伊藤忠テキスタイル・プロミネント〈アジア〉/アセアン俯瞰した最適生産
2016年03月18日 (金曜日)
〈越・中で事業展開加速〉
伊藤忠商事の香港繊維子会社、伊藤忠テキスタイル・プロミネント〈アジア〉(略称IPA)は、ここ数年取り組んできたアセアン地域全体を俯瞰(ふかん)した最適生産の整備が進み、トレードで成果を上げつつある。一方、昨年ベトナムで小売り事業に参入し、今年は伊藤忠繊維貿易〈中国〉(略称ITS)と一体となり中国内販向けのアセアン生産品の供給に乗り出す。事業と投資、トレードを組み合わせた“ハイブリッド戦略”のアクセルを踏み込む。
〈TPP発効をにらんで〉
IPAの中核事業は2つある。一つ目は中国とベトナムで展開するシャツ地紡織・縫製事業。二つ目はベトナム、タイ、カンボジア、バングラデシュで生産した商品の欧米、日本へのトレードだ。
このうち、カギとなるのが中国の雅戈爾(ヤンガー)グループとの合弁会社、サンライズグループとのシャツ地事業である。
環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)や欧州・ベトナム自由貿易協定(EVFTA)の発効を視野に、対欧米、日本のトレードを伸ばそうと、IPAはこれまでサンライズの〝ベトナムシフト〟を支援し、同国での素材生産の体制作りに取り組んできた。現在、紡績から一貫での後染め織物とニット生地を生産し、縫製している。
〈対米、中国内販が課題に〉
一方、2015年1月にはベトナム国営繊維企業グループのビナテックスに出資し、素材や縫製など傘下の工場の活用を活発化した。
こうしたベトナム生産に、タイ、カンボジア生産などを加えたアセアン地域での一貫生産により現在、対日OEMを中心にトレードを順調に拡大している。
今後の課題になるのが、米国、中国向け販売の強化だ。ITSと連携しての中国内販では、布石を打っている(囲み記事を参照)。米国向け販売では、販売エージェントを活用した営業力底上げや、ベトナムプロミネントのショールーム拡充など、香港やアセアン地域での顧客囲い込みに取り組んでいく。
〈中国内販でITSと連携/「ボストン」「アンタ」に供給へ〉
伊藤忠繊維カンパニーが中国内販の拡大に向け、活発な動きを見せている。昨年は「ボストン」ブランドを展開する中国ダウンウエア大手の波司登国際控股との提携を発表。今年2月には、ITSが中国スポーツ用品最大手の安踏体育用品の子会社、安迪体育用品などと中国に合弁会社を設立し、「デサント」ブランドの中国展開を開始することで基本合意した。
IPAはこうした動きと積極的に連携していく。ITSとともにスポーツウエアを軸に中国内販を拡大していく方針で、4月には「スポーツ部」を新設、ベトナムを中心としたアセアン地域で生産したスポーツウエアを、ITSを通じて提携関係にある波司登国際控股や安踏体育用品に提供していく考えだ。
同部にITSのスポーツウエアOEMの機能を徐々に移管し、ITSからの人材の異動を予定している。