繊維技術を先端領域に/ウェアラブルEXPOなど
2016年01月20日 (水曜日)
「インターネプコンジャパン」「ライティングジャパン」「ウェアラブルEXPO」「オートモーティブワールド」が13~15日、東京ビッグサイトで同時開催された。ネプコンジャパン845社、ライティングジャパン250社、ウェアラブルEXPO156社、オートモーティブワールド781社と合計2032社が出展し、エレクトロニクスや自動車の最新技術を紹介した。繊維でもこれまでに培ってきた繊維技術を応用した最新商品が多く出品されていた。
〈旭化成せんい/情報機器にロボ電提案〉
旭化成せんいはウェアラブルEXPOで、伸縮電線「ロボ電」を紹介した。今回はとくにロボット向けで販売が進む「ロボ電TR」に加え、情報機器向けの伸縮導線「ロボ電IT」を提案。ブースではストレッチ素材「エラクションプロ」に「ロボ電IT」で配線したスポーツウエアを紹介した。
耐久性が高くロボット向けを中心に販売が進んでいる「ロボ電TR」に対し、「ロボ電IT」は細くて柔らかく追随性があるのが特徴でウエアにも適している。スポーツウエアの無線化の動きに合わせて開発を進めており、3月末までの商品化を目指す。
現状、細いものではAWG44が可能で、先端部分を防水化すれば洗濯にも耐えうる防水性を付与することもできるという。また、シールドタイプの開発にも取り組んでいる。
このほか、コードに「ロボ電」を使ったACアダプターを提案した。パソコンやタブレットが小型化・軽量化する中でACアダプターの大きさがあまり変わらないことに着目したもので、「ロボ電」の特性を生かし、かばんの中でコンパクトにしまうことが可能になるという。
〈東洋紡/「ココミ」提案拡大へ〉
東洋紡のブースでは生体情報計測機能素材「ココミ(心美)」を前面に打ち出した。
独自の導電材料を使ったフィルム状の素材で、生体情報計測ウエアのセンサー用電極・配線材として、自然な着心地と精度の高い情報収集を実現している。
ココミの特徴は伸縮性、薄さ(約0・3ミリ)、導電層の導電性の高さ、熱圧着で生地への張り付けが簡単な点。とくに伸縮性は皮膚の最大伸び1・7倍を超える2倍まで伸びるため一般の衣服に近い自然な着心地。ストレスなく正確な生体情報を計測できる。
拡大のカギとなる、集めたデータをどのように活用するか。同社には「心理・生理計測技術」がある。収集した生体情報をもとにして人の心理状態や生理状態を把握する技術。
リラックス度合いの測定によるメンタルトレーニングや、逆に眠気の検出による居眠り運転の防止などへの応用が考えられている。
「『着るセンサー』をどのようなサービスに生かせるか模索している段階。今回展ではアパレルに限定せず様々な業種と情報交換したい」としている。
〈グンゼ/身体データ取得し姿勢改善〉
グンゼはウェアラブルEXPOで、(1)衣料型ウエアラブルシステム(2)発熱ニット(3)バイタルデータ配線用ウエア(4)家畜用冷却システム「ウシブル」(5)導電性ニット線材(6)静電容量タッチセンサー―などを紹介した。
とくに注目されたのが日本電気(NEC)の技術協力で開発した衣料型ウエアラブルシステム。インナーに配した導電性繊維が姿勢のゆがみなどの生体情報を察知し、無線通信でデータをスマートフォンに自動送信。データはNECのクラウド上に蓄積され、姿勢改善などに活用できる。
導電性繊維は通常糸とともに編み込んでインナーにしており、センサーや配線部分も体の動きに追随して伸縮するので快適な着心地を実現する。また、NECが開発した柔軟・小型・薄型の通信可能なウエアラブル端末は簡単に着脱可能だ。
また、インナーやナイティーで使われる冷感素材「ラディクール」を使った家畜冷却システム「ウシブル」も注目された。通常、家畜は床に散水して暑熱ストレスを防ぐが、乳牛は床を濡らすと細菌感染の恐れがあるという問題があった。その問題を解決するため、京都府農林水産技術センター畜産センターと共同で、「ラディクール」を使った乳牛用ウエアに注水して牛の体を冷却するシステムを開発した。次の夏の性能検証を経て本格販売を開始したいと考えている。
