技術の眼

2015年12月09日 (水曜日)

 

 「技術の眼~NEW WAVE GENERATING TECHNOLOGY~」では将来的にニューウェーブを巻き起こすような重要な技術になりうるかもしれないものにスポットを当て、紹介する。

〈津田駒工業/驚異の毎分2105回転〉

 津田駒工業は「ITMAミラノ」で高速生産性を追求したエアジェット(AJ)織機のコンセプトモデルを披露した。ポリエステル長繊維のポンジーを毎分2105回転という驚異的な速度と安定性をアピールした。

 コンセプトモデルは、メーンフレームから新設計とし、送り出しテンションロールやメーンシャフトに炭素繊維複合材料を使用することで超高速稼働に必要な剛性と軽量性を実現。190センチ幅で経糸、緯糸ともに84デシテックスのポリエステル長繊維を使用し、毎分2105回転でポンジーの製織を会場で実演し、来場者に驚きを与えた。

 一方、最新のAJ織機「ZAX9200ⅰマスター」は電装をバージョンアップ。操作パネルが大型化し、マルチウインドーにも対応した。操作パネル上で取り扱い説明やメンテナンス情報の動画を見ることができ、操作だけでなく稼働管理の利便性が向上した。

〈東京西川/450万円の高級ふとん〉

 東京西川は来年1月上旬から、全国の百貨店や西川チェーン専門店で450万円の掛けふとんを数量限定で発売する。来年で創業450周年を迎えることを記念した。

 カシミヤとアイダーダック・ダウンを中わたに採用した。細くて滑りやすいカシミヤをふとんの中わたとして使用できるようにするのは難しいとされるが、匠の熟練の技と厳格な品質管理で可能にした。アイダーダックは、北極圏に近いアイスランドやグリーンランドに生息する野鳥。卵やひなを寒さから守るために親鳥が巣に敷き詰めた肌毛を、ひなが巣立った後に手作業で採取して中わたとして使用する。その保温性、弾力性は世界トップレベル。

 側生地の素材には小石丸の絹を採用した。小石丸とは蚕の種類名で、宮中御養蚕所の皇后御親蚕としても飼い継がれている。小石丸の繭から作った絹糸は細く、光沢に優れ、繊細で粘りがあり染色性も優れているという。

〈東洋紡糸工業/世界初の紡績法〉

 東洋紡糸工業は、繊維損傷の無い生まれたばかりの状態に動物繊維を維持再現する紡績法を世界で初めて開発した。繊維自体に膨らみを持たせ、これまでに無い白度と優れた発色性、耐光堅ろう度を持つ。16秋冬物から「イー・フィール」として糸を販売する。

 獣毛、ウール、シルクといった動物繊維は、紡績時やわた染め加工、白度を上げる加工を施すと繊維損傷が起こった。また、日本国内では耐光堅ろう度3級以上の品質が求められるため、これまでのカシミヤやウールなどでは発色性を犠牲にしていた。一方、欧州品は耐光堅ろう度を犠牲にしても発色性を重視するモノ作りを進めてきたと言われる。

 今回、同社が開発した紡績法によるイー・フィールは、繊維を生まれたばかりの状態に限りなく維持再現する。元原料(動物繊維)レベルで、従来は繊維損傷度(JIS L1081)が20%であったが、イー・フィールはほぼ元原料ベースに紡績できる革新的なものだ。

〈テックワン/防水・耐圧分散マットレス〉

 テックワン(石川県能美市)は11月、防水・透湿機能を高めた体圧分散マットレス「メディマット」を発売し、介護用品市場に参入した。同社が得意とするPTFE(フッ素)フィルムを使用したラミネート技術を生かし、介護・医療用品市場向け販売を強化する。

 メディマットは、昨年廃業した、いわしや医療(東京都)から商権を引き継いだもので、介護保険適用商品。引き継ぐに当たって既存商品の性能を一新し機能を高めた。床ずれを防止する二層の低反発・高反発ウレタンフォームを用い、カバーには完全防水、超撥水、高透湿、抗菌防臭、ウイルス・血液バリア性を高めた生地を採用した。

 この生地は表地と裏地にポリエステル織物を用い、PTFEフィルムを中間に挟み込みラミネートした。汚れれば軽くふき、アルコールで除菌するだけでいい。塩素にも強く、「ノロウイルス対策でも機能を発揮できる」という。

〈村田機械/「ボルテックス」で太番手〉

 村田機械は「ITMAミラノ」で渦流精紡機「ボルテックスⅢ870」16錘を実機展示し、ポリエステル100%40番手を毎分500㍍の高速で紡績実演した。また、ポリエステル・レーヨン混で10番と12番の太番手も実演。ボルテックスの新たな可能性を披露した。

 同社はボルテックス精紡機では難しいとされてきたポリエステル100%糸の紡績に挑戦してきたが、今回の実演では油剤と精紡室の改良で実用レベルの紡績を実現した。ポリエステル100%の紡績が実用化されたことで、機能わたの活用などでボルテックスの可能性が一段と広がる。

 太番手の紡績も注目される。資材用途や作業服用途などでニーズが高まっている。こうした用途は生産効率が求められるだけに、ボルテックスの高生産性が生きる。太番手の紡績はスライバーの消費速度が高いため、大容量ケンスを紡機背面に配置するレイアウトも紹介した。

〈パアグ/首回りにストッキング〉

 ストッキングは足だけのものではない、首回りやボディにも――全く新しい発想で開発された日本製のボディストッキング「デコヴェール」が今冬から日本と中国で試験販売される。

 手掛けるのはパアグ(大阪市城東区)。湯船の水を電力で温める器具や照明と一体となった脱衣場暖房機、背中が濡れない楕円形の傘など、ユニークな特許商品を送り出してきたが、衣料品は初めて。同社とファッションアパレル関係者との会話から生まれたアイデアが約5年を経て商品化された。日本、中国、米国、欧州連合(EU)で特許を取得している。

 パンティーストッキングの製造技術を応用し、独自の裁断・縫製・加工法により、首回りや胴回りをシームレス構造にした。首回りのシワやしみ、そばかすなどが隠せるだけでなく、お腹や二の腕を引き締める効果もある。フリーサイズ1型で、色は肌色と黒。小売価格は3000円台後半の予定。