ミラノからの手紙/「ITMA2015」報告(5)/紡績機械 3/革新紡機の汎用性高まる

2015年12月15日 (火曜日)

 革新紡機の汎用性が一段と高まっていることも今回のITMAの特徴だろう。また、IoT(モノのインターネット)に対応したシステムに対する注目度も高い。

 村田機械は今回展で渦流精紡機「ボルテックスIII870」を実機展示。今回はポリエステル100%糸とポリエステル・レーヨン混紡太番手糸の紡績を実演した。従来、ボルテックスでポリエステル100%糸を紡績するのは難度が高かったが、油剤や精紡室の改良で実用化に成功した。機能ポリエステル短繊維を使用するなどでスポーツ衣料といった分野でボルテックス糸の市場が広がりそうだ。

 10番手と12番手の太番手を毎分500メートルで高速紡績したことも注目された。太番手糸は作業服や資材用途で底堅い需要があり、コスト競争力も求められるため、ボルテックスの高生産性が生きる。また、太番手糸の紡績はスライバーの消費が早く、ケンス交換の手間が増す。これに対して村田機械は大容量ケンスを紡機背面に配置するレイアウトを提案。精紡ローターの下部にケンスを配置するレイアウトが一般的なため大容量ケンスの採用に限界がある他社のオープンエンド(OE)精紡機と比較してケンス交換頻度は3分の1になるという。

 IoT対応も注目の的。顧客サポートの統合管理システム「ムラテック・スマート・サポート(MSS)」を初披露した。自動ワインダーの稼働データ管理システム「ビジュアル・マネージャー+」とボルテックス精紡機の稼働データ管理システム「V―ラボ+」をベースに独自開発の無線ネットワーク機器などを活用し、安定稼働をサポートする。

 リーターは最新のエアジェット精紡機「J26」を実機展示した。20番から70番までの紡績が可能で、紡績速度は最速で毎分500メートル。スライバーを上方から送り込むボルテックスIIIと異なり、精紡室の下方に配置したケンスからスライバーを引き上げ、機械上部でパッケージするレイアウト。機械両面に精紡室を設けるなどOE精紡機とレイアウトの基本設計は共通する。リーターはOE精紡機「R66」も実機展示した。3番から60番までの精紡が可能。最高紡績速度は糸種により毎分240メートルから700メートルをうたう。

 ザウラー・シュラホーストもセミオートOE精紡機「BD6」とフルオートOE精紡機「オートコロ9」を出展した。とくにオートコロ9は省エネや生産ロス低減を大幅に進め、毎分300メートルでも高品質な糸の紡績が可能だとする。また、ワインディングはガイドドラムレス方式が採用されているのが最大の特徴だろう。これによりパッケージ品質が格段に向上する。

 従来、革新精紡機は高生産性が最大の特徴だったが、今回のITMA2015では紡績可能な糸種の多様化やパッケージ品質など汎用性が大幅に高まってきたことを印象付けた。