菅公学生服/移転増設で都城に新工場/南九州を制服生産の一大拠点へ

2016年03月31日 (木曜日)

 学生服製造最大手の菅公学生服(岡山市)は、学生スラックスを生産する高城工場(宮崎県都城市)を近隣へ移転増設するため、新工場を設立する。設立に先立ち30日、宮崎県庁(宮崎市)で宮崎県の河野俊嗣知事を立会人として、同社の尾﨑茂社長と都城市の池田宜永市長による立地調印式を開いた。尾﨑社長は、「次なる10年、20年に向けた拠点にする」とともに、南九州が「学生服の一大産地と呼ばれるよう、ともに歩みを進めていけるようになれば」と話す。

 今回の新工場設立は、2014年の菅公学生服アパレル大山工場(鳥取県大山町)の立ち上げ以来。現在の菅公アパレル高城工場を高速道路のインター近くにある都城インター工業団地に移転し、増設するもので、国内生産体制の強化や物流の効率化に加え、雇用確保が狙いとなる。

 投資額は約4億3000万円。現在の高城工場は工場敷地面積が4916平方メートル、工場建物面積が850平方メートルで、新工場はそれぞれ2万3140平方メートル、3150平方メートルに拡大し、従業員も71人(15年11月時点)から新規で50人雇用し、120人とする。着工は今年3月で完成は11月を予定、12月に操業を始める。生産量はスラックスを中心に年間12万8000点で、稼働初年度も同数を計画。来年度以降は14万点に増やす。

 新工場は第二期計画として約2億7000万円を投資し、隣接地に裁断センター(建設面積約6100平方メートル)の建設も今年8月以降予定する。裁断業務の合理化を進め、さらに50人の新規雇用を見込む。

 高城工場は都城工場(都城市)を基幹工場とした4つの工場から成る「都城工場グループ」に属するが、計画が進めば新高城工場が基幹工場として役割を担い、裁断については南九州全体の裁断業務を一手に担う計画を構想する。尾﨑社長は「徹底的に合理化し、モデルのような工場にしたい」と話した。

 宮崎県では高城工場を含め4工場あり、約700人の雇用がある。河野知事は「地産地消として宮崎県に菅公学生服の制服が、この立地調印式を機に広がっていけば」と、県としてサポートする姿勢を強調。池田市長は「100人の雇用を生み出してもらい、地域として大変ありがたい」と感謝の意を示した。

〈生産強化、今後も続く〉

 解説 ここ数年、学生服アパレルの新工場設立が相次いでいる。2014年にはトンボ(岡山市)がブレザー生産を中心としたトンボ倉吉工房(鳥取県倉吉市)を設立。明石スクールユニフォームカンパニー(岡山県倉敷市)も、14年にシャツ関係で元々協力工場だった会社に資本を入れ、津山ソーイング(岡山県津山市)として稼働するなど、国内での生産基盤を強化する姿勢にある。

 その背景には、これまで生産を支えていた縫製工場が高齢化や過疎化による人手不足で廃業するケースが増え、学生服アパレルでは改めて生産拠点の確保が問題になりつつあることがある。

 学校も少子化で制服を見直し、生徒を確保しようとする動きもあり、多品種小ロット化もより進む。「入学式に生徒全員へ制服を届ける」という使命を第一義に考える業界にとって、国内での生産基盤の確保はこれからも課題であり続ける。