探訪/学生服の現場から/学校法人東邦学園 東邦高等学校

2015年09月29日 (火曜日)

信頼される人を育成する

 東邦高等学校は、1923年に愛知県の実業家・政治家である下出民義氏によって設立(当時は東邦商業学校)され、100年近い歴史と伝統を持つ。「真に信頼して事を任せうる人格の育成」を建学の精神に掲げ、「真面目」を校訓とする。自治を重んじ、真面目に行動し、愛と平和を希求する、誰からも「信頼される人」の育成を目指している。

「どう生きるか?」考える

 東邦高等学校は、普通科、商業科(2015年募集停止)、美術科の3学科に3学年合わせて約1700人の生徒が在籍する。普通科には普通コース、文理特進コースと2015年に新設された人間健康コースを設置する。

 同校の教育の大きな特徴は、探求学習とキャリア教育にある。生徒一人ひとりが「『どう生きるか?』を思い描き、考えること」を重視する。インターンシップや企業探求プログラムなど、社会とつながることを意識した様々なプログラムで進路選択やキャリア形成をサポートする。

 探求学習の一環として取り組む「クエストエデュケーションプログラム 企業探求コース」では、企業からのミッションに対し、協力して調査・研究・議論し、導き出した自分たちの解決策をプレゼンテーションする。同校は全国大会「クエストカップ」に3年連続で出場している。

 国際交流も活発だ。中国、ニュージーランド、豪州の3カ国4校の姉妹校と短期留学を中心とした相互交流を行っている。1997年からは2年に1度、各校持ち回りで「4カ国5校姉妹校交流会」を開き、交流を深めている。

 また、同校はユネスコ(国際連合教育科学文化機関)憲章に示されたユネスコの理念を実現するため、平和や国際的な連携を実践する「ユネスコスクール」の加盟認定も受け、日々の教育のなかで国際理解への取り組みを進めている。

 平和教育にも力を注ぐ。第二次大戦末期の名古屋空襲で、学徒動員の生徒18人と教師2人が犠牲となった。

 当時の工場のコンクリート壁の一部を「平和の碑」として学校に設置し、毎年12月になると慰霊の日として平和への願いを込めて献花式を行っている。

中身進化させる更新

 クラブ活動が盛んなことも同校の特徴の一つだ。運動部、文化部、同好会を合わせて40以上のクラブが日々活動している。「クラブの東邦」とも言われ、その活躍は地域住民にも親しまれている。硬式野球部やサッカー部、バトントワリング部、吹奏楽部、水泳部、ダンス部、ソフトテニス部、空手道部など全国レベルで活躍しているクラブも少なくない。東邦高校では2016年春から制服が更新され、新しい制服になる。しかし、基本的なデザインが変わるわけではない。同校の制服は、1985年の男女共学化の際に、黒の詰め襟学生服から変更したブレザースタイル。東邦独特のグリニッシュブルーと呼ばれる少し緑色が混じった青色のブレザーと、ギンガムチェック柄のスラックス・スカートに、エンジのネクタイ・リボンという組み合わせで、その制服は“東邦の制服”として近隣の住民の間でも浸透している。新制服はこのイメージを守ったものだ。同校は3年ごとに学校に必要な備品や制服などを見直している。制服もこの30年の間に、何度か更新している。その際に、デザインを大幅に変更する案が決まりかけたときもあった。しかし最終的には“東邦の制服”として浸透し、志望者にも人気の高い、現在のスタイルに落ち着くという。

 今回の更新は基本的なデザインは現在のスタイルを踏襲し、生徒がより着やすくなるための機能性の向上に主眼を置き、細かな部分に改良を施したものとなっている。

機能高め より快適に

 新制服は、基本的なデザインイメージはそのままに、現在のトレンドを反映したシルエットに変更している。ブレザーは以前から家庭洗濯できるものだったが、消臭・抗菌(空気触媒清潔)加工を施し、汚れてもシャワーで洗い流せる仕様とし、イージーケア性能を高めた。

 新たに同校独自のチェック柄をジャケットの内側に配するほか、ネクタイ・リボンにエンブレムと同じマークを織りで入れるなど細部にもこだわった。夏服のポロシャツは吸汗速乾性に優れたニット素材、セーターは温度調節素材「アウトラスト」を用い、1年中快適に過ごせるように素材も吟味している。

 今回の更新では、制服を提案した明石スクールユニフォームカンパニーが推進する「MOTTAINAI SCHOOL」の4つの「Re」=Reduce(削減)、Reuse(再使用)、Recycle(再生利用)、Respect(尊敬)の精神が、Fun to shareに賛同し、環境教育に積極的な同校の方針と合致したことも大きなポイントとなった。

 同校の制服は女子も自由にスラックス、ネクタイを着用できる。それは同校のホームページにもうたわれている。またそのために証明書を用意する必要もない。実際に女子でスラックス着用の生徒も増えているという。

 制服は学校の歴史と伝統に誇りを持つと同時に、生徒たちが快適な学校生活を送るためにある。東邦高校の新制服は、そんな当たり前のことを改めて感じさせてくれる。