高度化を求めて/「AFF・東京2015」レビュー(下)/関係深化、安心・安全面も

2015年10月29日 (木曜日)

 ミャンマーで3年目となるカットソー、布帛工場を400人規模で稼働させている南通東方星製衣は、その効果が売上高増につながっている。ただ、3カ所の中国自社工場では「5年前に比べて従業員数が3分の1まで縮小した」(朱暁燕氏)と言う。人材確保難に加え、以前に比べ、2~3倍になった人件費上昇も重なり、モノ作りが難しくなっている。

 小ロット・短納期対応で顧客を広げてきた出展企業にとっては、リードタイムのかかる東南アジア生産が対策とならないため、この問題が直撃している。自動化などによる効率向上への取り組みに余念がない。

 大連悦美時装はレディース商品を日本向けに特化して供給するが、最小ロット200~300枚、最短45日で納入するほか、異素材複合を得意とする技術の高さに加えて百貨店やセレクトショップ向けの生産に対応するだけに、東南アジアへの移管は視野に無い。5~6年前には250人が働いていた自社工場も150人に減ったため、裁断機など縫製を自動化する設備を今年、導入したという。

 こうした小ロット・短納期を得意とする出展企業の今期の状況は、国内コスト増と工賃の停滞のはざまで、収益面で苦戦する状況だが、さらにアゾ染料対策が加わる可能性がある。

 24種の特定芳香族アミンを生ずるアゾ化合物の規制が2016年4月から法制化され、規定量以上使用した繊維製品が日本国内で販売できなくなる。小ロット・短納期の場合、トレーサビリティーが取りにくい広州を中心とする生地市場で素材を調達するケースもあるため、検査に掛かる費用が収益をさらに圧迫する恐れがある。

 前述の大連悦美時装は、すべて取引先の生地メーカーへ別注対応しており、高価格帯の生産を請け負う企業も多くがこうしたオペレーションを取っているが、「先行して取り組みを問われるケースがあるかもしれない」(ミセスアパレルのOEMメーカー)と身構える企業もあった。

 生地の検査が必要な場合、その費用をどちらが負担するかは顧客負担からメーカー側負担までまちまちで、「その都度の契約で決める」と答えた出展企業も生地の別注生産と同じ割合で多く、「相談されることが増えるかもしれない」と、さらなるコスト増への不安を口にする企業もあった。

 安心・安全面からも日中関係深化の新たな取り組みが求められている。