〈ふくい産業支援センター/10社の最先端技術一堂に〉
ふくい産業支援センターのブースには福井県の繊維・眼鏡製造業10社がウエアラブル端末に応用できる素材を一堂に展示。SHINDOは「LEDリボン」を出品。LED(発光ダイオード)を取り付けた衣類やのぼりなどで効果を見せた。同社のリボンはファッション資材として海外でも高く評価されているが、高性能な産業資材の開発、提案にも力を入れる。
LEDリボンは導電繊維を用いたリボンにLED端子を実装したもの。薄くて軽く、屈曲性、防水性に優れる。「はじめはのぼりやスポーツイベントなどの用途をイメージしていたが、衣服に装着することで夜間の安全性を高めるツールとしても用途がありそうだ」と話す。
ウラセは高強力繊維に導電性を付与した「フレキシブル導電糸」と「太陽光発電テキスタイル」を出展。フレキシブル導電糸は銅と同じ水準の導電性を持ち、屈曲耐久性に優れる。RFIDタグを入れ通信用アンテナとしても利用できる。
太陽光発電テキスタイルは太陽電池糸を織物の緯糸として織り込んだ。太陽光発電の夜間の照明や、スポーツシューズと組み合わせ提案した。
〈セーレン/繊維技術生かして開発〉
セーレンはインターネプコンジャパンでモバイル用のノイズ対策部品や防水フィルターに加え、繊維の技術を生かして開発を進めているスマートテキスタイルを紹介した。
スマートテキスタイルは、織り・編みやプリント技術を生かして開発を進めているもので、今回展では(1)導電パターンファブリック(2)フレキシブル発熱ファブリック(3)電極・配線一体型ファブリックセンサー(4)フレキシブルタッチセンサー――などを紹介した。
導電パターンファブリックは、同社の織り・編み技術、プリント技術、付与する材料の選定に関するノウハウを生かして開発した商品で、銀糸を縫製したタイプと導電糸を編み込んだタイプがある。生地が伸縮や屈曲しても断線しない追随性のほか、洗濯に耐えうる防水性も特徴。
フレキシブル発熱ファブリックは、生地に導電成分をプリントし、電気によって発熱させるもの。ニクロム線などに比べて発熱部の形状や配置を自由に設計できるほか、面で導電成分を付けることができるため高い発熱効果を発揮する。温度は30~100℃で任意に制御が可能。通常は繊維表面の凹凸や生地の伸縮が断線のトラブルになりやすいが、培ってきたプリント技術でその問題をクリアした。
フレキシブルタッチセンサーは合成皮革に導電布を挟み込んだタッチセンサー。合成皮革と組み合わせることで高級感も出る。
電極・配線一体型ファブリックセンサーは繊維と配線を一体化した商品で、筋肉の動きなどを察知するセンサーとして使える。多種多様な生地にパターン形成が可能。アクチュエーター(ロボット、医療・福祉機器)、生体信号のセンシング(筋電センサーや心電センサーなど)、感圧センサー(椅子やベッドシーツなど)といった用途に提案する。
〈カジナイロン/繊維技術生かした伸縮配線〉
カジナイロンは「繊維メーカーが提案する伸縮配線」として、衣服と親和性が高いテキスタイルストレッチャブルワイヤーを開発。同社はナイロンやポリエステルなどの合繊長繊維糸の仮撚加工を得意としており、繊維分野で培った技術をウエアラブル用途配線材料に応用した。基質が繊維材料なため衣服との親和性が高く、また導体には繊維形状の導電材料を用いているため変位による抵抗値変化量が極めて少ないストレッチャブルな配線となっている。
出展は前回に続きヤマハと同じブース。ヤマハでは「ストレッチャブル変位センサ」としてゴムのように伸縮する薄型変位センサーを出展。センサーをテキスタイルに装着し、人が着用することで動作情報をリアルタイムでモニターすることができる。動作情報は有線か無線で送信し、タブレットなどの端末に表示。楽器メーカーのヤマハだけに、実演デモではピアノを弾く指の動きまで測定できる精度の高さで注目されていた。