帝人/吸音材の垂直不織布期待/製品で年10%成長めざす
2016年03月24日 (木曜日)
帝人は不織布製品事業を強化している。製品事業の売上高(不織布製以外も含む)は2015年度、約30億円。16年度はポリエステルナノファイバー「ナノフロント」や垂直不織布「V―Lap」による自動車吸音材などの拡大で、34億円を見込む。籔谷典弘執行役員営業部門長は、「原材料や製造プロセスで競争力のある不織布製品に力を入れる」と述べ、製品事業で年率10%成長を目指す考えを示す。
不織布製品は一体成型クッションである「ファイバークッション」やV―Lap、高吸水・高吸湿繊維「ベルオアシス」による寝具があるが、今力を入れるのはナノフロント。フェースマスク用不織布が拡大基調だが、液体フィルター製品の事業化にも取り組む。
V―Lapによる自動車吸音材にも期待がかかる。先ごろ発表したように、トヨタ自動車の新型「プリウス」のフロア用に採用されたこの防音材は自動車内装材などの専門商社、林テレンプ(名古屋市中区)と共同開発したもの。林テレンプが「V―Wave」ブランドで展開する。
従来品の約2分の1の重量で、同等の性能を持つ。両社はプリウス採用を機に連携を強化しながらフロアだけでなく、天井やドアなどへの採用拡大を目指している。その一環で、帝人はV―Lap、林テレンプがV―Waveの新工場を東邦テナックスの揖斐川事業所内に新設した。V―Lapは帝人の不織布工場として15年1月に稼働。生産能力は月約180トンで、設備投資額は3億円。従業員数は約20人。
V―Lapは07年にニッケの短繊維不織布製造子会社、アンビック(兵庫県姫路市)に設備を貸与し、アンビック加古川工場に生産を委託する体制を取ってきた。現在、加古川設備もフル稼働中で、将来的には加古川は寝具向け、揖斐川は吸音材向けに特化する方向。また揖斐川は需要増に対応して増設も検討する。
〈ユニセル/今夏、タイ生産を開始/車資材の展開に手応え〉
帝人のグループ企業で独自の合繊長繊維不織布を製造販売するユニセル(山口県岩国市)は2016年夏に、タイでの不織布生産を開始する。
生産能力は年産200トン。生産設備は帝人のタイ子会社であるテイジン・ポリエステル〈タイランド〉(TPL)に置く。同社初であるだけでなく、こうした独自不織布の海外生産は珍しい。ターゲットは自動車資材や包装材料だ。
これまでTPLにスリット加工機を導入、日本から不織布を持ち込んで加工を施しプレマーケティングを行ってきた。自動車資材はボンネット裏に使用する防音材(フードサイレンサー)向けがターゲットだが、タイ国内や東南アジアのプレマーケティングでも「当初見込んでいた展開が可能」と帝人の籔谷典弘執行役員営業部門長は手応えを示す。また、包装材料もユニセルが持つヒートシール性を武器に海外市場の開拓にも取り組む。
販売は当面、TPLの担当者が兼任するが、規模が拡大すれば専任担当にする計画を組む。
帝人の籔谷執行役員はユニセルについて「ニッチの強みを生かして世界に展開する」と述べ、18、19年をめどにタイでの増設も考えたいとする。
ユニセルは合繊長繊維不織布の代表であるスパンボンド不織布とは異なり、バーストファイバー法、トウ開繊法、積層延展法を組み合わせた独自の合繊長繊維不織布とメルトブロー不織布を製造販売する。
バーストファイバー法は樹脂を薄膜状に溶融・押し出しフィルムを作る技術により不織布状シートを作る。トウ開繊法は多数の長繊維を収束したトウを延伸捲縮、開繊拡幅する。ともに中間製品であり、これを積層し横方向に広げることで不織布化する。世界唯一の製法から、優れたヒートシール性(表裏で異なる原料を使用)、鮮やかな印刷性(フラットローラーによる)、良好な成形追随性(縦・横の伸度差が少ない)、高い吸油・保温性(バーストファイバーによる多孔構造)――などの特徴が生まれる。
国内では帝人岩国事業所内(山口県岩国市)の本社工場に年産2000トンの設備を持つ。
〈クラレクラフレックス/業務用ワイパーで新市場/MBは独自原料使いで〉
クラレクラフレックスは、不織布製品比率が高い点に特徴がある。ケミカルボンド不織布(CB)、スパンレース不織布(SL)、メルトブロー不織布(MB)、そして水蒸気不織布「フレクスター」を製造販売する同社は製品事業が50%強を占める。
製品の主力であるカウンタークロス(CB製)は2016年度(1~12月)、国内の家庭用・食品工場向け、海外市場の販売本格化を目指す。カウンタークロスは外食チェーン店の厨房や量販店の食料品売り場のバックヤードなどに使用され、同社はトップシェアを持つ。ただ、浸透率も高く、今後の事業拡大には新市場開拓が不可欠だ。クラレの生活資材事業部長でもあるクラレクラフレックスの足立篤美社長は、「ナンバーワンとして圧倒的な品ぞろえを武器に国内は家庭用、食品工場向けを拡大する」と語る。
海外も専任担当を置き、強化する。販売代理店のオザックスと連携しアジア拡販に取り組んできたが、前下期から実績につながりつつある。アジア販売品は当初、中国生産を模索したが、日本からの輸出に変更している。
MBは熱可塑性エラストマー「セプトン」などグループの特殊樹脂使いが50%弱まで高まってきた。これを武器に用途開拓を加速。フレクスターは集中する伸縮包帯向けが順調に推移。日本だけでなく、中国、欧州輸出も始まった。
15年度業績は売り上げ横ばいも若干の減益。上期カウンタークロスが低調だったほか、化粧雑貨向けSLの苦戦が響いた。カウンタークロスは前下期から回復基調にあることから、16年度は中期経営計画の軌道に戻したいとする。
〈新レーヨンの開発急ぐ/オーミケンシ〉
オーミケンシは、2015年秋に始めた加古川工場の設備投資が第2段階に入ったことを生かし、新タイプのレーヨン開発を急ぐ。
これまで練り込み法による機能レーヨンを得意としてきた同社だが、新たに紡糸や凝固工程の工夫で形状や物性が従来と異なるレーヨンの研究開発を進めており、とくに不織布や機能紙用途に特化したレーヨンの開発を目指す。
一方、機能レーヨン原反の販売は昨年も横ばいで推移した。こちらも引き続き用途・市場開拓に力を入れる。