重点的に取り組む。
糸からの開発を強化/クラボウグループ
クラボウグループの紡織子会社、クマテックスはクラボウの原糸課と連携し、糸からの開発を強化する。木村浩一社長は「保有する技術の“棚卸し”をし、何ができるのかを見詰め直す必要がある」と指摘する。
同社は「日本向け生機だけでは将来展望が描けない」として、加工反販売に力を入れる。協力関係にある現地加工場に技術指導を行っており、ストレッチや風合い加工、抗菌、防蚊、防汚、抗ウイルスなど機能加工の技術確立を進めた。クラボウのブランド原糸の技術も活用する。
一方、縫製のアクラベニタマ(AKM)はブカシの自社工場は日本向けユニフォームの縫製に特化し、中部ジャワに協力工場網を整備した。こちらはクラボウインターナショナルの婦人カットソー生産を担う。さらにカジュアル衣料の縫製も開始し、クマテックスが減反を供給する構想だ。
「パルパー」で新規開拓/ユニテックス
ユニチカグループの紡織加工であるユニテックスは、独自の複重層紡績糸「パルパー」を軸に新規開発・新規取引開拓を進める。現在、パルパーの生産ラインは2系列だが、9月から3系列目が立ち上がった。
国内消費が減退したことで内販比率の高いユニテックスも大きな打撃を受けた。このため芦田直彦社長は「パルパーを軸に差別化商品開発や新規取引開拓を進め、定番品からの脱却を目指す」との考えだ。すでにユニフォーム関連などで新規受注を獲得したほか、パルパー使い先染め織物の輸出もスタートした。
パルパー用ラインの増設でユニテックスの紡績糸生産の40%をパルパーにすることが可能になる。「インドネシア国内の既存取引先の掘り起こしに加え、ユニフォームやドレスシャツ用途でパルパーの普及を進め、市場開拓する」ことを目指す。
コスト削減を徹底/TTI
東海染工グループのトーカイテクスプリントインドネシア(TTI)はこれまで実施してきたコスト削減の取り組みを一段と強化する。
同社は6月まで月平均410万ヤードの加工量を確保するなどフル稼働が続き上期(1~6月)の営業利益は前年同期比50%増となった。好調の最大要因はコスト削減策。昨年までに排熱回収装置やカセイソーダ回収装置の設置など様々な施策を実施し、月平均12万㌦のコスト削減に成功した。阿部和仁社長は「まだまだ削減の余地がある」と引き続きコスト削減を徹底する。
一方、主力の内需が減退していることから新商品開発にも力を入れる。同社はローカル向けが受注・販売の70%を占めるため「現地の取引先企業がそれぞれのビジネスで勝ち残ることのできる商品を提案することが重要」とし、取引先とチームを組んで新商品開発を進める。
副資材、寝装事業が本格化/モリリングループ
モリリングループのモリリン・インドネシアとモリリン・リビング・インドネシアが事業を本格化させている。縫製資材販売のモリリン・インドネシアは販売網の整備が進み、リビング製品製造のモリリン・リビング・インドネシアの工場も本格稼働した。
モリリン・インドネシアは4月にはジャカルタの現地繊維資材卸商と代理店契約を結び、インドネシア国内での販売網を整備した。玉里誠社長は「代理店とも連携し、現地でのマーケティングを進めている」と話す。
モリリン・リビング・インドネシアは敷パッド、掛けふとんカバー、キルティングカーペットを生産し、日本の大手取引先への出荷も始まった。河合航太郎マーケティングマネージャーは「技術指導を進めながら早期にフル生産体制を構築する。インドネシア内需も開拓したい」と話す。