東レインターナショナル 社長 大矢 光雄 氏/サプライチェーンを進化/グローバルに生産背景拡充
2016年04月27日 (水曜日)
東レインターナショナルはグローバル規模でのサプライチェーン強化を継続課題として、今期も推進する。東欧、北アフリカでの縫製に着手するなど、欧州顧客向けのQR体制を整備するほか、ベトナム駐在員事務所の現法化などで欧米向け輸出拡大をにらんだ機能強化を目指す。「サプライチェーンイノベーターの実現」をぶれない戦略として、推進する。
――2015年度を振り返っていかがですか。
単体、海外商事子会社ともに増収増益で、グループ全体も増収増益です。売上高は原燃料価格が下落した影響を受けましたが、利益は計画通りに達成しました。
繊維事業は素材がテキスタイルの米国向け輸出が好調。産業資材もPPSなどの高機能フィルターがとくに拡大しました。
主力のアパレル事業は増収増益で着地しました。顧客のヒット商品で取り組みができたことと、この間進めてきたアセアン地域への縫製シフトの効果が出て、増益につながりました。
――増収要因となったのは。
米国を中心とした海外顧客向けの取り組みが本格化したことが大きいですね。国内だけを取り上げると厳しい状況でしたが、トータルで増収につなげました。
――海外商事子会社の繊維事業は。
欧州は苦戦しましたが、中国ではアパレル事業で、内販の有力メーカーとの取り組みが成長鈍化と言われるなかでも進みました。また、米国は国内と現地法人が連携した事業がアウトドアを中心とする製品、生地販売が増益に貢献しました。
――収益モデルの革新を重点方針としてきました。
新たな商品作りは様々な分野で出てきていますが、それを事業拡大につなげるポイントは、重層的なオペレーションを敷いていることです。顧客に対面する最前線の人員と、日本のヘッドクォーターが、生地調達や縫製地で最終顧客にとって最適な生産オペレーションの選択肢を提案できています。
今後は縫製面でコストや品質の競争力を高めることが課題です。出口戦略に基づいて、それが求める最適なバリューチェーンをグローバルに動かすビジネスモデルにおいて、縫製の競争力が高まれば当社の付加価値がより高まるでしょう。
――16年度の方針は。
東レグループの中計経営課題プロジェクトAP―G2016(AP―G2016)の最終年度になります。当社グループでは前年比2けた%の増収増益を目指しています。国内外ともに環境は良くはありませんが、やることは変わりません。出口戦略をもとにグローバルなサプライチェーンを動かしていくことに尽きます。
例えば欧州の顧客にはアジアを中心とした供給網よりも、北アフリカや東欧での生産がQRを考えるといいはずです。オペレーションを進化させるためにはこうした地域で生産する必要があります。また、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)を見据え、ベトナムの位置づけが大きくなるため、駐在員事務所の現法化、川中の取り組みを東レグループと連携してどのように組み立てるかも考える必要があります。この動きが本格化することが今期の重点方針です。
――東レインターナショナルにとって「ぶれない戦略」とは。
AP―G2016のスタートと同時に当社は「サプライチェーンイノベーターの実現」を長期ビジョンとして掲げました。その中身は「世界を舞台に素材と加工で価値を創造し、新たなビジネスモデルを構築して東レグループとお客さまをつなぐ、たくましい営業集団になる」という意味です。
グローバル規模で素材から縫製まで価値をつなぐサプライチェーンを作り、モノからコト提案へのシフトで顧客起点のソリューション提供を目指す私自身の考えと重なりますし、また、設立30周年を迎える当社が脈々と受け継いできたぶれない戦略だと思います。
――国内外の市場、環境の変化に対して、こうした戦略をどのように生かしていきますか。
悪いなかでも成長分野、売れ筋は必ずあり、様々な分野で新しいカテゴリーキラーが出てきています。そこを見極め、素早くサプライチェーンを提案することでしょう。このためには、いかに情報と接する頻度を増やすかがカギで、商社にとっての生命線と言って良いと思います。
おおや・みつお 1980年東レ入社。2002年長繊維事業部長、08年インドネシア・トーレ・シンセティクス取締役、09年産業資材・衣料素材事業部門長、12年取締役繊維事業本部副本部長、13年テキスタイル事業部門長。14年6月から現職。
〈私の好きな1曲/言問橋で思い出すのは〉
フォークソングに親しんだ大矢さんが思い出すのは大学1年生当時に聞いたクラフトの「言問橋」。別れてしまった幼なじみの恋人を懐かしんで言問橋を訪れると、子供を連れて歩くその彼女とすれ違うという、出会いの縁を歌ったもの。著名なグループより、この1曲が出てくる理由は「自分でも分からない」というが、去来するのはひょっとして、初恋の人?