学校を多面的に支える

2015年09月29日 (火曜日)

 学生服アパレルは来年、値上げを控え、これまで以上に市場でのシェア争いが過熱しそうだ。6月から8月にかけ来入学商戦に向けて開かれた展示会では制服だけに限らない多面的な提案で、モデルチェンジ(MC)校の獲得につなげようとする動きが見られた。

機能性高め着心地向上/新ブランド投入も加速

 各社の来入学商戦に向けた展示会は、これまでよりも機能性を高め、着心地を進化させた新商品が目立った。昨年から「制服価値を究める」をテーマに掲げる明石スクールユニフォームカンパニー(明石SUC、岡山県倉敷市)は、上質感を追求した詰め襟服「ナノウェイブ・プレミアム」を開発。東レと長年かけて共同開発した新素材を使い、ストレッチ性とともに見た目以上の軽さが特徴だ。東レのポリエステル・ウール複合素材「トレラーナ」使いの女子制服は、展示会で7回洗濯したサンプルを紹介、ほとんど新品に近い状態で、驚く人も多かったという。

 新ブランドの投入も活発化する。瀧本(大阪府東大阪市)は、英国ファッションブランド「カンゴール」の学生服と、スポーツブランド「ミズノ」の商品を全面的に出した。ミズノブランドでは詰め襟服、セーラー服で、スポーツ分野の機能性と瀧本の制服製造のノウハウを組み合わせた特徴を訴求。これまであまりなかった学生服アパレルとスポーツ専業アパレルとの連携に注目が集まる。

 トンボ(岡山市)は、創業140周年のプロジェクトに合わせ、意匠性が高い英国ロキャロン社のタータンチェックを女子10柄、男子4柄を「ロキャロン10」として投入。昨年と同様に「制服検討委員会」を主題に、今回は架空の学校のMC事例を用意するというユニークな試みで、統合新設校や進学校など、スクール・アイデンティティーや地域イメージを制服で具現化するプロセスを紹介した。

 独自性の高い商品で新たな市場を切り開く動きも強まる。児島(倉敷市)は、昨年「キッズデザイン賞」を受賞したニット素材の詰め襟服で「標準学生服認証マーク」を取得、西日本を中心に販路開拓を進める。「全国地域安全マップコンテスト」で今年キッズデザイン賞を受賞したオゴー産業(倉敷市)は、水に浮く、防災ずきん付きの多機能ランドセルが京都の小学校の指定を受け、来春から本格的な販売に乗り出す。

 学校支援と言う形で、制服以外にも教育現場の悩みに応えるトータル的な提案でシェアを広げる動きもある。菅公学生服(岡山市)は11月に学校関係者や取引先向けの展示会「カンコー スクール・ソリューションフェア」を東西で開く予定で、異業種の協賛企業と連携した形によって徳育(道徳教育)のヒントになるような展示会にする。

 生徒数の減少で大手アパレル間でも市場のパイの取り合いが激しくなるなか、多面的な販売戦略や独自性の強い商品開発などを打ち出すことこそ、縮小する市場にあってシェアを拡大するカギを握っていきそうだ。

生産増強で安定した供給/多品種小ロット化に対応

 アパレル各社は、今期も生産基盤の拡充を進めている。

 トンボはブレザー生産のトンボ倉吉工房(鳥取県倉吉市)の従業員を増やし、8000点から倍増の1万5000~1万6000点の生産量を計画している。スクールスポーツ衣料生産の美咲工場(岡山県美咲町)にも需要が高まる昇華プリントの設備を導入し、CAMによる原反裁断からプリント、縫製に至るまで一貫生産できる体制を整える。

 スクールシャツなど製品OEMの山下産業(岡山市)は、6月から国内外で生産ラインを見直している。国内工場では受注が多品種小ロット化するなか、小ロットに対応したCAMを導入するなど生産をより効率化するとともに、人材育成も強化。ベトナムでは協力工場に別注生産の専用ラインを設け、学生服アパレルからの受注を拡大する。

 他社も頻繁にミシンを更新しており、常に生産性を高める工夫の追求と、高品質を維持する努力を続けている。

中学校体操服をデザイン/いよいよ3点に絞られる

 「岡山南高校服飾デザイン科 産学連携実学体験プロジェクト(MPS)」を推進する菅公学生服(岡山市)と岡山県立岡山南高校(同)は今月5日、岡山南高校で「磐梨体操服イノベーションプラン」の中間発表会を開いた。赤磐市立磐梨中学校(岡山県赤磐市)の体操服を実際に商品化するというプロジェクトで、3つの企画デザインから試作した体操服を披露した。

 MPSは、岡山南高校の服飾デザイン科が昨年から菅公学生服と連携し、プロジェクトを通じてキャリア教育を推進しようというもの。今年は、磐梨中学校から、来春以降新入生が着用する体操服のデザインの依頼を受け、MPSの一環として体操服を企画し、商品化まで取り組む。

 今回の中間発表会では8つのグループによるデザイン企画を3つに絞り、試作した体操服を披露した。体操服は「ニューカラー」「よくばり機能」「フィーリングアップ」といった3テーマで、いずれも安全性や機能性だけでなく、優れたデザイン性で「甲乙が付けがたく、素晴らしい試作品ばかり」(磐梨中学校の田上善朗校長)がそろった。今後、10月末にデザインや仕様など最終決定する。

 菅公学生服の岩井聡開発本部副本部長は、「これを着て原宿を歩いてもおかしくない」と、洗練されたデザインを高く評価した。