ミラノからの手紙/「ITMA2015」報告(18)/不織布機械/高速化と汎用性の両立へ

2016年01月18日 (月曜日)

 「ITMA2015」の川上分野で存在感が一際大きくなっているのが不織布機械。不織布は紡織以上に設備産業としての側面が強い。このため有力メーカーを中心にM&Aが加速し、各社とも全工程の機種をそろえることで一貫プラントとしての提案を強化する動きが続いている。今回のITMAでもディロ、アンドリッツ、アウテファなどが大規模ブースを構えた。

 不織布は紡織品以上に価格競争力が求められる商品だ。このため生産性の向上が大きなテーマとなる。例えばディロは、今回のITMAで新型のクロスラッパーを披露した。

 従来、クロスラッパーの処理速度は毎分150メートルが限度とされてきた。しかし、カード工程やニードルパンチ工程の高速化が進む一方で、ウェブ形成工程の速度が上がらず、これがボトルネックとなって全体の生産効率が上がらないという課題があった。これに対してディロが開発した新型クロスラッパーは最速毎分200メートルの処理速度を実現。ボトルネックの解消で全体の生産効率を高められる。

 生産性の向上と合わせて、汎用性を高める動きもある。ディロの新型カード機は、カードローラーの間にあるトランスファーがモジュール化された。こうすることで高速加工用のトランスファーと高付加価値品加工用のトランスファーを容易に交換でき、機械の汎用性が高まる。

 ディロはこのほか、グロッツベッケルトと共同開発したニードルパンチ用自動針打ちモジュールも紹介。自動針打ちは針配列にパターンが生じやすく、ニードルパンチ不織布に必要なランダムな繊維交絡を妨げる危険性がある。このため針配列をスキャンすることで針配列のパターン化を避ける仕組みを持つ。

 アンドリッツも新型のニードルパンチ不織布用クロスラッパーを発表した。こちらも処理速度は最速毎分200メートル。やはり一貫生産ラインとしての提案を進める。また、新型のスパンレース用空気乾燥機も披露。省エネ性能を向上させたほか、乾燥工程によるスパンレース不織布のパターン劣化を防ぐなど処理品質が高められている。

 不織布機械はすでに、スパンボンド不織布設備などはメーカーが集約され一貫プラントでの設備提案が一般的となっている。こうした流れがニードルパンチ不織布など短繊維不織布の分野でも広がりそうだ。価格競争力が求められる分野だけに、生産性の向上とエネルギーロスの削減といった開発が加速する。同時に競争が激化することで不織布機械も生産品種の多様化など汎用性が求められる傾向が強まる。