多様化する中国繊維企業/「AFF・大阪2016」レビュー(後)/中国がアセアン企業育む

2016年04月19日 (火曜日)

 「AFF・大阪2016」(大阪市中央区、マイドームおおさか)の会期中3日間の来場者数は計4390人だった。事務局によると「前年の大阪展に比べ若干減少した」という。展示会を運営する中紡広告展覧の孫暁明総経理は、「確かに日本への輸出量は中国から減り、アセアンで増える傾向がある」としながらも憂う気配はない。

 なぜなら近年、台頭するアセアン勢の多くは中国企業の投資によって業績を伸ばしており、そこに中国の新たな役割があるからだ。孫氏は「日本が中国企業を育てたようにこれからは中国がアセアン企業に技術を伝え、世界への繊維製品の供給インフラの整備を託されている」と自負をのぞかせる。

 実際に出展する中国企業には、価格追求型のニーズにはアセアン地域で、機能性や付加価値を求めるニーズには中国で対応し、さらに物によっては中国産の生地をアセアンで縫製するという一企業で柔軟な対応力を持つ会社も多い。こうした企業のアセアン地域への工場設置や技術者派遣などが結果的に、アセアン勢を育てることにつながっているとみえる。

 中国国内生産の差別化もさらに高度になっており、高機能化や対日ビジネス経験を背景に自らの感性でデザインまで手掛けるODM(相手先ブランドによる企画・生産)の強化をアピールする企業も増えた。

 機能性差別化素材メーカーの聯潤翔〈青島〉紡織科技は春夏向けにUVカットや接触冷感素材をアピール。機能性を体験できる装置など分かりやすく体感できるように工夫し、多くの日本人に注目された。

 南通雷成運動休閑服飾はSEKの制菌加工赤ラベルを取得した介護ユニフォームを出展し、制菌機能以外にも制電やUVカット、透け防止といった複数の機能を持たせた商品も見られた。

 大連天美衣服装は中国国内で人件費が6割程度に抑えられるという黒竜江省に工場を新設、ドレスシャツのODMを提案した。アセアン地域に工場をシフトするより納期管理やクイック対応が可能でメリットがあるという。

 大連トウ加貿易もODMを強化する企業の一つだ。ユニフォームの一部のみをアセアン地域で生産し、主力は中国工場の小ロット・短納期・高品質、さらに高感度なデザインを日本市場に訴える。

 「AFF・大阪2017」は来年4月11~13日、同じマイドームおおさかで開催予定。今回展で示されたように次回展では中国企業のさらなる高度化、アセアン企業の出展者数増の傾向が強まることは間違いなさそうだ。

(おわり)