わが社のアジア戦略/カケンテストセンター

2015年09月25日 (金曜日)

既存拠点の充実図る

 カケンテストセンター(カケン)は中国の上海、南通、青島、大連、寧波、無錫に拠点を設ける。アジアでは香港、韓国、台湾、タイ、ベトナム、インドネシア、バングラデシュに拠点がある。「新規拠点も模索するが、収益面なども考慮していく」とし、既存の中国拠点の充実を図りながら、アジア戦略を進めている。

海外機関との提携生かす

 中国では青島試験室が昨年に引き続き試験実績を伸ばしている。吸湿発熱試験設備の設置など機能加工品の試験にも注力する。大連は軽衣料の試験が増加し、寧波でも服飾雑貨や生活用品などの試験が増え、無錫もコンテナ輸送時(高温高湿)のカビのリスクを抑えるためのジャングル試験を行うなどで好調だ。

 中国最大の拠点は上海科懇検験服務。昨年8月、南通に上海科懇南通事務所を設けた。試験受け付け、デリバリー業務などを行うことで上海科懇の窓口機能を果たす。「試験相談や短納期対応が目的だが、開設後の効果は出ている」ようだ。4月には上海と南通で「新ケアラベル関連JISの解説」と「JISL4129子供用衣料の安全性」に関するセミナーも開催し、日本向け生産への情報提供などにも対処する。

 アジアでは香港検査所が「通販や量販店の試験依頼は少ないものの、デザイン性の高い東京のアパレルの依頼が増えており、伸び代がある」と言う。欧米向けの試験も行っており、「有害物質の試験では提携先の検査機関ビューロベリタスの協力を得て対応」する。

 韓国ではKOTITIと提携。韓国の内販向け試験が好調である。台湾でもビューロベリタスと提携し、アセアン地域縫製用スポーツ素材などの試験を行う。インドネシアでは2012年にカケンインドネシアとして進出し、試験業務のほか、繊維製品や雑貨製品の品質に関する総合コンサルティングサービス、検品のカケンと連携した検品サービスも行う。増員により営業力の強化も図る。

 提携先のKOTITIはバングラデシュ・ダッカに2013年にKOTITIバングラデシュを開設した。有害物質の分析試験や玩具類の試験などを行うが、KOTITI日本チーム(日本語対応可)が日本向け試験を代行している。

 現在、アセアン地域で最も試験数が伸びているのがベトナムで、ビューロベリタスとの提携で、ホーチミンが拠点。「ベトナムは現地の素材調達も増え、試験依頼が多い。カンボジアのビューロベリタス経由で、カンボジア国内の試験依頼もベトナムで対応。ベトナム北部(ハノイ)の依頼は、香港検査所が試験する体制」。タイはOMICCOPITと提携。バンコクでアパレル関係の試験を中心に行っている。

VPNシステムを構築/検品のカケン

 カケンテストセンターの検品会社カケンは、「縫製産地の移動に合わせたサポート」を行う。中国に8拠点を設けるほか、アジアにも進出している。

 カンボジア検品センターはプノンペンにあり、持込検品のほか出張検品対応も行う。検品ラインは4ラインで1日にTシャツ換算で1万枚をこなす。別に検針ラインが2ラインあり、アパレル商品だけでなく、雑貨にも対応する。

 インドネシアにはジャカルタのインドネシア検品センターとスバン検品センターがあり、アパレル商品の出張検品を行う。また、ソロにも検品所を設ける。

 バングラデシュ検品センターはダッカにあり、アパレル商品のほか、要望があれば雑貨も扱う。検品能力は1班5人。Tシャツなら1日1200点。出張検品を行う。

 検品の作業現場がグローバルに広がるなかで、同社はVPN(バーチャル・プライベート・ネットワーク)システムを構築。インターネットを利用し、工場内の作業現場の様子を日本でも確認できる。「作業が手順通りかなどを、リアルタイムで確認できる。生産性のアップ、顧客との約束ごとの徹底などが目的」である。出張検品時もWi―Fiで対応する。

拡大する依頼に迅速に対応/カケンベトナム試験室

 ベトナムにおける業務の拠点、ホーチミンのカケンベトナム試験室は、業務提携機関であるフランスの第三者検査・認証機関、ビューロベリタス(BV)社のベトナム法人BVCPSベトナムとともに日本向けの繊維検査を行う。

 中国から縫製拠点のアセアンシフトが続いていることもあり、ベトナムでの試験依頼はここ数年、急増している。原田賢室長は「今年の4~7月は前年同期比で50%増、この5年で4~5倍になっている」と説明する。

 数年前までは縫製品の洗濯耐久性などの試験が多かったが、現地素材が増えるに伴い、染色堅ろう度試験や物性試験など生地の試験が増えているという。引き続き現地での日本向けOEMが増加するとみられることから、「近い将来、中国の上海、青島の拠点に次ぐ規模になる」と原田室長は今後の規模拡大の見通しを語る。

 日本で行う一般的な試験と同じ試験ができる設備が整い、同水準のサービスを提供できることが同試験室の強みだ。約100人の現地スタッフが染色堅ろう度試験や物性試験、繊維鑑別試験、安全性試験、製品試験、副資材試験、雑貨試験(かばん)など様々な依頼に日本基準で対応する。

 同試験室の強みはカンボジア事務所との連携にもある。カンボジアでの試験依頼をBV社の物流を活用して送料無料でベトナムに送り、最短1泊2日で試験し、報告書を届けるピックアップサービスを行っている。原田室長は「さらなる納期短縮と、1泊2日のサービスを増やすなどカンボジア対応にも力を入れる」と今後の強化ポイントの一つとしてあげる。