ミラノからの手紙/「ITMA2015」報告(6)/紡績機械 4/革新機構で競争激化

2015年12月16日 (水曜日)

 ワインディングは紡績糸の最終的な品質であるパッケージ品質を決定する重要な工程だ。それだけに村田機械、ザウラー・シュラホースト、サビオといった自動ワインダーの有力メーカーは近年、省エネや高生産性といった性能に加え、パッケージ品質を向上させる革新機構の開発・実用化を進めてきた。今回の「ITMA2015」では、そういった革新機構での競争が激化した。

 自動ワインダーでパッケージ品質を向上させる機構として近年注目されているのが、巻き上げ部分のガイドドラムを廃し、アームトラバース方式で糸を誘導してパッケージを巻き上げる方法。ザウラー・シュラホーストが世界に先駆けて実用化に成功し、ドイツ・ミュンヘンで開催された「ITMA2007」で発表した。その後、11年にはスペイン・バルセロナで開催された「ITMA2011」で村田機械もアームトラバース方式の自動ワインダー「FPRO」を発表する。

 今回のITMA2015では、先行2社に続いてサビオがアームトラバース方式のワインディング機構を「マルチコーン」として発表。同社の主力自動ワインダーである「ポーラー」に搭載して実演した。エッジ形状や巻き密度など様々なバリエーションのパッケージが可能。ガイドが左右直線上を移動するため、他社のような振り子タイプのガイドアームよりも、よりパッケージの品質を高めることができるとしている。

 サビオは精紡機直結タイプの新型自動ワインダー「エコパルサーS」も実機披露。新しい糸切り機構、糸張力制御システム、屑糸収集・分離システムなどを搭載し、省エネ性能が最大30%、生産性が最大10%向上したとしている。同機にはマガジンタイプの「パルサーS」も用意している。

 一方、村田機械はドラム方式の「QPRO」、アームトラバース方式の「FPRO」をともに「QPROプラス」「FPROプラス」にバージョンアップ。ボビントレータイプを実機展示したQPROプラスは、上糸センサーなどセンサーデバイスの追加による屑糸削減、ゲートテンサーの改良による毛羽抑制など効率とパッケージ品質が向上した。

 リンクコーナータイプを実機展示したFPROプラスも自動ワインダー初のパッケージ直接駆動とアームトラバース方式の組み合わせで理想的なパッケージ品質を実現する。低テンション巻きを実演し、パッケージのエッジ補正などアームトラバース方式ならではの機能を披露した。

 ザウラー・シュラホーストは「オートコーナー6」を実機展示。ザウラーグループが打ち出す「E3」をコンセプトに省エネ性能20%向上や高生産性向上を訴求する。こちらもアームトラバース方式による多彩なパッケージを多数のサンプルを展示して紹介した。

 ザウラー・シュラホースト、村田機械、サビオがともにアームトラバース方式をラインアップしたことで、こうした革新機構が一気に普及する予感を感じさせた。