帝人の挑戦/新メタ系アラミド稼働(上)/東南ア初の高性能繊維
2015年09月28日 (月曜日)
帝人は先ごろ、タイ子会社で新メタ系アラミド繊維「テイジンコーネックス ネオ」の本格生産を開始した。これにより同社はパラ系2種、メタ系2種を持つアラミド繊維メーカーとなった。さらに炭素繊維や高強力ポリエチレンテープも手掛ける。これは世界的にも珍しい。新素材も加わった高性能繊維総合メーカーの戦略を探る。
8月19日、同社のタイ子会社であるテイジン・コーポレーション〈タイランド〉(TLT)はテイジンコーネックス ネオの本格生産を開始した。同月17、18日に連続発生したタイ・バンコク市内の爆弾テロの影響で、開所式は関係者のみの式典に変更し執り行われ、バンコク市内で予定した需要家も招いた懇親パーティは取りやめて、自由参加の食事会に急きょ変えた。
こうした緊急対応は行ったものの、世界初となる東南アジアでの高性能繊維生産だけに、テイジンコーネックス ネオと同社の今後の戦略に対する注目度は高い。
バンコク市内から車で1時間強。アユタヤ県にあるタイ子会社のテイジン〈タイランド〉(TJT)。ここにテイジンコーネックス ネオの生産工場がある。工場横で行われた開所式には鈴木純社長、遠藤雅也常務執行役員高機能繊維・複合材料事業グループ長、帝人フロンティア(帝人FR)の日光信二社長、TLTの本社があるテイジン・ポリエステル〈タイランド〉(TPL)、TJT、TLTの坂田忠史社長ら数十人が参加。僧侶による読経から始まり、テープカット、記念写真撮影とタイ独特の式典が執り行われた。余談だが、式典会場を取り囲むのは帝人FRの超軽量大型仮設テント「エアロシェルター」。タイの強い日差しを予想以上に遮っていたのには驚いた。
さて、テイジンコーネックス ネオの生産工場は2011年に発生した洪水で被害を受けたTJTの旧紡績用ポリエステル短繊維工場の建屋を有効活用。2系列・年産2200トンの生産設備を導入した。日本生産によるテイジンコーネックス(2700トン)を合わせると、メタ系アラミド繊維の総生産能力は約80%増の4900トンに拡大したことになる。
これにより、新興勢力である世界第2位の中国の煙台泰和新材料「ニュー・スター」(5000トン)と規模的には匹敵した。もちろん、世界最大のメタ系アラミド繊維メーカーである米国・デュポン「ノーメックス」(2万900トン)には遠く及ばない。しかし、テイジンコーネックス ネオには“新メタ系”と呼ぶにふさわしい特徴がある。それは後染めが可能、特殊な紡糸法により化学物質排出やエネルギー消費を削減できる――という点だ。