ミラノからの手紙/「ITMA2015」報告21/新たな連携が必要

2016年01月21日 (木曜日)

 「ITMA2015」を振り返ると、省エネ・生産性の向上と、多様な生産・加工を可能にする汎用性を追求するという繊維機械開発の大きな方向性には変わりはない。ただ、新たなテーマとして浮上しているのがIoT(モノのインターネット)などネットワーク技術の応用だ。ここでは工程間の枠組みを超えた取り組みが必要になる。場合によってはメーカーの壁を越えた連携も必要になるかもしれない。

 IoTによる統合生産管理は、工程間だけでなく工場間をもネットワークで接続することで、生産に関するすべての情報を包括的にコントロールし、自動最適化を目指すことが目的となる。このため「ITMA2015」では多くのメーカーがIoT関連のシステムとプラットフォームを提案したが、こうした取り組みがメーカーの枠を超えて進展するかが今後の焦点となりそうだ。

 例えば村田機械は精紡からワインディングまでを統合管理する「ムラタ・スマート・システム(MSS)」を発表したが、同じく前紡から精紡まで統合管理するリーターの「SPIDER web」との連携を進めることを明らかにしている。一方、ツルッツラーは前紡の統合管理システムとして「T―DATE」を打ち出した。現在、ツルッツラーは豊田自動織機との連携を深めている。豊田自動織機も管理システムとして「TMS」を持つだけに、システム面でも両社の連携があり得るのか気になるところだ。

 さらに豊田自動織機は織機でも島精機製作所と連携して織物用トータルデザインシステム「APEX―T」を開発した。ここでも工程間、メーカー間の枠組みを超えた取り組みが進む。傘下に検査機器やセンサーデバイス大手であるウスターテクノロジーズを持つことも台風の目となる可能性を秘める。

 一方、IoTなどネットワーク技術の進化は、否応なくシステムの標準化を加速させる。標準化されたシステムのプラットフォームを構築したメーカーが圧倒的な主導権を握るのがIT分野の通例だ。

 こうした問題についてITMA2015を視察した日本繊維機械学会の喜成年泰会長(金沢大学教授)は「標準化やプラットフォーム構築は欧州勢の得意とするところ。主導権を独占されないためには日本のメーカーも協力する必要がある。そのためにはメーカーだけでなく日本繊維機械協会や日本繊維機械学会なども加わり、産学全体で協力することが必要」と指摘する。

 次回のITMAは2019年にスペインのバルセロナで開催される。これから4年間、従来の工程やメーカーの枠組みを超えた動きが起こるかもしれない。その意味で今回のITMA2015は、新たな胎動の兆しを見た展示会だったと言えよう。

(おわり)